「 前田さん、実は撮影の内容が変更されて、困った事になったんです。」
「 困った事? どんな事になったの。」
「 僕の表情をメガネを取った状態で、カメラ抜きしたいって言われ
たんですよ。それで、どうしたらいいか分からないまま撮影に入るところ
だったんですが、急に体調が悪くなって、撮影が中断してるんですよ。」
「 そっか、そんな事が。分かった。監督さんに変更してもらうように言って
くるわ。まあ、それが私の仕事だからね。」
理由が分かった前田さんは、すぐさま監督の許へと向かった。その話を聞いて
いた恵美は不思議そうにしていた。
「 ねえ、お兄ちゃん。メガネを外すのがそんなにダメなの?分かんない。」
「 恵美・・・。」
僕はその後の言葉が出なかった。家族の中でもこの力の事は両親だけが知って
いるだけで、実は恵美には告げられていなかった。両親の計らいによって、
余計な概念を持たせない為にと、幼い頃からこのことは恵美の前では話されて
なかった。それだけに恵美は、今回の事がどうしてなのか分からないでいた。
「 なんか変なの。メガネ位いいじゃない。どうして外せないの? 」
そんな質問を繰り返す恵美だったが、僕は沈黙のまま答える事ができずに
いた。そんな時に。
「 たかし、大丈夫なの? あ、恵美ちゃん。来たんだね。」
「 松田さん、おはようございます。今日からよろしくお願いします。」
「 うん、よろしく。それより、たかし気分はどうなの? 」
僕の楽屋に訪れた由紀の顔を見た途端に、僕は軽い目眩に襲われ気を失った。
「 たかし!? たかし!? 」
「 お兄ちゃん!? お兄ちゃん!? 」
楽屋には、由紀と恵美の声が繰り返し僕の名前を呼ぶ声が響いていた。