番外編です。本編よりちょっと(?)未来のお話になります。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
インターホンが鳴る。
ミニョは待ち焦がれたようにモニターへと走って行き、相手を確認するとパタパタとスリッパの音を響かせながら玄関のドアを開けた。
「いらっしゃい、カトリーヌさん、お久しぶりです!」
ドアの向こうには微笑むカトリーヌの姿が。
「ミニョ、久しぶり。」
ミニョの満面の笑顔を見てカトリーヌはミニョの身体を優しく抱きしめた。
「いらっしゃい、お久しぶりです。」
ミニョの後ろからテギョンが声をかける。
「こんにちはテギョン君。ちょっとお邪魔させてもらうわね。」
カトリーヌがテギョンと挨拶を交わしている間にミニョは大きなトランクをリビングへと運び込んだ。
「ミニョ、どうせすぐにホテルに行くんだから、玄関に置いておけばいいわ。」
「そんなこと言わずにゆっくりしてって下さい。電話でも言いましたけど、今日はぜひ泊まって・・・いや、明日も、明後日も・・・カトリーヌさんさえよかったら、こっちにいる間ずっと泊まって下さい。」
ミニョはトランクを置くとキッチンでお茶の用意をしながらカトリーヌに声をかけた。
ミニョはリビングのテーブルにカップを三つ置くと、わざとテギョンから少し離れてソファーに座った。
そんなミニョを見ながら小さくため息をつくテギョンと、テギョンの方を全く見ずにカトリーヌを見てニコニコと笑うミニョ。
二人の様子を見ながらカトリーヌはカップへと手を伸ばした。
「カトリーヌさん、ぜひ泊まってって下さいね。前使ってた部屋はそのままゲスト用にベッドは置いてあるし、今朝まで私が使ってたんですけどシーツもちゃんと替えておきましたから。」
今朝までミニョが使ってた?
カトリーヌはミニョの言葉に ? と首を傾げたが、テギョンが口に拳を当て小さく笑っているのを見てそっちの方が気になり、カップに口をつけながらチラリとテギョンの方を見た。
「クックックッ・・・何だ、そうか、ミニョ、戻って来る気になったんだな・・・。カトリーヌさん、ぜひ泊まってって下さい。今日だけじゃなく、明日も、明後日も・・・韓国にいる間ずっとでも構いません。」
口の両端を上げ笑うテギョンは嬉しそうにミニョの肩を抱く。ミニョは肩に置かれたテギョンの手を、よいしょっと外すと少しだけ口を尖らせテギョンの方を向いた。
「オッパ、勘違いしないで下さい。私が寝室に戻ってもオッパと一緒に寝る訳じゃありませんから。」
フン、とテギョンから顔を逸らし紅茶を飲むミニョに、今度はテギョンが口を尖らせる。
「何?じゃあ俺に別の場所で寝ろというのか?一体どこで?ここのソファーで寝ろとでも言うのか?」
「別にソファーだなんて・・・。そうだ、合宿所。あそこならオッパの部屋まだそのままですよね。今日から合宿所に泊まって下さい。」
「何だそれは。自分の家がここにあるのに何でわざわざ合宿所まで行って寝なきゃならないんだ?」
「だったら私が合宿所に行きましょうか?」
テギョンとミニョの言い争いにカトリーヌは目を丸くしながら交互に二人を見ると、ゆっくりとカップを置いた。
「何?喧嘩してるの?」
「「喧嘩じゃありません!」」
一瞬顔を見合わせた後、フン、と口を尖らせ顔を逸らすテギョンとミニョ。
言い争いをしながらも息がピッタリの二人を見て、カトリーヌはクスクスと笑い出した。
イギリスへ帰ったカトリーヌが、公演の為に韓国へやって来ると聞いたのは二週間ほど前。
カトリーヌから連絡を受けたミニョは、リビングでコーヒーを飲んでいるテギョンに大喜びで報告すると、カレンダーに赤いペンで○印をつけた。
この日になればカトリーヌに会える。
何ヶ月ぶりだろう・・・
ミニョは壁に掛かったカレンダーの日付けを見てニコニコしながらふと首を傾げた。
あれ?そういえば今月はまだ、アレがきていない・・・
カレンダーの数字を指で追いながら更に首を傾げる。
先月は確か・・・
先程までカトリーヌに会えるとはしゃいでいたミニョが急に静かになってカレンダーとにらめっこしているのを見て、テギョンがミニョの後ろに立ち声をかけた。
「どうかしたのか?」
「いえ、別に・・・。今月はまだ、きてないなって・・・」
「来てないって・・・誰が?」
「いえ、誰というか・・・アレ、というか・・・」
「あれ?」
「ん~っと・・・」
いくら相手がテギョンでも恥ずかしくてハッキリと生理とは言えないミニョは、少し顔を赤くしながら口ごもる。
上目遣いでテギョンを見るミニョを見て、暫く、あれって何だ?と首を傾げ考えていたテギョンだったが・・・
急にパッと顔を輝かせるとミニョの両肩をがしっと摑んだ。
「ミニョ!あれってもしかして毎月くる・・・アレか?」
「あっはい、え~っと、あの、その・・・アレです・・・」
テギョンの顔をまともに見られず赤くなった顔を下に向け、徐々に小さくなるミニョの声。
そんなミニョの様子にテギョンは満面の笑みを浮かべると、ミニョの顔を下から覗き込んだ。
「子供か?子供だよな?子供ができたんだな?」
「え?あの、まだそうと決まった訳では・・・ちょっと遅れてるだけかも知れないし・・・」
「そうかぁ、子供かぁ・・・」
テギョンは放心した様にそう呟くと、ミニョの身体をギュッと抱きしめた。
「よくやった、ミニョ。・・・そうかぁ、俺が父親になるのかぁ・・・」
「オッパ、まだそうと決まった訳じゃありません。」
ミニョは自分の身体にはり付くように回されたテギョンの腕から何とか抜け出すと、テギョンの顔を見ながら説明を始めた。
「遅れているといってもまだ四日です。確かに私は割と毎月正確な方ですけど、多少遅れたり早くなったりするのは普通です。ですから、まだ赤ちゃんができたとは・・・・・・オッパ?聞いてます?」
テギョンはミニョの言葉が耳に入っていないようで、暫くその場でニヤニヤしていたと思うと、急にウロウロとリビングの中を歩き出した。
「そうだ、病院、病院に行かないと・・・。産科と婦人科って一緒なのか?ああ、でも子供が産まれたら小児科もいるな。やっぱり同じ病院がいいのか?個室で付き添いが泊まれて、トイレとシャワーと冷蔵庫、テレビ、ソファーと、あと何が必要だ?ここから近くてセキュリティーがしっかりしてて・・・そうだ、肝心の医者が最高の医者じゃないとな。もちろん女医で・・・」
パソコンで病院を探し始めるテギョンを見てミニョが呆れた様に声をかける。
「オッパ、落ち着いて下さい。まだ赤ちゃんができたと決まった訳ではありません。それに病院ならすぐ近くにかかりつけの婦人科があります。あそこなら産科もありますし・・・。そんなことより、明日仕事に行ったらカトリーヌさんが来る日にお休みがもらえるように院長様にお願いしないと。」
カレンダーの○印を見て顔を綻ばせているミニョを見てテギョンは眉間にしわを寄せる。
「な、そんなことよりって何だ、それに仕事だと?施設に行くつもりか?」
「当たり前です。もし仮に赤ちゃんができていたとしても仕事は続けます。お腹が目立ってきたら歌うのはちょっと・・・公演とかはお休みすると思いますけど・・・でも子供達の世話はします。」
「何?仕事はすぐ辞めろ。妊娠初期は気を付けないと危ないって何かの本で読んだことがあるぞ。子供達の世話なんてとんでもない。院長様には俺から話をするから、暫くは家から出ずにじっとしてろ。」
「ちょっとオッパ、それはいくら何でも無茶苦茶です。あ、ちょっと、勝手に電話しないで下さい、オッパ!」
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さっそく番外編になってしまいました。
書いてて、あ、これ本編に入れたいな~って思ったんですけど、ちょっと(?)未来のお話になるので、本編が追いつくの待ってたらいつになるか判らない。
待ち切れずに番外編にしちゃいました。
しかも長くなってしまったんで、前後編です。
おかしい、コメディーが書きたかったのに、何か違う方向に・・・
前回のヘタレ丸出しの記事にお付き合い下さった皆様、ありがとうございました。
コメント、メッセージを下さった方、本当にありがとうございます。
皆さんの 「好きだよ~」 というメッセージ、凄く心に響きました。
本当に、涙が出るくらい嬉しかった。
落ち込んでたりすると、何となく心配になっちゃうんですよね。ホント、ヘタレですみません。
聞くのどうしようかな~って、ず~っと悩んでたんですけど、思い切って聞いちゃいました。
うん、聞いてみてよかった。
元気をもらいました。
大丈夫、二度と聞きません・・・違う!二度は聞きません(笑)
とにかく、やるしかないですからね、役員の仕事は。まずは訳の判らない提出書類をやっつけなければ。
今年一年頑張って、来年更に上の役をやって、そのあと二年、役員OB会というのに所属し、合計四年・・・
おーい、上の子小学校卒業しちゃうよ。下は今年一年生だけど・・・全部終わった頃には五年生だよ・・・長っ!
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