You're My Only Shinin' Star (84) 懸念 3 | 星の輝き、月の光

星の輝き、月の光

「イケメンですね」(韓国版)の二次小説です。
ドラマの直後からのお話になります。

二番目のライブ開催地は釜山だった。

シヌの出身地ということもあり、ライブの翌日シヌの案内で観光することになった。観光といってもファンの騒ぎを避ける為、夜になってからの外出は散歩程度のものだった。

ふざけながら歩いているジェルミとミナムのかなり前をテギョンとシヌが歩いていると、先に見えるベンチに同行取材で一緒に来ていたトレイシーが一人で座っているのが見えた。


「お一人ですか?観光ならご案内しましょうか?どこか行きたい場所はありますか?といってももう真っ暗ですけど。」


にこやかに口元に微笑みを浮かべるシヌ。


「ありがとうございます。では・・・靴屋を教えて下さい。」


「靴?]


「ええ・・・これ・・・」


トレーシーは手に持っていたヒールの折れた靴を見せる。

その時の表情と仕種が妙におかしく、テギョンとシヌは思わず噴き出し笑ってしまった。


「じゃあとりあえず、車、回してきましょうか。」


トレイシーは小走りでその場を去って行くシヌを見て口の端に含んだ笑みを浮かべると、急に立ち上がり体制を崩した。

咄嗟にテギョンがトレイシーを支えるように手を伸ばすとそれにつかまり、何とか倒れずに済んだ。


「ごめんなさい。ヒールが折れた時に足首を痛めてしまったみたいで。」


ゆっくりとベンチに座らせるとテギョンはトレイシーの前で片膝をつき、痛めている方の足をそっと持ち上げる。


「くじいているだけのようですが、後でちゃんと病院で診てもらった方がいい。バスに救急箱がありますから、とりあえず冷やしておきましょうか。」


トレイシーの足をそっと地面に下ろし、少し見上げるように顔を窺う。


「ありがとう・・・ごめんなさいね、せっかくのお休みを・・・」


「いえ・・・こちらこそ申し訳ないです。この間ネットに変な写真が出てしまって・・・。俺と一緒にいた為にご迷惑おかけして。」


「あら、今私に優しくして下さるのはお詫びのつもりですか?」


「いえ、そういう訳では・・・」


「あの写真なら気にしてません。私の顔は写ってなかったし、それに・・・何だか有名人になったみたいで面白かった。それにしても記事を書く側の人間が言うのも何ですが、色々と勝手なことを書く人が多いですね。」


困った顔をしながらクスクスと笑うトレイシーを見てテギョンの顔にも笑みが浮かぶ。

テギョンは立ち上がると少し汚れた膝を払い、救急箱を取りに行った。

その場に残ったトレイシーはテギョンの後ろ姿を見ながら意味ありげな笑いを浮かべた。






「ミニョさ~ん、聞いて下さいよ、今度の写真もひどいんですよ~」


ミニョが施設に着くと、待ってましたとばかりにソユンが近づいて来た。昨日ネットカフェへ行ってきたらしく、テギョンの話をしゃべり始める。

今回は釜山でのライブ後の写真が何枚もUPされていたらしい。夜の街を歩くメンバー。その中にテギョンの写真もあった。

今度の写真も女性とのツーショットだが、女性の顔は写っていない。

テギョンが女性を見ながら微笑んでいる写真。

椅子に座る女性の前に片膝をつき、靴を脱いだ女性の足に手を添えている写真。

何枚も女性と一緒の写真が載っていたが、どうやら前回と同じ女性らしい。


「テギョンオッパの微笑んだ顔なんて凄く貴重なのに、誰でしょうね、一緒に写ってた女って。」


今回も書き込みの数が凄いらしく、ライブツアーの間中その女性がずっと一緒にいるのを見たとか、テギョンと腕を組んで歩いているのを見たとか、他のメンバーとも親しそうだとか、とにかくパソコンで見て憶えてきた情報を事細かに話すソユン。


「あ、それ僕も見たよ。」


ハン・テギョンがミニョを見つけると近づいて来た。何年も海外にいた彼は、A.N.JELLのことはよく知らないが、ミニョ達がよくA.N.JELLの話をしているので気になり、ネットカフェで色々見て来たらしい。


「あれがファン・テギョンという人なんだ。初めて見たけどが、僕と似ているのは名前だけだね、僕はあんなにカッコよくない。きっとモテるんだろうな。一緒に写ってたのは彼女かな?ツアー中も一緒にいるなんてよっぽど好きなんだな。」


ハン・テギョンの言葉にミニョの顔が曇る。

ミニョが実際にその写真を見た訳ではない。女性を見ながら微笑んでいるといっても、周りに他にも人がたくさんいて皆と一緒に笑っていたのかもしれない。その女性だけを見て笑っていたとは限らない。いかにも二人っきりでいる様に写すこともできる。

膝をついて女性の足に手を添えて・・・やっぱり撮影?でも何も聞いていない。

テギョンからミニョへの手紙はほとんど仕事のことしか書かれていなかった。

今回のライブツアーのことも、日程などできる限り詳しく書いてあった。雑誌の取材、地元テレビ局への出演、あらかじめ判っていることは全て書いてあった。予定通りなら釜山でのライブが終わった筈。

・・・急に入った仕事?

テギョンを信じていない訳ではない。テギョンを疑っている訳ではない。ただどういう状況かが判らないというだけで不安になる。会いたいという気持ちが募る。

あと十日もすればボランティアは終わる。あと十日でテギョンに会える・・・


「ミニョさん・・・顔色悪いみたいですけど・・・大丈夫ですか?」


シヒョンが心配そうに声をかける。ミニョの顔は血の気が引いたように見えた。


「そう言えば最近お昼ご飯もあんまり食べてないみたいですけど・・・具合悪いんですか?」


「いえ・・・大丈夫ですよ。何でもありません。」


わざと元気に振舞うが、シヒョンに言われて初めて気づく、そう言えば最近あまり食べていない。・・・食欲がない訳ではないが、胃の辺りに感じる不快感。

痛み?吐き気?何だろう、よく判らない。

今まで胃は丈夫だと思っていた。他のボランティアが食あたりを起こした時も、ミニョは平気だった。


― どうしよう、もし変な病気だったら帰れなくなっちゃうかも・・・


テギョンのことに加え、ミニョの心配事が一つ増えた。




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