少女と別れた後、そのまま歩き続けて小高い丘に。

 昼間の丘に上ると、そこには十分と自然を感じる

 事ができた。感じることのできる時間はもう少ない。

 そう、もう来年にはと思うことはできないのである。

 一つ一つの出来事が最後だと感じ取ることで、

 うれしさと、悲しさを同時に感じ取ることができる。

 今が本当に生きているんだと感じずにはいられない。

 青く晴れ渡る空。軽く肌を優しく抜けていく風。

 近くには青々と茂る木々たち。風の通り過ぎる度に

 ざわめき音を奏でる。その一つの自然を感じる事で、

 充実した気持ちを持てる。それも最後だと告げられた事で

 ようやく地球の上に立つ自分を感じ取る事ができる

 うれしさなのだ。当たり前といつも感じ得ない自然の

 ハーモニーを体一杯感じる事が、こんなにもいとしいなんて

 考える事は本当に尽きない。最後の最後には何ができるの

 だろうか。今は一つでも多く遣り残さずにいられたらと

 ひしひしと思い感じている。そう自分の為、いやこんな

 時だからこそ、他人の為にできること。

 自然を満喫しながら歩き続ける。

 普段当たり前に見えている景色に人々が溶け込む。

 せわしなく働く人。何もせず立ち尽くす人。

 色々な光景に出会う。

 しばらく歩いたところで、昔の感じさせる裏路地に

 迷い込む。都会の人ごみから解放され、人気がぐっと

 少ない。そんな中に、立ちすくむ老人を見かけた。

 その老人は、昭和を感じさせる風貌で、額に軽く汗を

 にじませて、片手には杖を持ち立ちすくんでいた。