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Super Elastic ! Super Optimistic !

中央大学ロースクール生が新司法試験合格を目指すブログ。10回受験して、10回合格する力をつけることが目標!

 主観的出来は、まぁまぁ良くできた。
 分量は、8ページいっぱい。


 (論点)業務上横領と共犯を落とす、罪数処理等、いくつかのミスをしてしまった。
 しかし、論点量こそ多いものの、事案は複雑でなく、典型論点の組み合わせであり、難易度は低い。
 論証を貼っていくだけで十分に合格答案が書ける問題だった。
 時間管理もよくできた。
 確実にとるべき問題。




刑法 
第1 A社所有の東京都南区の土地一筆(以下、「本件土地」とする)に抵当権を設定した行為についての甲の罪責
 1 A社に対する業務上横領罪(刑法(以下、略)253条)の成否
 (1)甲が本件土地について、Dに対する抵当権を設定した行為につき、業務上横領罪が成立しないか。
 (2)ア まず、「業務」とは、社会生活上の地位に基づいて反復継続して行う事務をさす。
      甲は、A社の定款により代表社員として定められており、「業務」をみたす。
   イ 次に、 「自己の占有」とは、濫用のおそれのある支配力である。
よって,事実上の占有のみならず法律上の占有も含む。
    本件では,甲は代表社員として、A社の所有する不動産の処分権を有しているため、法律上の占有がある。
     したがって、「自己の占有」をみたす。
ウ また、本土地はA社の所有物であるため、「他人の物」をみたす。
エ そして、横領罪の成立には、委託信任関係が必要である。
      本件では、甲はA社と委任ないし雇用契約を結んでると考えられるため,委託信任関係も認められる。
オ 横領罪の成立には,一時使用の目的と区別するために不法領得の意思が必要である。
     不法領得の意思の内容は,委託信任関係に背いて,権限なく,所有者でなければできないような処分をする意思をさす。
    本件では,抵当権の設定は、甲の借り入れの担保としてなされるものであり、会社法595条1項に定められる利益相反取引に該当する。 
    そうすると、A社定款では、社員全員が出席する社員総会において、利益相反取引を行おうとする社員以外の全員の承認が必要とされており、甲はこの手続を履践する必要があった。
    しかし、甲は上記手続を採ることなく、独断で抵当権の設定に至っている。
    よって,この行為は、委託信任関係に背いて,権限なく,所有者でなければできないような処分にあたり、不法領得の意思は認められる。
カ 「横領」とは、不法両得の意思の発現行為をさすと考える。
本件では,抵当権設定契約時にこのような意思が確定的に発現しているから,この時点で横領罪は既遂に達する。
 (3)そして、甲には、故意も認められることから、業務上横領罪が成立する。
 2 有印私文書偽造、同行使罪(159条1項、161条)の成否
 (1)甲は、Dに対して上記の抵当権を設定するために、社員総会議事録(以下、「議事録」とする。)を作成し、Dに交付している。この行為について、有印私文書偽造、同行使罪が成立しないか。
 (2)ア まず、「事実証明に関する文書」とは、争いあるも,実社会生活に交渉を有する事実を証明するにたりる文書であると考える。
      本件の議事録は、本要件をみたす。
イ(ア)次に、「偽造」の意義をどのように考えるべきか。
この点,本罪の保護法益は文書に対する公共の信用にある。
よって,「偽造」とは,作成者と名義人の人格の同一性を偽ることをいうと考える。
(イ)そして、名義人の判断方法は、上記の文書偽造罪の保護法益から考えると、一般人が誰の意思・観念が記載されていると認識するかという点から判断すべきである。
       その判断は,文書に表示されている個人名だけでなく,文書の性質等を考慮して行う。
     (ウ)本件では、まず,上記の通り、A社の定款では、利益相反取引に際して社員総会を要求している。
そして、本件議事録は、社員総会で社員の互選により、選任された社員総会議事録作成者が作成・署名押印することが定められている。
そうすると、定款上、一定の作成権限ある者のみが作成を認められていたことから,本件議事録には,その性質上,定款上の作成権限が要求されている。
        このように考えると、本件文書を受け取った一般人は,本件文書が,「社員総会の互選を受けた、定款上の作成権限を有する甲」によって作成されたと認識する可能性がある。
        よって,作成者は「そのような権限を認められていない甲」であるから、偽造が認められる。
     (エ)そして、本件議事録には、「代表社員甲」及び署名捺印がなされていることから「他人の印章・・・署名」を使用しているといえる。
     (オ)甲は、Dに交付するという「行使の目的」をもって、本件議事録を真正にかかる文書として供しているため、「行使」が認められる。
    (3)よって、甲の上記行為につき、有印私文書偽造、同行使罪が成立する。
 3 Dに対する詐欺罪(246条1項)の成否
 (1)上記のように、A社の承認を得ないまま、承認があったように装って抵当権の設定した行為が詐欺罪にあたらないか。
 (2)ア まず、欺罔行為が認められるか。
      欺罔行為が認められるためには、経済取引上の重要事項を偽ることが必要となる。
      本件では、A社の承認を得ていないことから、Dは適法に本件土地の抵当権を取得することができないことになる。
      そうすると、このような甲の振る舞いは、1億円の取得に向けられた欺罔行為と評価できる。
   イ そして、Dは、甲の欺罔行為により、A社では承認手続が適正に行われ、抵当権設定契約が有効に成立していると誤信している。この誤信に基づいて、甲に現金1億円を交付している(処分行為)。
   ウ 次に、Dに財産上の損害が認められるか問題となるも、認められると考える。
     なぜなら、詐欺罪は個別財産に関する罪であるところ、真実を知っていれば財物を交付しなかったといえれば、財産上の損害は認められるからである。
     本件でも、Dは、承認手続が履践されていないことを知っていれば、1億円を交付しなかったといえる。
  エ 甲には故意も認められるため、1億円の交付を受けた時点で詐欺罪の既遂が成立する。
第2 Eに対して、本件土地を売却した行為について
1 甲の罪責(業務上横領罪の成否)
 (1)まず、そもそも、前述の通り、A社に対しては、すでにDに対する業務上横領が成立している。そこで、本件売却は前記の業務上横領罪の不可罰的事後行為として、何ら犯罪が成立しないのではないか。
   この点,不可罰的事後行為概念の趣旨は,先行行為により,後にされる行為の違法性が評価されているといえる点にある。
ここで,担保権の設定により,第一譲受人は担保の負担という観点で権利侵害があったといえるが,更なる売却により,第一譲受人は権利を全く取得できていない。
このように,担保の設定と所有権の移転では,権利侵害の質に違いがある以上,先の行為で後の行為を評価しきれない。
よって,売却行為は業務上横領罪と評価される。 
  (2)本件売却についても、「業務」、「自己の占有する」、「他人の物」、「横領した」の要件は、前述の場合と同様みたす。
     したがって、本件売却行為につき、業務上横領罪が成立する。
     後述の通り、乙とは共同正犯となる。
2 甲の罪責((特別)背任罪の成否)
 (1)まず、甲がDに対して、抵当権設定登記の抹消を求めた行為は、詐欺罪(246条2項)を構成するとも思えるが、甲に故意が認められないため、何ら犯罪は成立しない。
 (2)本件売却は、Dの抵当権を侵害するもので、(特別)背任罪(会社法960条、247条)が成立しないか。
 (3)ア 甲は、抵当権を設定した当事者として、Dに対し、抵当権を有効に存続させるという事務処理を継続すべき者といえる。この事務は財産上の事務といえる。
   よって、甲は、「事務を処理する者」にあたる。
イ 次に、甲は、自己の暴力団関係者に対する借金の返済に充てるために本件売却に至っているため、「自己・・の利益を図り・・・目的」が認められる。
  たしかに、乙に対する1000万円の手数料を得る目的も認められるが、主たる目的は自己の借金の返済であるため、上記結論を左右するものではない。
ウ そして、甲D間においては、抵当権を有効に存続させる信任関係が認められる。
エ 甲が本件土地を売却する行為は、このような信任関係に違背するもので、任務違背行為がある。
オ 背任罪の成立には、財産上の損害が必要であるところ、経済的損害の有無によって判断する。
  本件では、抵当目的物が売却されれば、競売に支障が生じる可能性が高いため、経済的損害が認められると考える。
カ 甲には、故意も認められるから、(特別)背任罪が成立する。
   後述の通り、乙とは共同正犯になる。
 2 乙の罪責
  (1)乙には、業務上横領罪の共同正犯、背任罪の共同正犯が成立する可能性がある。
  (2)ア しかし、後者については、乙は甲が金策に窮していることを利用して、犯行を促している関係が認められる。経済取引界において一定の働きかけを行うことは通常の経済活動といえる範囲で許容されるべきである。
そこで,背任罪の共犯の成立において,成立範囲を一定の限度に制限する必要がある。
具体的には,融資元の役職員に(特別)背任罪が成立することを前提に、①相手方役職員が背任の故意及び図利加害目的を有することを認識し、かつ②融資を実現するために積極的加担行為を行い、または、③融資に応ぜざるを得ない状況のあることを利用することが必要である。
    イ(ア)本件では、①について、乙は、甲から、A社に無断で本件土地に抵当権を設定したこと及びDに対して抵当権を設定した旨を聞いている。そして、甲が、本件土地の売却代金を借金の返済にあてる意図を抱いたことを認識している。
     (イ)そして、甲は当初、本件土地を売却するつもりはなかった。
しかし、乙が「Dが悪い。」等と説得し、甲に本件売却を決意させるに至っている。
(ウ)また、乙は、金に困っている甲を利用して本件土地をEに売却させようとしており、実際に甲は、金策のために本件売却を決意している。
  ウ よって、①②③の要件はいずれもみたすため、乙に(特別)背任罪の共同正犯が成立しうる。
  (3)では、改めて、上記2罪の共同正犯が成立しないか。
   ア 共同正犯の成立には、①正犯意思、②意思の連絡、③共謀者による実行行為が必要である。
   イ まず、①について、乙は甲が受け取る1億円のうち1000万円を手数料として受け取ると約束をしており、利益の帰属が認められる。
     また、そもそも本件売却を働きかけたのは、乙であり、説得の態様も強度のものであった。
     さらに、乙は、甲とEの間を仲介しているが、このような働きは、本件売却にとって重要なものであった。
     このような事情から、乙は、自己の犯罪として本件仲介を行っており、正犯意思が認められる。
   ウ 次に、②について、乙の説得によって、甲が本件売却を決意しているため、意思の連絡は認められる。
   エ そして、甲による売却行為、乙による仲介行為が認められるため、実行行為も認められる。
   オ よって、共同正犯の成立要件は満たす。 
(4) そして、業務上横領罪、(特別)背任罪はいずれも、身分ある者しか犯すことができにない罪である。このような罪ついて、共同正犯が成立するか。
   この点、65条1項は「身分によって構成すべき犯罪」,同2項は「身分によって特に刑に軽重がある場合」としている。
このような文言に着目し,1項は真正身分犯の規定であり,2項は不真正身分犯の規定であると考える。
さらに,65条1項の「共犯」には,共同正犯を含む。
なぜなら,非身分者も身分者を通じれば,法益侵害をすることは可能だからである。
   よって、乙には、65条1項に基づき、横領罪及び背任罪の共同正犯が成立する。
第3 Eに対して、本件土地を売却した行為について(Eに対する詐欺罪の成否)
1 乙の罪責
 (1)上記の本件土地の売却行為は、A社の承認を得ていないものであるから、これを秘してEの売却した行為は詐欺罪(246条1項)を構成しないか。
 (2)前述の通り、承認を欠くことを秘して売却する行為は欺罔行為にあたる。
   そして、錯誤に基づく処分行為があり、真実を知っていれば1億円及び300万円を交付しなかった以上、財産上の損害もある。
 (3)よって、乙には、1億300万円について、詐欺罪が成立する。
2 甲の罪責
  (1)甲に、上記の罪について、共同正犯が成立しないか。
     甲は、自己の借金の返済のために本件売却に至っており、正犯意思が認められる。
     また、意思の連絡、実行行為もあるため、共同正犯の要件をみたす。
  (3)たしかに、乙が受け取った300万円については、故意がないとも思える。
 しかし、甲は、乙がEとの仲介として契約のあっせんを行っていることは認識していたのであるから、いくらかの手数料をEから受け取るであろうことは、認識し得たものといえる。
  よって、1億300万円の全額について、乙と共同正犯の関係に立つ(60条、246条1項)。
第4 罪数
 甲には、①Aに対する業務上横領、②有印私文書偽造・同行使、③Dに対する詐欺罪、④Aに対する業務上横領罪、⑤Dに対する(特別)背任罪、⑥Eに対する詐欺罪が成立する。
 そして、②③は手段目的の関係にあり、牽連犯(54条1項後段)となる。
また,①と④は,同一の物に対する侵害であるから,包括一罪として処理すべきである。
それ以外は併合罪(45条前段)となる。
 乙には、④⑤⑥が成立し、いずれも甲とは共同正犯となる。
以上