You're My Only Shinin' Star (191) 2度目のプロポーズ 3 | 星の輝き、月の光

星の輝き、月の光

「イケメンですね」(韓国版)の二次小説です。
ドラマの直後からのお話になります。

駐車場に停めた車から大量の荷物を降ろすとエレベーターに乗り込む。

何度も往復をするのは面倒だからとちょっとだけ無理をして二人共両手に大きな袋を提げている。もちろんテギョンはミニョに重たい袋は持たせていない。

エレベーターの中で二人横に並び、変わっていく階数表示を眺めているミニョをチラッと横目で見ると、テギョンは口の端を上げた。


「私の顔に何かついてますか?」


テギョンの笑みに気づいたミニョは小首を傾げる。


「俺達ってどんな風に見えるんだろうって思ってな。」


手に持っているのは大量の食料品に日用雑貨。普段の生活で必要なものばかり。


「えーっと、お買い物帰り・・・ですかね。」


あまりにも予想通りの言葉にテギョンは少しだけ肩を落とすと、エレベーターが目的の階に着いたことを知らせる小さな音を立てた。




出掛ける前に「帰ったら話がある」とカトリーヌから言われていた二人は、部屋へ入ると並んでソファーに座った。

何の話なのか大体の察しはついていた。

ミニョは目の前に座るカトリーヌに真剣な表情を向ける。


「私・・・来月の末にイギリスへ帰ることにしたの。」


カトリーヌは壁に掛けられたカレンダーに目を遣ると言葉を続けた。


「来週一週間もう一度イギリスへ行くわ。そしてここに戻って来る。でも来月・・・四月の終わりには向こうに帰るわ。」


カトリーヌはミニョの方を向くと少しだけ俯き影の差すその顔をじっと見つめた。


「その時にミニョ・・・私と一緒にイギリスへ行かない?」


カトリーヌの言葉にミニョは驚いたように顔を上げた。





「そんなに大したことではないけど・・・私がステージで歌っているところをミニョに見て欲しいの。

ホールが変わればそれに合わせて微妙に発声も変える。野外ならなおのこと歌い方を変えるわ。

その違いをその耳でちゃんと聴いて欲しい。

韓国でミニョに教えることができなかったことをイギリスでなら教えてあげられる。

もしミニョがこれから先、聖堂以外で歌うことを望むならきっとミニョにとってプラスになる。

・・・なーんて、本当はただミニョと一緒に私の住んでいる街を歩きたいだけなんだけどね。

結婚しちゃったら一人で海外になんてなかなか行けないでしょう?・・・私はずいぶん自由にさせてもらっているけど。テギョン君は・・・きっと無理よね。

だから、これからのことがどうとか考えないで、観光のつもりで・・・どうかしら、もちろん無理にとは言わないわ。」





カトリーヌはその場では返事を聞かず、話だけをすると自分の部屋へと消えていった。

リビングにはテギョンとミニョ。二人は互いにカトリーの言葉を頭の中で繰り返していた。


「あと・・・一ヶ月半か・・・」


テギョンがカレンダーに目を遣る。


「イギリスへ・・・」


ミニョは何かを考えるようにじっとテーブルを見つめている。


「四月の終わり・・・丁度ツアー中だな・・・」


写真集の撮影、アルバムのレコーディング、CMの曲に映画のOST・・・ツアーの後予定されている仕事をざっと思い出してみる。


細切れの休みなら取れるが、まとまった日にちとなると・・・結婚は・・・冬か?


テギョンが腕組みをして軽く眉間にしわを寄せ、式をいつ挙げるかと考えている横で・・・


「イギリスへ行けばステージで歌うカトリーヌさんが見られるんですね。」


ため息まじりに呟くミニョ。

半ばうっとりとした表情のミニョにテギョンの口が尖る。


「ミニョ、お前の頭の中は彼女のことで一杯か?」


「だって私、カトリーヌさんがステージで歌ってる姿見たことないんですよ。」


自分はこれから先のミニョとの生活のことを考えているのに、ミニョはカトリーヌのことを考えているのかと思うとテギョンの尖った口が左右に動く。


「練習室で聴いていても素敵なんですからステージの上だと、もっともっと素敵なんでしょうね。」


瞳をキラキラと輝かせるミニョ。


「この間カトリーヌさんからもうすぐイギリスへ帰ると聞いた時は、凄く悲しかったんです。でも暗い顔してちゃいけませんよね。明るくありがとうございましたって言わなくちゃ。」


カトリーヌとの別れは悲しいが、ステージで歌う姿が見られるかもと思うと沈んでいた心が浮き立つ。

ミニョの顔に浮かぶ笑みをテギョンは目を細めて見ると、拗ねたような表情を見せた。


「ミニョ、カトリーヌさんのことだけじゃなくて俺のことも考えてるか?」


「はい?」


「俺がプロポーズしたこと忘れた訳じゃないだろうな。」


「はい、もちろん憶えてます。アン社長が許可して下さるまで一年でも二年でも、五年でも十年でも、私ずっと待ってますから。」


頬を赤く染め恥ずかしそうに俯くミニョにテギョンはやれやれとため息をつく。


「俺はそんなに待たせるつもりはないし、アン社長の許可など待つつもりもない。」


テギョンは立ち上がるとソファーに座るミニョの目の前へ行き、スッと跪くとミニョの左手を取り薬指にそっと口づけた。


「今年の冬・・・いや、秋には結婚しよう。」


ミニョを見上げるテギョンの真剣な眼差しにミニョは息を凝らした。

瞬きもせずにテギョンを見つめるミニョの顔はテギョンが優しい微笑みを浮かべると途端に真っ赤になっていく。


「不服か?」


「いいえ、そんな!・・・ただ、吃驚して・・・」


「どうして?前にちゃんとプロポーズはしただろ?」


「はい、でも・・・もっとずっと先のことのような気がしてましたから・・・」


ずっと隠してきた二人の関係。交際発表をしたのはまだ最近のこと。

プロポーズはされていたが、あの時はまるで夢を見ているようにフワフワとした気持ちだった。それが秋には結婚しようと言われ、浮いていた足が地面に着いたような感覚。


「きっとまた、騒ぎになるんでしょうね・・・」


急に現実味を帯びてきた 『結婚』 という二文字に戸惑い、不安になるミニョ。

テギョンと交際発表をしただけでマスコミも世間も大騒ぎだった。それが結婚となれば・・・


「何も心配する必要はない。周りのことは気にするな、俺のことだけ考えていればいい。」


テギョンはもう一度ミニョの薬指に口づけると立ち上がりミニョの身体を引き上げる。

腰に腕を回し優しく抱きしめるとミニョの耳元で囁いた。


「秋には式を挙げよう。」


ミニョはテギョンの肩口に額を押しつけながら「はい」と小さく頷いた。




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