恵美は僕の着替えを置いてすぐに帰っていった。前田さんから
告げられた、初めての仕事。それに今以上に練習したいであろう
ダンスをと思っていたに違いない。恵美とはそんな女の子だと
兄である僕は知っていた。
前田さんも僕がしばらく何もできない事を考えて、タレント年鑑
だったり、演技の足しになればと小説を持ち込んでくれた。
「 まあ、じっくり読んで覚えるのと、映画の準備もしておくように。
時間はあるようで無いよ。がんばってね。」
「 ありがとうございます。じっくり勉強します。」
「 私はこれから事務所に戻って、スケジュール調整と後、恵美ちゃんの
打ち合わせをしなくちゃいけないの。夜になると思うけどまた顔を
出すわね。」
「 前田さん、恵美の事よろしくお願いします。」
「 了解よ。それじゃあね。」
前田さんは急いで病室を後にした。一人の時間。ここしばらく無かった
時間だ。そんな時だった。ドアをノックする音。
「 はい、どうぞ。」
「 たかし、おはよう。今日の調子はどう? 」
病室に入室してきたのは、玲子さんだった。
僕はこの時、複雑な気持ちの訪れに戸惑っていた。
「 どうしたんですか?こんな朝早くから。」
「 今日はね、お休みになったから会いに来ちゃった。」
「 そんなんですか。ありがとう玲子さん。」
なんとも表せない気持ちになっていた。