「好きだ」
ミニョを腕の中に閉じ込めたまま俺は耳元でそう告げた。
まずは謝って、とりあえず誤解を解いて・・・そう思っていたはずが、俺の前から立ち去ろうとするミニョを見て一切の過程をすっ飛ばし、自分でも思いがけない言葉を口にしていた。
しかしこうして口に出してやっとはっきりと自覚した。俺はそのことを伝えたかったんだと。
「き、急に何言い出すんですか」
いきなりそんなことをされれば誰だって驚くだろう。ましてや今は一時中断しているとはいえ撮影中で、周りにはスタッフが何人もいる。
当然のようにミニョは俺の腕の中から逃げ出すと、驚いた顔で俺を見上げキョロキョロと辺りを気にした。
このままではミニョは走ってどこかへ行ってしまうかも知れない。そう思った俺はとっさにミニョの手を掴み、話があるんだと店の外へと連れ出した。
留守電に気づかなかったこと、一方的に怒鳴って電話を切ったこと。アフリカにいる間にシヌに心変わりしたんじゃないかと疑ったこと、他にもいろいろ。
俺は自分に非があったことを認め、謝った。
「留守電のことはもういいです。テギョンさんに伝えてってお兄ちゃんに頼まなかった私も悪いんです」
ミニョはそう言うと、わずかに顔を俯けた。
「私、テギョンさんと話せなくなって、すごく寂しかったんです。離れてることが不安で心細くて・・・でもお仕事の邪魔しないようにって我慢して。シスターにもう少し残って欲しいって言われた時もすごく悩みました。悩んで留守電入れて。返事がないのはもしかしたら違う人に電話しちゃったのかもとかいろいろ考えて。やっと電話がかかってきて、久しぶりにテギョンさんと話せるってすごく喜んで出たのに、いきなり怒られました。何がいけなかったのか一生懸命考えて、ごめんなさいって何度もメッセージ入れて、でも全然返事がなくて。そのうち、私ってもういらなくなっちゃったんじゃないかなって思い始めたんです。返事がないのは、うっとうしいからほっとけばそのうち諦めるだろうって思ってるのかもって」
ミニョの声が震えている。俺に見られないようにするためか、顔を逸らしたミニョは小さく鼻をすすり、涙を拭く仕種をした。
「そんなことないって思いたかった。私は捨てられてないって、思いたかった。だから迎えに来て欲しかったんです。無理なお願いだって判ってるけど、来て欲しかった。でもずっと待ってたのに、テギョンさんは来ませんでした。そしたらお兄ちゃんとテギョンさんが話してるのを聞いたって、シヌさんが空港に・・・・・・」
シヌがあの時空港にいたのは俺とミナムの話を聞いてたからだったのか。やっぱりミニョが伝えようとしてたのは俺だけだった。
しかし・・・・・・
知り合いもいない遠い国でひとり。
どれだけ不安で心細かっただろう。俺が電話をすると楽しげな声でずっとしゃべっていたのは、アフリカでの生活の楽しさを伝えようとしてたんじゃなくて、俺としゃべれることが嬉しかったんだと初めて気づいた。それなのに俺は自分の都合をミニョに押しつけた。
「ごめん、俺は・・・」
「シヌさんは落ち込んでる私の傍にいて、ずっと元気づけてくれました。私今、シヌさんとおつき合いしてます」
ミニョの口からはっきりと告げられた言葉は、かなりショックだった。
ミニョに触れようと伸ばした手はその言葉でそれ以上近づくことができず、俺は虚しく宙を握る。
「俺は今でもお前が好きだ」
「ごめんなさい」
「お前は俺のことが嫌いになったのか」
「嫌いじゃありません」
「だったら」
「・・・今、私が好きなのは、シヌさんなんです」
きっぱりと俺を拒絶する冷たい言葉。
「さようなら」
小さく頭を下げ立ち去るミニョの後ろ姿を、俺はその場に立ちつくし、見送ることしかできなかった。
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明けましておめでとうございます
今年もこの場でこうやってご挨拶ができることを嬉しく思います。
それにしても・・・・・ああ、新年最初のお話がこんな内容で・・・(><;)
テギョン、ファイティン!(笑)
今年もよろしくお願いしますm(__)m
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