「 おい君。えらくおとなしいな。言いたい事があれば言いなさい。」
「 そうね。監督。私から彼のことお話します。」
紺野さんが僕の話をしようとする。すると、
「 まあ、待ちなさい。私は君の口から話を聞きたいいんだ。なんでも
いい。今思ってること話なさい。」
紺野さんを止めて、直接僕から聞こうと話を進める。
「 あの。僕は初めてのことでどうしたらいいか分かりません。
でも、もし僕を使っていただけるのであれば、がんばりたいと思います。
自分自身を変えるつもりで、紺野さんの話を受けました。よろしく
お願いします。」
「 そうか、君がそうか。紺野からは以前話があった彼か。」
「 由紀もその話知ってる。そうか彼なんだ。」
どんな話が伝わっているのだろう。監督と松田さんは興味津々の顔で
僕の表情を覗き込む。紺野さんが僕の話をするのだった。
「 そうなんです。彼なんです監督。私が、今までに感じたことのない
力を感じて、一目ぼれしたんです。この私が。」
「 由紀も感じた。彼を見た瞬間なの。もうこの人から離れたくない。
スキが止まらない。そう感じたの。ちょっと思い余ってキス、
しちゃった。自分でもびっくりしちゃった。」
ちょっとまて、こんなところで僕の力のことがばれたら大変なことになる。
そう思っているなか、監督はまじめな顔で僕の表情を読み取っていた。
「 君は不思議な感じを持ってるな。おどおどしてるんだが、芯になにか
持ってると感じさせる。うん、いいだろう。紺野も推薦してる彼だ。
この映画に使おう。」
僕はオーディションをすることなく決まってしまった。だがこの後
どうなるのか不安で一杯だ。