好きになってもいいですか? 11 | 星の輝き、月の光

星の輝き、月の光

「イケメンですね」(韓国版)の二次小説です。
ドラマの直後からのお話になります。

「あれ?おかしいな・・・えーっと、こうして・・・う~~」


私は今、格闘している。この白くて長いモノと・・・っていうのも大げさだけど、私にはそれくらい大変なことだった。

右手に持った白い包帯を左腕に巻く。ただそれだけのことなのに、何度やってもうまく巻けない。ぐるぐると巻いてるうちに、最初の方が解けてきちゃって。


「こんな時間にこんなとこで・・・何遊んでるんだ?」


昨夜ほど遅くはないけど、それでもとっくに日付けは変わってしまった深夜。

キッチンの椅子に座り腕に包帯を巻いていた私は、急に声をかけられ飛び上がりそうなほど驚いた。ううん、今日も確実に私の心臓は飛び上がったと思う。


「テギョンさん・・・遊んでるんじゃありません。手を洗ってたら濡れちゃって・・・あ、包帯、お借りしてます」


晩ご飯の時のテギョンさんを思い出し、また睨まれるんじゃないかと思って身体が委縮する。そのせいかうまく巻けない包帯はどんどん絡まって・・・

暫くの間、テーブルの上にある濡れた包帯と私の腕を見比べ首を傾げていたテギョンさんは、小さなため息をつくと、隣の椅子に腰を下ろした。


「確かによく見れば遊んでるようには見えないな。これは・・・遊ばれてるようにしか見えない」


目を細め、器用に片方の口の端だけを上げて嫌味を言うテギョンさん。


「・・・貸してみろ」


いつまでたってもうまく巻けない私を見かねてか、私の手から包帯を奪い取った。

テギョンさんは私の腕の傷を見て顔をしかめた後、長く広がってしまった包帯を一度くるくると巻き直し、私の左腕に巻いていく。


「うわぁすごい、看護師さんみたいですね」


てきぱきと作業をしている姿は本当に看護師さんに巻いてもらってるみたいで。


「だいたい左利きなのに左腕に包帯を巻こうなんて、不器用なお前には無理なんだ」


「え?どうして私が左利きだって知ってるんですか?それに不器用って・・・」


「あ~・・・ミナムが左利きだし・・・怪我してるくせによく左手で物を掴むだろ、それに・・・不器用そうな顔してる」


「不器用そうな顔って・・・」


それって一体どんな顔ですか!って思いっ切り反論したいとこだけど・・・


「じゃあ器用なのか?」


そう言われると・・・


「・・・いいえ、器用じゃありません・・・」


私にはそれ以外に言葉が見つからない。

勝ち誇ったような顔でニヤリと笑うテギョンさんを見て、私はちょっとだけ頬を膨らませた。


テギョンさんの長い指が滑らかに動いてる。その動きを見ていて、私もあんな風にできたらなってため息をついた。


「いいですねテギョンさんは・・・器用そうで・・・」


「こんなのはコツさえつかめば誰でもできる。まあそれができないヤツを不器用って言うんだがな」


また口の片端だけが上る。

何も言い返せないのが悔しい・・・

こんな風に夜中に突然私の腕に包帯を巻く破目になってしまったテギョンさんは、きっと迷惑そうな顔をしてるんだろうな・・・って思ってその顔をチラチラと見てたんだけど・・・

意外なことに、嫌そうな顔はしてなかった。

それどころか、どちらかというと楽しそうな・・・今にも鼻歌なんか聞こえてきそうな感じ。

包帯巻くのが好きなのかな?


「ほら、できたぞ」


そのひと言で私はテギョンさんから自分の腕に視線を移した。

まるで病院でしてもらったようにきれいに巻かれた包帯。


「ありがとうございます。やっぱりテギョンさんは器用ですね」


「俺は・・・器用じゃない・・・」


さっきまでの何となく楽しそうだったテギョンさんの表情が曇っていく。


「現実を受け入れたくなくて・・・目の前の出来事が信じられなくて・・・自分の感情がうまくコントロールできない・・・不器用なヤツだ」


その言葉の意味は私には判らなかった。何かショックなことでもあったのかなって、それくらいのことしか推測できなくて、どんな言葉をかけたらいいのかも判らない。

テギョンさんの顔はどんどん沈んでいって、何だか辛そうに見えた。




テギョンさんという人が判らない。

昼間はよく睨まれることがあるけど、こうやって夜顔を合わせるとそれほど怖い顔はしない。私が皆と一緒にいる時はあんまりしゃべらないけど、今はこうして話してくれる。

そして、これは弱音っていうものなのかな?そんなものまで私に聞かせてくれて・・・

そのギャップ?みたいなもののせいなのか、何となくテギョンさんのことが気にかかる。


「さあ、もう寝ろ。いつまでも起きてると傷の治りも遅いぞ」


「テギョンさんももう寝るんですよね。昨日も夜遅くまで起きてたし、今日は朝早かったし・・・いくら仕事だからって身体壊しちゃいますよ」


私なんかのことよりも自分の心配をしてくださいって、そう言ったんだけど。

それが何か気に障ったんだろうか。

テギョンさんは眉根を寄せるとギュッと目を瞑り、ひどく苦しそうな表情をした。そして身体から湧き起こる感情を抑え込むようにぐっと拳を握りしめると、私から顔を逸らし、そのまま何も言わず足早にキッチンから出て行ってしまった。




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