本日から日本人の方が日本国内からだけでは見れない中国の真実を書きます。連載ですが、テーマは取りあえず「私の中国心」とします。今日は第一回で、中国に進出する日本企業も神経を尖らせる中国工場労働者の給料問題について、述べます。

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無論、現実に相応しくない高給料は企業の競争力を削る。しかし、一方、給料水準は安すぎると、社会の不公平を生じさせ、中国経済全体の競争力にも悪影響が生じるのだ。

労働者の給料を決める基準は労働生産効率である。すなわち、1時間あるいは1年あたり一人の労働者が価値をいくら創造できるかということなのだ。

中国の工場労働者の年間創造価値と給料の現状を述べる前に、アメリカの工場労働者のそのものを見よう。

国連の数字によると、アメリカの工場労働者が年間創造した価値は約63885ドル。中国工場労働者と同じ働く時間(2200時間/年)にすると、アメリカの工場労働者一人当たりの年間創造価値は104606ドルになる。2005年に、アメリカの工場労働者の平均年収は40409ドル。ここから分かるように、アメリカでは、工場労働者が年間創造した10万ドル余りの価値のうち、その39%に相当する4万ドル強が給料として、工場労働者に還元されている。医療保険、福利厚生も加算すると、労働者が創造した価値の半分以上は労働者に還元しているだろう。

先進国の中では、アメリカは貧富格差が一番深刻な国なのだ。ここ数年、アメリカでは、企業CEOの年収は一般労働者そのものの364倍に相当するなど、アメリカの貧富格差はこれまでもない程度まで広がっている。このような状況を考慮すると、39%という労働者創造価値から給料として労働者に還元される割合は絶対高いとは言えず、ボトムラインとも見るべきだろう。

2006年に中国では工場労働者一人当たりの年間創造価値は約12642ドル、1ドル7.9元で換算すると、10万元近くとなる。39%という給料としての還元割合で計算して、工場労働者の平均年収は38950元であるはずだ。平均月給にすると、3246元(約45000円)となる。3246元はあくまで全国の平均であり、沿岸部では工場労働者はこの数値以上の給料を貰えるはずだ。

中国工場労働者の給料の実態はどうなのか?調査によると、2006年に在職中の工場労働者一人当たりの年収は21001元、1750元の月収に相当する水準なのだ。言うまでもなく、工場労働者の給料はひどいほど低く圧迫されている。

今年5月に広州の日系企業で低賃金への不満によるストライキが発生した。本田広州はストライキを受け、24%の賃上げに踏み切った。賃上げ後の給料1909元から逆算すると、賃上げ前の平均給料は1540元。経済発達地域の広州では、賃上げ前の給料水準は勿論、24%賃上げ後の給料も絶対妥当なのものとは言えない。

ここでは本田をはじめとする日系企業を批判する意がない。日本企業の多くは中国労働者の低賃金を生産市場の魅力として中国に進出したわけだ。実は本田以上に労働者の賃金を低く押さえてきた中国社会システム及びその中にある中国企業こそ、問題の根源にあるのではと思うのだ。

『国富論』の著者、「経済学の父」と呼ばれるアダム・スミスが工商勢力による独占が労働者の賃金上昇を制限していると言っている。高賃金は経済的に望ましいと訴えて、『国富論』ではスミス以前の低賃金論に反対して、その成員の圧倒的多数が貧しい社会が隆盛で幸福であろうはずはないとして高賃金論を展開した。アダム・スミスに対して、中国の所謂「主流経済学者」たちは低賃金論のために弁護している。

正午ごろ、自慢料理を食べながら、パソコンで「中国経済網」に目を通し、ある記事が目に付いた。『ジニ係数が警戒ラインを遥かに超え、所得格差の拡大が社会の安定を危ぶませる』という題目の記事だ。改革開放初期から2007年までに中国のジニ係数は0.28から0.48に上がり、ここ2年でさらに上がり続け、すでに0.5を上回ったという。ジニ係数が0.5を超えると、富が過度に集中し、社会の安定が危ぶまれるとされている。中国は所得と分配構造の改革に本気で取り組まなければならない時期を迎えていると言えよう。

あるアメリカ企業のCEOがテレビインタービューで次のような話をしている。「工場労働者の賃金を上げると、あなたの会社は破産するとなると、それはあなたの会社はあまりにも競争力がないということだけだ。あなたの会社は存在するべからず、むしろ淘汰されたほうが社会経済にいい」。この言葉は経済発展のマクロ的真理を言い出している:自由に労働者の賃金を低く抑えることを通して競争力を維持できる企業は、ついに管理水準改善と技術開発の努力を怠ってしまい、永遠に低レベルの産業から脱せない。同じように、中国の経済は競争力を付けたいならば、中国人の人件費を高くすべきである。現在の中国経済の発展速度からして、比較的良い福利厚生以外に、2010年の中国工場労働者の平均月収は4000元前後が妥当な水準と言えるだろう。もしこの水準の賃金を支払うから、儲からない企業があれば、このような企業は市場から姿を消すべきだ。もしこのような企業は市場から消えるどころか、市場の主流となれば、それは中国の企業が不甲斐ないと言いようがしかなく、中国経済も持続的な競争力を失ってしまう。

今日の最後の一言だが、中国での人件費上昇を理由に生産拠点を中国以外に移転する動きは日系企業にも見られるが、私に言わせると、これはポジティブに見える行動ではない。中国は世界の生産工場から世界の巨大な消費市場に転換している。地の利をどう確保するかは日本企業にとって人件費問題よりも本気度を高めて取り組む課題なのではないだろうか。