それは、不意にと言うより必然として捉えればいいのだろうか。
振り向き様に、玲子さんを感じた。そうそれは、お互いの唇が触れ合った
感触だった。僕は近くに感じた玲子さんと、その唇の感触に動けなく
なっていた。その間は、頭が何も考えれなくなっていた。
そしてその時は訪れた。
「 たかし、好きだよ。」
玲子さんの唇から放たれた言葉。僕は呆然として聞いていた。
「 玲子さん?僕は・・・・。」
「 たかし、今はいいわ。返事はすぐに貰えなくても。それに・・・。
じゃ、あまり無理させてもいけないから、帰るね。」
「 あ、はい。気をつけて。」
僕は玲子さんを呆然として見送っていた。このキスは、由紀とした
不意のキスとは全く違っていた。経験が豊富にある訳ではなかったが
僕はそう感じていた。玲子さんに、気持ちがこもっていたからだろう。
僕はドキドキが止まらなく、その日は痛みを忘れるくらいの衝撃だった。
玲子さんの唇の感触が、まだ自分の唇に残っているようだった。
しばらく眠れずにいた。
朝も昨日の衝撃で呆然としていた。朝食を済ませて。ゆっくりと病室から
出て、病院内を歩いていた。周りは忙しそうに動き回る看護士の方々。
同じようにパジャマ姿で歩いている患者さんを見ながら歩いてゆく。