僕は美術の作品を見るよりも、玲子さんの横顔がこの場での
芸術作品のように思えた。
「 なになに、私の顔に何か付いてる?」
「 あ、あ~、違うんです。玲子さんの顔には、何も付いて
ませんよ。」
「 なに~、それって私の顔に見惚れてたって事・・・?」
「 う~、そ、そうです。綺麗だなって。」
「 やだ、たかしったら。恥ずかしい・・・。でも嬉しい。」
「 ごめんなさい。」
「 もう、なんで謝るの。謝る事なの。」
「 あ、ごめんなさい。」
「 もう・・・ははは。」
玲子さんの笑顔も僕の心を捉えていた。その後もしばらく館の
中を2人して廻った。
「 よかったわね。美術を見るのって、私達の仕事にも通じる
所があると思うの。」
「 そうなんですか?俺今までそんな事考えもしなかった。」
「 感性って磨くものでしょ。だから私は芸術品の中から力を
貰ってるの。そして作品に活かしていこうとしてるの。」
「 俺も何かしら力になるのかな?難しいな。」
「 そんなに難しく考えなくてもいいわよ。たかしが感じた事を
そのまま大事にしてればいいの。芸術って考えるものじゃない
じゃない。」
なんて深いと思った。僕と玲子さんは美術館を出て、また歩き
出した。