「 まあいい、今日は体をゆっくり休めて。明日からも撮影に
頑張りなさい。あと、もっと自分の事考えるように。今日みた
いにいつも上手くいく訳じゃない事、分かってるな。」
小畑さんの言葉は的を得た当たり前の事だった。ただ自分の気持
ちも大事に思えていた。
「 失礼します。」
僕は会議室を出て、前田さんと事務所を一旦離れた。
「 前田さん、僕って甘いですかね。このままじゃダメですか?」
「 そうね、本音を言えば甘いわね。よくあの場を凌げたかと今
思うと、ぞっとするわ。ホントのとこ私がもっとしっかり君を
コントロールしなくちゃいけないんだけど・・・。なんだかな、
君の良さはその優しいくて人を思いやる所だからさ、今はまだ
その良さを潰したくないから。私が守るわ。だから、今は思う
ようにしなさい。がんばるのよ。」
「 ありがとうございます。・・・・これからもよろしくお願い
します。」
「 そんな改まらなくていいわ。じゃ、私は事務所に戻るから、
明日迎えに行くわね。ゆっくり休むのよ。気をつけて。」
僕は前田さんと別れ、電車で帰宅する事にした。
電車の中で、外の風景を眺めながら黄昏ていた。そんな時に携帯が
震える。着信表示には、ゆいの文字。
( ゆいからだ。そう言えばしばらく会ってなかった・・・・。
こんな事って今まで無かったな。)
「 はい、もしもし。」
『 あ、出た。・・・・久しぶり、元気してる?』
「 なんだよ、さっきの出たって。出るって思ってなかったのかよ。」
『 うん、そうだね。まだ仕事?きっと仕事中だから出ないかと思っ
てたからさ・・・・。声が聞けてちょっとホッとした。』
こんな時、ゆいの言葉は僕の心に深く染み込み、なんとも言えない歯
がゆい気持ちになっていた。