稽古場にはなぜか、二人きりの時間がおとずれた。胸の鼓動が

聞こえそうなくらい、ドキドキが止まらない。なんてったて

相手はアイドルなのだから。マネージャーの前田さんも戻って

すぐに小畑さんと打ち合わせと、出て行ってしまうし。なぜか

松井さんのマネージャーも席を外していないのだ。どうしようと

思っていたところに、不意に声をかけられた。

「 神崎さん、どうしましたか?本読み、はじめません?」

「 あ、そ、そうだね。う、うん。本読みだね。はじめよっか。」

「 どうしたんです。すごい汗。それに、顔が真っ赤ですよ。」

「 いやー。大丈夫。大丈夫だよ。そうだね、汗が止まらないね。」

普段から女の子と二人なんてありえない。異性で二人きりになるのは

家族ぐらいだから。どう話したらいいのか分からない。

あ、忘れてた。ゆい。そうだ、ゆいとは二人っきりになったことが。

でも、それとはまた違った。ゆいは幼い時からの付き合いだから、

家族と感覚がにていた。今回は全く免疫がないのだから。

「 それじゃ、紺野さんの所を私がやるよ。準備はいい?」

「 ふーん。いいよ。さ、はじめよっか。」

その様子をみた松井さんが笑う。

「 神崎さん、面白い。声裏返ってるよ。大丈夫?」

明らかに動揺が隠せずにいた。それを見ていた人が居た。

「 お前、面白すぎ。それに本読みぐらいでそんなに緊張するなよ。」

声をかけてきたのは、冴島さんだった。


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