好きになってもいいですか? 12 | 星の輝き、月の光

星の輝き、月の光

「イケメンですね」(韓国版)の二次小説です。
ドラマの直後からのお話になります。

今日は朝からちょっとウキウキしてる。どうしてかというと病院に行く日だから。

あ、別に病院へ行くこと自体が嬉しいんじゃなくて、外出できることが嬉しかった。

韓国に帰って来た日。ここへ来る前にお兄ちゃんと一緒に少しだけ買い物とかしたんだけど、それ以来、私はこの合宿所の敷地から一歩も外に出てなかった。

それはお兄ちゃんに止められてたから。

お兄ちゃんは私の足の怪我がもう少し良くなるまでは外に出るなって。

骨折してる訳じゃないし、近くのお店で買い物するくらい大丈夫だって言ったのに、どうしてもダメだって、首を縦に振ってくれなかった。

私のことを心配してくれてるからだと思うと、お兄ちゃんの言葉を無視して外へ出かけることはできなくて、おとなしくここにいたんだけど。

でも今日は病院へ行く日。

病院がOKなら少しくらい他の所に寄ってもいいわよね、と今日のお昼はどこかのお店でランチでも食べようかと考えていた。

そろそろ出かけようと支度をしていると、玄関の方から誰かの足音が近づいてくる。みんな帰りは遅くなるって言ってたのに誰だろうと思って振り返ると、車のキーをチャリチャリと鳴らしながらシヌさんが歩いてきた。


「あれ?どうしたんですか?」


ちょっと仕事が早く終わったから・・・というような時間ではない。だってまだお昼前。

もっとも、いつも仕事の時間が不規則だから、こういう日もあるのかも知れないけど。


「忘れ物ですか?」


「ああ、忘れ物っていうか・・・ミニョは?今日は病院に行く日だろ?」


「はい、丁度今出かけようと思ってたところです」


私はテーブルの上に置いてあったバッグを手にした。


「そう、じゃ行こっか」


「はい?」


「病院」


「え?」


「行くんだろ?」


「はい・・・?」


シヌさんは頭の中に疑問符の浮いたままの私の手首を掴むと、玄関の方へと歩き出した。


「ミニョを迎えに来たんだ。昼過ぎまで俺、時間空いてるから」


そう言うとシヌさんは白い車の助手席のドアを開けた。


「あ、もしかしてお兄ちゃんに頼まれました?私が病院以外の所に行かないように、とか」


私一人だとどこか寄り道するんじゃないかと思ってお兄ちゃんがシヌさんに頼んだんじゃあ・・・と私はシヌさんに聞いてみた。


「いいや、ミナムは知らないよ、ていうか誰も知らない、俺が勝手にしてることだから。ほら、早く乗って」


でも・・・と躊躇する私の身体を半ば押し込むような形で助手席に座らせると、シヌさんは病院へ向けて車を走らせた。






足の怪我はまだ痛みがあるけど、腫れも引いて経過は良好。腕の傷もだいぶよくなり、消毒をしてガーゼを交換した後、看護師さんが包帯を巻いてくれた。

それを見ながら私は、この間テギョンさんに包帯を巻いてもらった時のことを思い出していた。

嫌味な言葉と楽しそうな顔。それが突然辛そうな表情に変わって・・・

何となく気になって次の日の朝、それとなく様子を窺ってたんだけど、キッチンへ来たテギョンさんは冷蔵庫から取り出した青い瓶の中身を飲むと、すぐに姿を消してしまった。

私がシヌさんやジェルミと話してるとすごく不機嫌そうな顔をするのは、私がここに来た時と変わっていない。でも二人きりで話をするときは優しい面も見せてくれる。


「テギョンさんって・・・どんな人なんですか?」


テギョンさんという人がよく判らなくて、何となくシヌさんに聞いてしまった。


「テギョンのこと・・・気になるの?」


そう言って私の顔を見たシヌさんの表情はどこか哀しげで寂しげな気がして、それ以上何も聞けなくなってしまった。







診察が終わるとシヌさんが「丁度お昼だし、どこかでご飯食べよっか」と言ってお店に連れてってくれた。

向かい合って座り、うどんをすする。


「おいしい~」


「だろ?ここは大通りからちょっと外れてて目立たない場所にあるけど、すごくおいしくて俺のお気に入りの店なんだ」


目の前のシヌさんは太い黒縁の眼鏡をかけている。目はいいって言ってたから伊達眼鏡ね。

その眼鏡をかけてるシヌさんはいつもの物静かな感じじゃなくて、ちょっとコミカルに見える。

眼鏡一つですごく印象が変わって見えるのが何だか不思議。

でも顔の印象は変わっても、眼鏡の奥にある二つの目は変わらずに優しく光っていた。




シヌさんの携帯が着信を告げている。


「時間切れか・・・本当はこの後、アイスのおいしい店に連れて行こうと思ってたんだけど、また今度にしよう。ちょっと待ってて」


お昼ご飯を食べ終わってお店を出ると、シヌさんがちょっと離れた駐車場に停めた車を取りに行こうとキーを手にした。


「あの、私、車まで行きますから」


そう言って歩き出した私は足元の段差に気づかず、踏み外してバランスを崩した。身体が大きく車道側へと傾き、運の悪いことに丁度そこへ車が走ってきて・・・


「ミニョ!」


シヌさんの叫ぶような声とともに伸びた手が私の腕を掴み、くんっと引っ張られた次の瞬間、私の身体はシヌさんの腕に包まれていた。




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