その日朝早くから仕事が入っているシヌとジェルミを迎えにマ室長が合宿所に来ていた。ミジャに起こされたミナムも加わり、みんな揃ってキッチンで朝食をとっていると二階でドアの閉まる大きな音が聞こえた。
「あ、ミニョ起きたかも。」
ジェルミの顔が輝き、ミニョが下りて来るのを待っているがなかなか下りてこない。食事を続けながらじっと待っていると、バタバタと階段を下りる二つの足音と何やら言い争いをしているようなテギョンとミニョの声が、徐々に近づいてくる。
「ミニョ、おは・・」
ジェルミが振り向き挨拶をしようとした時。
「何言ってるんだ昨日の朝は俺の方が先に目を覚ましてたぞ。ミニョはぐっすり眠ってたじゃないか。隣に寝るどころか、俺は一晩中お前を抱いてたんだからな!」
テギョンの声にキッチンにいた全員が固まる。
「そんなに大きな声で言わないで下さい!」
黒いキャップを目深に被り、上下白いジャージを着たミニョがキッチンの横を通り過ぎて行く。
「でも事実だ、ミニョは俺と一緒のベッドで俺が抱きしめたままでもぐっすり眠っていた!」
そのすぐ後を追いかけるようにパーカーのフードを被ったクォーターパンツ姿のテギョンが続く。
二人はそのまま言い争いをしながら玄関の方へと消えて行った。
あっという間の出来事に、通り過ぎて行った二人に声をかける暇もなく・・・というより、あの会話の内容に誰も何も言えず・・・・・・
暫くの沈黙の後、ジェルミのゴクンという何かを飲み込む音が静まり返ったキッチンに響く。
「え・・・と、いきなりの展開に、言葉も出ないんだが・・・・・・」
シヌは持っていたスプーンを口に運ぶ途中で手が止まっている。
「・・・シヌヒョン、俺涙なら出てるよ。」
ジェルミが目に涙をいっぱいに溜めてシヌを見る。
「兄として、どうコメントしたらいいのか・・・」
両手で頭を抱えるミナム。
「リーダーなかなかやるじゃない。」
濡れた手をタオルで拭きながら感心するミジャ。
「俺、ミニョさんに挨拶くらいしたかったんだが・・・・・・」
おかずをつかんだまま止まっていたマ室長の箸が動き出した。
― 目の前で微笑むミニョを見る度、その笑顔はテギョンに向けられたものだと自分に言い聞かせ、ミニョの幸せを見守ろうと昨夜ずっと考えていた。そんな俺に引導を渡しに来たのか?テギョン・・・
シヌはテギョンの言葉を思い出し、二人が消えて行った廊下をじっと見つめていた。
― 俺は、ミニョのことは友達だと思うようにしたし、ミニョにとって一番仲のいい男友達になりたいと思った。ヒョンと喧嘩した時には俺がちゃんと仲直りさせてあげようと思った。だけど、いきなりコレは、いくらなんでもちょっときついよ・・・ミニョ~・・・
ジェルミは唇を嚙み、涙が零れるのを堪えていた。
― せっかく俺が皆に内緒にしてやってたのに・・・。寝てるミニョを起こしに行こうとしたジェルミを止めたり、ミニョはぬいぐるみ部屋にいると思わせたり、色々手伝ってやったのに・・・どうして自分でバラしちゃうかな、ヒョン・・・
ミナムは今まで自分のしてきた苦労(?)が、一瞬で無駄になったことに思わず苦笑いをする。
― あらー、ミニョは嫁入り前なんだけどね・・・。まあ、リーダーにお嫁にもらってもらえばいいわね。私がいうのもなんだけど、あの子も今までずっと苦労して来たんだから、これからは幸せにならなくちゃ。
ミジャは、ミニョがテギョンと結婚すれば、もしかしたら自分にも何かメリットがあるかもと、内心ほくそ笑む。
― おいテギョン・・・いきなり子供が出来ましたなんて言うんじゃないだろうな・・・もしそんなことになったら、俺アン社長から何言われるか・・・・・・
マ室長はもし首になりそうになったら、テギョンの子供もタレントにしてテレビに出せば絶対に売れると進言しようと企む。
いつから?いつの間に?という疑問がミナム以外の皆の頭でくり返し浮かぶなか、静かに食事は続いていた。
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