自転車で海を見に行こうと息子を誘った。
息子は大学に入学したもののコロナでほとんど登校できない。休みの日には外に連れ出そうという魂胆だ。
自宅から海まで、海までといっても湘南の江ノ島まで、片道約50キロである。往復されば100キロは超える。海といえば地の果てるところだ。果てまで行くのは気分がよい。そこまで走ってみるのは思い出になろう
先週の釣りと今週のサイクリングと、父親の趣味をおしつけるような形になった。先週は小魚ながら数が釣れて楽しかった。だが今週はいささか体力を使う遊びだ。どれくらい遠いか分かっていないのか、誘いには軽く乗ってきた。
のんびり走って片道3時間以上かかるだろう。ひとりでは何度か江の島まで行っているが息子は当然初めてだ。途中二つほど丘を越えて町田に出て、あとは境川沿いに下っていく。高校時代は片道12キロを自転車で通学した息子なので体力的にはまず問題ないだろうと思う。前夜、息子の5段変速のついた自転車のタイヤに空気を入れておいた。
朝9時。Tシャツ1枚でいいちょうどよい気候だ。自分が先頭を走る。息子が何も言わずについてくる。時々顔半分後ろを向いてついてきているか気配を確かめる。はじめて休憩したのは道程の半分ほど来たところだった。疲れたか聞くと、お尻が痛くなったという。行けそうか、と聞くと黙ってうなづく。
藤沢の町で川から離れる。市街地を縫ってあとは海岸まですぐだ。昼食は後にしてとりあえず海に出ることにした。江ノ電の江ノ島駅から海へ続く細い通り。コロナとはいえけっこう人は多かった。坂を上ると意外な高さに海が見えた。海岸通りを渡って、江ノ島水族館前の公園に自転車を停める。疲れていないつもりだったが、自転車を降りると疲労を感じた。ベンチに座ってしばらく海を見る。
しかし海での滞在は10分程度だった。とてもお腹がすいていた。何を食べるか。協議の結果、ちょっと遠いが帰り道の途上にあるバーガーキングにすることにした。帰りは国道を走って最短距離で進む。藤沢の町を抜けて、なんという名前の坂だろうか、自分にとっては激坂を登る。ここを登ってしまえばあとはずっと平坦だ。川沿いに湾曲した道をだらだら登り道を行くより気分的には楽だ。
湘南台のバーガーキングに到着。2階に上がって食べる。マックではなかなか腹いっぱいにはならないがバーガーキングならちょうどよい。思った以上に遠かった、と息子が行った。帰りは最短距離だから早いぞ、というが疲れてスピードが落ちてきているのであまり自信がない。食べ終わる。トレイは息子が片付けた。国道を真北に向かって走る。ほとんど直線である。
町田まで帰ってきた。駅周辺の街中を走る。交差点で自動車同士の事故を目の当たりにした。ケガするような事故ではなかったが派手に外車の横をこすったのはレンタカーに乗った、息子と歳の近そうな若者だった。何かできることはないかと一瞬思ったが、特にできそうなことはなかった。
アイスでも食べていくか、と声をかけると、もう家まで近いでしょ、という。あと10キロくらいか。近いといえば近いがまた丘が2つ待っている。それでも息子の言う通り、さっさと帰ることにした。最後の丘の登りで息子に声をかける。ここまでくれば道はわかるだろうから自分のペースで先に行くよう言う。息子は歩道に乗り上げて追い越していった。脚を見るが疲れていないようだ。だんだん離れていく。ずっと後ろを走らせて悪かったなと思う。息子のペースにつられるようにペースを上げる。だが長くは続かなかった。息子は振り返らないで登っていく。まだ日が暮れるまでは時間がありそうだ。自分のペースに戻る。
丘の頂上が近づいて息子がペースを落とした。待っているようだ。何も言わずに並んで、そのまま前に出た。そして丘を下っていく。息子はこの自転車の小さな旅をおもしろかったと思っているのかどうか。おもしろくなくても多分記憶に残るだろうと思う。そう思いながら多摩川に架かる橋を渡った。のどが渇いた。うまい酒が飲めそうだっと思った。
途中でちょん切れてしまったが、帰りのサイクリング記録。