日蝕 13 | 星の輝き、月の光

星の輝き、月の光

「イケメンですね」(韓国版)の二次小説です。
ドラマの直後からのお話になります。


「ミニョ、何で・・・」


俺はミニョを目の前にし、そう呟くとその後は言葉が出なかった。


どうしてこんなとこにいる?

俺の知らない間にスタッフになってたのか?

いや、でも、関係なヤツと言われてたぞ。

じゃあ一体どうして・・・


俺の頭の中は疑問で埋め尽くされている。

俺が呆然としている間にミニョは監督と何やら話をしていて、その後、スタッフがわらわらと動き出した。






「一体どういうことなんだ」


「今監督さんと話してたの聞いてませんでした?お料理作り直すまで、撮影は一時中断するって」


「そのことじゃない、どうしてお前がここにいるんだ」


「それもさっき説明しましたけど」


目の前で話してたのに聞いてなかったんですか?とミニョが小首を傾げながら俺の顔を覗き込んだ。


「私、ここでアルバイトしてるんです。今日お店はお休みだけど、撮影があるから見に来てもいいよって言われてて。でもまさかテギョンさんが撮影してるなんて思わなかったからびっくりしました」


裏口から入ったミニョは調理場にいたスタッフと仲良くなり、グラタンの中にエビが入っていることを聞き、それを俺が今まさに食べようとしているのを見て手近にあった皿を数枚掴んで床に投げ落としたと説明した。


俺がさっき見えたような気がした人影は、本当にミニョだった。

今本人を目の前にし、俺は複雑な心境だった。

ミニョに会えて嬉しいという思いと、戸惑う気持ちが入り混じる。

突然の再会に少なからず・・・いや、かなりうろたえている俺とは対照的に、ミニョは何でもないことのように俺と話している。そのことが俺の癇に障った。


「どうしてそんなに平気な顔ができるんだ」


「どうしてって言われても・・・」


困ったような顔をするミニョに俺は眉根を寄せつつ、拳を握った。ミニョの態度にイラつくが、同時に感情的になって声を荒らげてはいけないと自制する。

もとはといえば俺が悪いんだ。俺はそんなつもりはなかったが、ミニョにしてみれば俺にずっと無視され続けてたことになる。

その結果がこれだ。

シヌとつき合っているミニョはもう俺のことは何とも思っていないんだろう。だから久しぶりの再会にも動じることなく、まるでただ知り合いにでも会っただけのような反応。

だが俺は違う。ミニョのことを忘れようと頭では考えていても、その声と姿に敏感に反応してしまい、心はもやもやと深い霧の中で出口を求めさまよっている。


「話があるんだ」


霧の正体は判らないが、まずは電話で怒鳴ったことを謝って、留守電に気づかなかったことを謝って・・・

俺たちの間に誤解があったことを説明したかった。しかしミニョは「私は別にありません」と言って素っ気なく背を向ける。

その行動に対する俺の反応はほとんど無意識だった。

そのまま俺の前から去ろうとするミニョの腕を掴むと、引き寄せ、抱きしめた。




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