日蝕 27 | 星の輝き、月の光

星の輝き、月の光

「イケメンですね」(韓国版)の二次小説です。
ドラマの直後からのお話になります。

 

ミニョが合宿所に泊まった数日後、俺はいつものカフェへ行った。しかし店は開いておらず、ドアには”しばらく休業します”という貼り紙が。

しばらくという期間がどれくらいをさしているのかは判らない。しかし休業の理由を知っている俺は、もしかしたら長引くかも知れないと思った。

撮影でここに来てミニョと再会して以来、ここへ来ればいつでも会えると思っていたし、実際に会っていた俺は、ここ以外でミニョと会える場所を知らない。しかし今の状況で思いあたる場所がひとつだけある。それは病院だ。

ミニョのことだ、必ず店長の見舞いに行っているだろう。毎日ではないにしても、その頻度は高いはず。






「わざわざすまないね」


俺は店長と特に仲が良かったわけではない。店には通っていたが、あいさつをする程度で会話らしい会話はしたことがない。その俺が病院へ運んだだけでなく、後日見舞いに現れたことに店長はすまなそうな笑い顔を見せた。


「ミニョさんも大丈夫だからいいって言ってるのに、毎日来てくれて・・・」


今日も1時間ほど話をし、帰ったという。

俺の思った通り、ミニョは見舞いに来ているようだ。それも毎日。


翌日から俺は車を病院へ走らせた。しかしそれは店長の見舞いにではなく、ミニョに会うため。

病院の玄関が見える場所に車を停め、ミニョが出入りするのを待つ。自分でも何をやってるんだろうと呆れてしまうが、身体が勝手に動くんだから仕方ない。

カフェへ行かなくなってから俺は曲が書けなくなった。メロディーも歌詞もまったく浮かんでこない。

ミニョのせいだ。

あいつに会えなくなってから、俺の心はどんよりと重く、不快な気分に包まれている。毎日いらいらと落ち着かなくて。

こんな状態でいい曲が書けるわけがない。


「はぁ・・・」


俺はハンドルに額をつけると大きく息を吐き出した。

やめよう、ミニョのせいにするのは。あの時のキスも俺がしたかったからしたんだし、こんなところでミニョを待ってるのも、俺が会いたいから。

会ってもう1度「好きだ」と言いたい。

いや言う、何度でも。

またシヌが好きだと言われるかもしれないが、それでも構わない。

どうしてあの夜言っておかなかったんだと深い後悔が俺を襲った。それに拍車をかけているのが、あの日のミニョの様子だった。

何がどう気になっているのか自分でも判らないが、とにかく早く会いたい。というより会わなきゃと追い立てられるような焦りすら感じている。


ミニョが来たらまず車に乗せ、静かに話ができるところへ移動し、そしてそこで・・・と頭の中でのシミュレーションはバッチリなのに、いつまで待っても肝心のミニョが現れない。

俺も暇ではない。メディアへの露出は減らしたが、今は新人のレッスンとレコーディングにつき合っていて、それなりに忙しい。


ミニョが病院へ来る時間と、俺の空いている時間がうまく合わないせいか、俺は何日も待ちぼうけを食わされた。もちろんただぼーっと待っていただけではない。別れてからかけていなかった電話を何度もかけた。

しかしいつも数回のコール音の後、留守電へと切り替わるだけ。

俺はバカだ。

あの晩もう少し話しませんかと俺の服を掴んだミニョ。

その声は戸惑いながらもはっきりとした意志が感じられたのに。ただの暇つぶしのおしゃべりではなく、俺に話したい・・・伝えたいことがあったんじゃないのかと今になって思う。


「チッ」


ハンドルを叩きながら人の出入りをチェックする。

電話をかけるたびに留守電へメッセージを残すが、いつまでたってもミニョからの返事はなかった。







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