簡単に荷物をまとめて、和也がこの部屋を出て行く。去り際に。

「 ・・・遥。ごめんな、俺がちゃんとしてれば、遥を傷つけ

 なかったのに。ありがとう、こんな俺を好きになってくれて。

 さよなら。」

「 ・・・・・。」

無言になる遥。出て行く和也の姿を見る事ができず、背を向け涙を流す。

ドアを開け出て行く和也。ドアの閉まる音を聞くと、泣き崩れる遥。

「 カット。チェック入ります。」

目の前で演技を直視していた恵美が涙を流していた。

「 なに泣いてんだよ、恵美。」

「 だ、だって。ホントに可哀想って思ったんだもん。」

「 そうか。ちゃんと伝わってるんだな。よかった。」

「 すごいよ、お兄ちゃん。お兄ちゃんじゃないみたい。」

「 当たり前だろ。巣の自分で出てどうするんだよ。普段の俺じゃ

 あんな事あり得ないし。」

傍で聞いていた玲子さんが言う。

「 あら、そんな事ないわよ。最近ならあり得るんじゃない、たかし。」

「 え、そんな事ないよ。」

「 そう思ってるのはたかしだけ。最近のたかしは女たらしだから。」

「 そんな~。女たらしって。した事無いのに。」

「 ほら、そんな鈍感なとこ。何人そんなことしてるのよ。もう。」

「 お兄ちゃんて、奥手だと思ってたのに・・・。そうなんだ。」

「 違うって恵美。玲子さんも変な事、言わないで下さいよ。」

撮影の合間の他愛無いやり取りだったが、それをまた傍で観察する様に

見入っている少女がいた。


人気ブログランキングへ