You're My Only Shinin' Star (235) 秋空の下で 3 | 星の輝き、月の光

星の輝き、月の光

「イケメンですね」(韓国版)の二次小説です。
ドラマの直後からのお話になります。

新郎の控え室がノックされ、テギョンのどうぞと言う声で開いたドアから姿を見せたのはヘイだった。


「なんだ、もう支度できてるじゃない。」


ドアを大きく開け部屋の中を一瞥するヘイ。

マ室長は先程出て行った為、テギョンの他には誰もいない。


「ヘイ、何でここに・・・」


「自分で招待しておいて何よそれ。他の人が来られないからって、来ちゃいけない訳じゃないでしょ。それにしても・・・意外よね、テギョンが結婚だなんて、その性格じゃあ一生無理だと思ってたんだけど。」


「どういう意味だ?」


テギョンの片方の眉がピクリと上がる。


「あら、ミニョのことを褒めたつもりなのよ、気に障ったならごめんなさい。」


「チッ・・・まったく、こんなとこまで喧嘩売りに来るなんて、ずいぶん暇なんだな。」


「今日の為にわざわざスケジュール空けてあげたのよ、私だって忙しいんだから。・・・・・・ちょっと、何してんのよ、早く入りなさいよ。」


テギョンとヘイにとっては挨拶のような軽い言い争いの後、フンッと顔を逸らしたヘイは廊下にいた人物の腕を掴み、部屋へと引っ張った。


「ミナム・・・」


驚くテギョンを見ながらミナムを部屋の中へ押し込むと、ヘイは廊下に出て開いていたドアをバタンと閉めた。

静かな部屋の中、テギョンと二人きりになり何となく気まずいのか、ミナムは視線を泳がせている。


「えーっと・・・ヘイが合宿所まで迎えに来てさ・・・天気もいいし、ドライブにはちょうどいいかなって・・・」


いつもの、ミニョのことでテギョンをからかうミナムの姿はどこにもない。何を話したらいいのか判らず、戸惑っている姿がテギョンの目には新鮮に映る。

ドアを背にし、部屋の入り口で突っ立っていたミナムは所在無げに辺りをキョロキョロと見回すと「院長様に挨拶して来る」と言い、ノブに手をかけた。


「ミナム。」


ただのドライブでわざわざそんな恰好するのか?とテギョンの口元が緩む。視線の先には、結婚式で父親の代わりをする為に着てきたのであろうモーニングコートをピシッと着ているミナムの姿。口の端に笑みを浮かべたテギョンは、出て行こうとするミナムを引き止めるように椅子から立ち上がった。








「ミニョ、綺麗ね。」


新婦の控え室では、ミニョのウエディングドレス姿を見てヘイが感嘆の声を漏らしていた。


「ヘイさん、来て下さってありがとうございます。」


ヘイを迎えるミニョは恥ずかしそうに頬を赤く染めている。


「テギョンが隣で暇そうにしてたわよ。」


「そうね、こっちも準備できたし、そろそろ新郎を呼んであげましょうか。でもその前に・・・フニを呼んでこなきゃ。」


テギョンの反応が楽しみだわと笑うワンは、トイレへ行った後、辺りをうろついていたマ室長を捕まえカメラの準備をさせる。

ヘイがテギョンの部屋へ行くとそこにミナムの姿はなく、テギョンが一人で椅子に座っていた。

テギョンはミニョのいる部屋の前で一度深呼吸をし、ゆっくりとドアを開け、そして・・・・・・目の前の光景に息を飲んだ。




テギョンの目に飛び込んできたのは白いウエディングドレスに身を包んだミニョの姿。

サイドから優しいドレープを持たせたオフホワイトのAラインドレス。キュッと締まったウエストには大きめのシルクのバックコサージュ。胸元のドレーピングとオフショルダーがミニョの美しいデコルテを強調し、ラインストーンとパールを使ったミックスネックレスが胸元に輝く。

滑らかな肩。

ロング丈のグローブ。

髪はゆるめにカールした毛先をふんわり纏めたハーフアップスタイルで、ネックレス同様パールを使った小ぶりで可憐なデザインのティアラがキラキラと輝いていた。


「どう、テギョン、驚いた?」


「ミニョさん凄く綺麗だよな。」


ワンとマ室長が口々に言う。しかしテギョンは黙ったまま。

テギョンにはミニョしか見えていなかった。この部屋にいるワンもカメラを構えているマ室長の姿も、テギョンの目には映らない。そして何も耳に入らない。

窓から射し込む柔らかな陽の光を浴びるミニョの姿は白いドレスのせいか、身体の輪郭がぼやけて見え、まるで白いオーラに包まれているような錯覚に陥る。

恥じらい、赤く染まる頬。

艶やかに輝く唇。

息をするのも忘れそうになるほど美しいミニョの姿に見惚れ、テギョンの鼓動は強く高鳴り、まるで言葉を忘れてしまったかのように何も口に出せないまま、その場に立ち尽くしていた。

時間の流れさえもテギョンには感じられず、そこだけ時が止まってしまったように視線もミニョから外せないまま、テギョンは身動き一つできずにいる。

どのくらいの間そうしていただろう。

漸くテギョンは一度瞼を閉じると大きく息を吸い、ゆっくりとミニョの前へと歩み寄った。

一歩一歩近づくにつれ、鼓動が速さを増していくのを感じる。

一方ミニョは依然として黙ったままで、何も言葉をかけてくれないテギョンに不安を覚えると、恥ずかしげに笑みを浮かべていた顔を曇らせ、徐々に俯けていった。


「あの・・・似合い、ませんか?」


おずおずと上目遣いのミニョはその言葉を言うのが精一杯のようで、キュッと唇を噛むとドレスを握りしめた。


「え?あ、いや・・・・・・すごく、似合ってる。」


小さく動く艶やかなミニョの唇が刺激的に見え、テギョンは視線を泳がせると口元に拳を当て、小さな咳払いをした。


「本当・・・ですか?」


「ああ、すごく・・・綺麗だ。」


恥じらいに揺れるミニョの瞳。

美しく、愛しい姿に、今この場で思い切りミニョを抱きしめてしまいそうになるのをぐっと堪え、テギョンは手に持っていた白い手袋を強く握りしめた。


ミニョを眩しそうに見つめるテギョンと、漸くほっとしたようなミニョの視線が絡み合う。


「オッパも、すごく・・・カッコいいです。」


「当たり前だ、俺はいつでもカッコいい。」


照れ隠しのような咳払いをし、口の片端を上げるテギョンにミニョは小さな笑いを漏らした。




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