自作の論証集です。
少し細かすぎる論点も入っています。
えんしゅう本や事例演習で触れられている程度の論点を抑えておけば十分だと思いますので、全て完璧に理解する必要はないと思います。
問題集名や予備校名は、対応問題と出題された答練の回等を示しています(論証をグルグル回す際に、自分の演習の記憶を喚起するために記載したものです)。
よかったらお使いください。
なお、正確性の担保はありませんので、最終的には自己の判断で答案に書いてください。
労働法
個別的労働関係法
【目次】
1 労働契約の内容
【論点】就労請求権 『読売新聞社事件』
【論点】労働者の損害賠償責任における責任制限 『茨城石炭商事事件』
【論点】私傷病と労務拒否『片山組事件』
【論点】競業避止義務 『東京リーガルマインド事件』 平成18年 新司法試験第1問
【論点】引き抜き行為が誠実義務違反となるか 『ラクソン事件』
【論点】労使慣行 『商大八戸ノ里ドライビングスクール事件』 プレテスト 第2問
【論点】就業規則による労使慣行の破棄の可否
【論点】労働条件の決定(法律,労働協約,就業規則,労働契約の関係)
【論点】 メールチェック 『e-mail 閲覧事件』
2 労働者・使用者
【論点】労働基準法上の労働者 『横浜南労基署長事件』
【論点】労働者災害補償法の労働者
【論点】労組法上の労働者 『CBC管弦楽団事件』『INAXメンテナンス事件』『新国立劇場事件』
【論点】労組法上の使用者 『朝日放送事件』 平成18年 新司法試験第2問
【論点】労働契約上の使用者 法人格否認の法理 『第一交通産業事件』
【論点】黙示の労働契約 『サガテレビ事件』
【論点】労基法違反の責任主体としての「使用者」
3 就業規則
【論点】労働者の意見を聴取しない就業規則の効力(最低基準効)
【論点】届出のない就業規則の効力(最低基準効)
【論点】周知義務(労基法106条)を怠った就業規則の効力(最低基準効,普通契約約款としての効力)
【論点】就業規則の法的性質 『秋北バス事件』
【論点】周知(労契法7条)の内容
【論点】業務命令『自動車営業所事件』
【論点】就業規則の不利益変更
【論点】労働者の不利益性 賃金・退職金の減額の場合 『大曲市農業協同組合事件』
【論点】労働者の不利益が重大な場合 『みちのく銀行事件』
【論点】就業規則の新設
4 差別取扱の禁止
【論点】女子を優遇することが「差別的取扱」(労基法4条)にあたるか
【論点】男女同一賃金の原則(4条)の要件 間接差別 『岩手銀行事件』
【論点】昇進昇格差別 『芝信用金庫事件』
【論点】コース別雇用管理 『野村証券事件』
5 採用
【論点】採用の自由の限界 『三菱樹脂事件』 平成21年 新司法試験第1問
【論点】調査の自由の限界
【論点】採用内定の法的性質 『大日本印刷事件』 LEC選択マスター第2回
【論点】採用内定取消についての不法行為責任 『パソナ事件』『コーセーアールイー事件』 LEC選択マスター第2回
【論点】試用期間 え本9 プレテスト第1問 LEC選択マスター第2回
7 非典型労働契約
【論点】 期間途中の解雇
【論点】雇止めの法理の適用場面『東芝柳町工場事件』『日立メディコ事件』 プレテスト,平成21年 新司法試験第1問,2問
【論点】雇止め法理
【論点】黙示の更新の効果(同契約説)
【意義】 労働者派遣
【論点】 派遣先企業との関係
【論点】 偽装請負 『松下プラズマディスプレイ事件』
【論点】 偽装解散
8 賃金
【論点】留学費用の返還免除約定と労基法16条 『長谷工コーポレーション事件』
【論点】パ労法8条の要件を満たさない場合に公序違反が認められるか 『丸子警報器事件』
【論点】退職金不支給・減額条項の適法性 『三晃者事件』 平成18年 新司法試験第1問
【論点】退職後に懲戒解雇事由が判明した場合,労働者は退職金を請求できるか『日本高圧瓶工業事件』
【論点】退職金支払後に懲戒解雇事由が判明した場合,使用者は労働者に返還請求できるか
【論点】賞与・一時金の法的性質
【論点】賞与一時金の支給日在職要件の適法性
【論点】小切手による賃金支払は通貨払の原則(労基法24条)に反しないか
【論点】 賃金請求権の譲渡の可否 『電電公社小倉電話局事件』
【論点】 使者への支払は直接払の原則に反しないか
【論点】 賃金全額払の原則は相殺禁止の趣旨を含むか
【論点】調整的相殺は賃金全額払の原則に反しないか『福島県教組事件』
【論点】合意相殺は賃金全額払の原則に反しないか『日新製鋼事件』
【論点】 賃金請求権の放棄が賃金全額払の原則に反しないか 『シンガーソーイングメシーン事件』 平成18年 新司法試験第1問
【論点】 民法536条と労基法26条の関係 『ノースウエスト航空事件』
9 休日・休憩
【論点】 休憩自由利用原則の制約
【論点】 年休自由利用の原則
【論点】 年次有給休暇の法的性質 『白石営林署事件』
【論点】 就業規則等により,具体的時季指定を休暇日の一定日までになすべきことを規定できるか
【論点】 事後請求の可否
【論点】 「事業の正常な運営を妨げる場合」の意義 『時事通信社事件』
【論点】 長期休暇の請求 『時事通信社事件』
【論点】 休暇日が差し迫った時季における時季指定権の行使
【論点】 年休の使途を尋ねることの適法性
【論点】 一旦年休を受理した後になされた時季指定権の可否 LECセミファイナル第1問
【論点】 一斉休暇闘争 『津田沼電車区事件』 『国鉄群山工場事件』
【論点】 有給休暇取得の不利益取扱 『沼津交通事件』
【論点】 産前産後休業の不利益取扱 『東朋学園事件』
【論点】 計画年休の効果 スタ論2回
【論点】 賞与算定における年休権行使の不利益取扱 スタ論2回
【論点】 有期雇用の場合の年休権の取得 スタ論2回
【論点】 繰り越しの可否 スタ論2回
10 労働時間
【論点】 「労働時間」(労基法32条)の意義 『三菱重工長崎造船所事件』
【論点】 労働時間該当性判断基準(準備時間)
【論点】 仮眠時間 『大星ビル管理事件』
【論点】 住み込み管理員の活動 『大林ファシリティーズ事件』 2011総合起案演習第1問
【論点】 仮眠時間が労働時間と認められた場合の賃金請求
【論点】 時間外労働義務 『日立製作所武蔵工場事件』
【論点】 違法な時間外労働に対しても割増賃金請求ができるか 『小島事件』
【論点】 「特定」(32条の2)の意義 『JR西日本事件』
【論点】 確定した勤務時間の変更の可否
【論点】 「過半数を代表する者」(労基法36条1項)の意義 『トーコロ事件』
【論点】 労働協約の形式で締結された36協定の労働協約としての効力
【論点】 時間外労働手当 『高知県観光事件』
【論点】 「監督若しくは管理の地位にある者」(労基法41条2号)の意義 『神代学園ミューズ音楽院事件』 LECセミファイナル第1問
【論点】 割増賃金の計算 LEC選択マスター4回
【論点】 代償休日
【論点】 振替休日 (昭63.3.14基発150)
【論点】 時間外・深夜・休日労働が重なった場合の割増賃金の取扱
12 人事
【論点】 職能資格の引き下げとしての降格の可否 『アーク証券事件』
【論点】 役職の引き下げとしての降格 『マナック事件』
【定義】 配転
【論点】 配転命令の法的根拠 『東亜ペイント事件』
【定義】 出向
【論点】 出向命令の法的根拠 『新日本製事件』
【論点】 出向期間中の労働関係
【定義】 転籍
【論点】 転籍命令の有効要件
【論点】 復帰命令の適法性
【論点】 起訴休職の有効要件 『全日本空輸事件』
13 懲戒
【論点】 懲戒権濫用法理
【論点】 懲戒権の根拠 『関西電力事件』
【論点】 懲戒事由の追加の可否 『山口観光事件』
【論点】 経歴詐称 『炭研精工事件』
【論点】 業務命令違反 所持品検査の有効性 『西日本鉄道事件』
【論点】 職場規律違反 事業場内の政治活動 『電電公社目黒電話局事件』
【論点】 私生活上の非行
【論点】 内部告発 『トナミ運輸事件』
14 労災
【論点】 「業務上」(労保法7条1項1号)の意義 『大分放送事件』
【論点】 脳・心臓疾患の業務起因性 『東京海上横浜支店事件』
【論点】 自殺における業務起因性
【論点】 自殺の場合の損害賠償請求 『電通事件』
【論点】 通勤災害 『通勤災害事件』 『オウム通勤災害事件』
【論点】 使用者の責任免除 『三共自動車事件』
15 労使関係の終了
【論点】 解雇予告義務違反の解雇の効力 『細谷服飾事件』 新司法試験 平成23年第1問
【論点】 解雇権濫用法理
【論点】 解雇が無効とされた場合の賃金請求権
【論点】 ユ・シ解雇が無効とされた時の解雇期間中の賃金請求
【論点】 変更解約告知 『スカンジナビア航空事件』 伊藤塾全国模試2009 第1問
【論点】 留保付き承諾 『日本ヒルトン事件』 伊藤塾全国模試2009 第1問
【論点】 合意解約(意思表示の撤回の可否) 『大隈事件』
【論点】 辞職(意思表示の撤回の可否
【論点】 退職勧奨 『下関商業高校事件』
【論点】 中間収入の控除 『あけぼのタクシー事件』 平成21年新司法試験第1問
【論点】 懲戒解雇の普通解雇への転換の可否
【論点】 整理解雇 『東洋酸素事件』
【論点】 負傷・疾病休業または産前産後休業における30日間の解雇制限期間(労基法19条1項)中の解雇予告の可否
【論点】 除外認定(19条1項ただし書後段・2項)を受けない解雇制限期間中の解雇の効力
【論点】 除外認定(20条3項)を受けない即時解雇の効力
1 労働契約の内容
【論点】就労請求権 『読売新聞社事件』(東京高決昭33・8・2) 80選 4-2
無効な解雇・休職や出勤停止処分を受けた労働者が就労を試みたが,使用者により就労を拒否された場合,労働者による就労妨害禁止の仮処分申請が認められるか。就労請求権が認められるかが問題となる。
この点,労働契約においては,労働は義務であって権利ではないから,原則として就労請求権は認められない。
ただし
①労働者の就労請求権について労働契約等に特別の定めがある場合で
②業務の性質上労働者が労務の提供について特別の合理的な利益を有する場合
には,就労請求権が認められると考える。
【論点】労働者の損害賠償責任における責任制限 『茨城石炭商事事件』(最判昭和51.7.8)
労働者の労働義務違反によって損害を被った場合には,使用者は労働者に対し,債務不履行や不法行為を根拠に損害賠償を請求することができる。
この点,使用者は労働者の労働によって利益を得ている(報償責任)。
よって,信義則上(民法1条2項)相当と認められる限度で賠償請求できるにすぎないと考える。
具体的には
①労働者の帰責性
②労働者の地位・職務内容・労働条件
③損害発生に対する使用者の寄与度
を考慮して判断すべきである。
【論点】私傷病と労務拒否 『片山組事件』(最判平成10.4.9)
1 私傷病により労働者が特定の業務を完全には遂行できない場合,労務受領拒否による休職期間中の賃金を請求できるか。
2 この点,労使間の衡平の観点から
①職種や業務内容を特定せずに労働契約を締結した場合で
②現に就業を命じられた業務について労務の提供ができなくても,その労働者の能力,経験,地位,企業の規模,業種,労働者の配置・
異動の実情から配置される現実的可能性のある他の業務について労務の提供が可能で
③労働者がその提供を申し出ている場合
には,債務の本旨に従った労務提供(民法493条)が認められると考える。
3 よって,このような場合には,労務の履行不能について,使用者に帰責事由(536条2項)が認められ,賃金請求ができると考える。
【論点】競業避止義務 『東京リーガルマインド事件』(東京地裁平成7.10.16) 80選 8-8 え本17
平成18年 新司法試験第1問
1 競業避止規定の有効性
まず,労働者は,労働契約の存続中は,信義誠実の原則(労契法3条4項)から,労働契約の付随的な義務として,競業避止義務を負う。
2 労働関係終了後の競業避止規定の有効性
この点,使用者には企業防衛のために競業避止契約を締結する必要がある。
しかし,退職後の労働者の職業選択の自由(憲法22条1項)を保護する必要もある。
そこで
①契約上特別の根拠がある場合であり
②かつ,当該規制に合理性が認められる場合
に限り競業避止義務が発生し,それ以外の場合には,当該競業避止義務を定めた規定は公序良俗に反し無効(民法90条)となると考える。
そして,この合理性の判断は
①競業禁止の目的の正当性
②労働者の地位・職務内容
③競業制限の対象となっている職種の範囲
④競業制限の期間,場所的範囲
⑤代償措置の有無
等の観点から,使用者の利益と労働者の被る不利益及び社会的利害を総合的に判断すべきである。
3 差止請求の可否
競業避止義務が認められる場合,使用者は退職労働者に対して損害賠償請求のみでなく,差止請求もできると考える。
ただし,差止請求は,退職労働者の職業選択の自由を直接に制限することから
①当該競業行為によって使用者が回復しがたい営業上の利益を現に侵害され
②または,侵害される具体的なおそれがある場合
にのみ認められると考える。
※あてはめ
フォセコ・ジャパン・リミティッド事件(奈良地判昭45・10・23)
③制限の対象職種は使用者の営業目的である金属鋳造用副資材の製造販売と競業関係にある企業であって制限の対象は狭い
④場所的には無制限であるが,これは使用者の営業の秘密が技術的秘密である以上やむを得ない
④制限期間は2年間という比較的短期間である
⑤退職後の制限に対する代償は支給されていないが,在職中,機密保持手当が支給されている
→ 競業避止義務契約は有効
【論点】引き抜き行為が誠実義務違反となるか 『ラクソン事件』
この点,労働者は,労働契約上,誠実義務(労契法3条4項)を負う。
一方,引き抜かれる労働者には転職の自由(憲法22条1項)が認められる。
そこで,両者の調和の観点から,転職の勧誘を超え,社会的相当性を逸脱した場合に限り,誠実義務違反となると考える。
具体的には
①転職者の人数,地位
②会社に対する影響
③引き抜きの方法
等を総合的に考慮して決する。
【論点】労使慣行 『商大八戸ノ里ドライビングスクール事件』(大阪高平5.6.25) 80選 4-4 え本2
プレテスト 第2問
労使慣行とは,労使関係において成文の規範に基づくことなく長期間にわたって反復継続して行われてきた取扱をいう。
労使慣行は,
①長期間にわたって反復継続して行われ
②労使双方がこれを明示的に排除しておらず
③当該慣行が労使双方(特に使用者側は当該労働条件について決定権または裁量権を有する者)の規範意識によって支えられている場合
には,民法92条の「事実たる慣習」として,労働契約上の権利や義務となると考える。
※労使慣行の効力 ①労働契約としての効力
②権利濫用
③不当労働行為
④規定の明確化・具体化
【論点】就業規則による労使慣行の破棄の可否
就業規則変更によって,それより有利な労使慣行を破棄することができるか。
この点,労契法10条ただし書は,就業規則によって変更されないとの合意がない限り,就業規則より有利な労働条件部分も合理的な就業規則変更によって変更されうると規定する。
したがって,不変更の合意がなく,かつ,就業規則変更が合理的であれば,有効に成立していた労使慣行も破棄されうると考える。
この際,労使慣行の成立や破棄にいたる経緯,手続等の諸事情が,不変更の合意の存否の判断や就業規則変更の合理性判断の中で重視される。
【論点】法律,労働協約,就業規則,労働契約の関係
労基法13条は,「この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は,その部分について無効とする」としている。
(法律>労働契約)
92条1項は,「就業規則は,法令または当該事業場について適用される労働協約に反してはならない」としている。
(労働協約>就業規則)
93条は,「就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は,その部分については無効とする」としている。
(就業規則>労働契約)
よって,労働条件は,法律 > 労働協約 > 就業規則 > 労働契約という順で決定される。
【論点】 メールチェック 『e-mail 閲覧事件』
1 労働者に無断でメールのチェックを行うことは不法行為が成立しないか。
2 この点,メールの内容は労働者のプライバシー権(憲法13条)によって保護されるものである。
一方,企業の内部情報の漏洩防止のためにメール内容のチェックをする必要がある。
そこで、このようなプライバシーは、合理的範囲で保護されるにすぎないと考える。
3 その判断は
①監視の目的・態様
②監視により生じた不利益
を比較考量して行う。
2 労働者・使用者
【論点】労働基準法上の労働者 『横浜南労基署長事件』(最判平8,11,28)80選 1-1 え本1
1 「労働者」とは,事業に「使用」され,「賃金を支払われる者」(労基法9条)である。
労基法の目的たる労働者保護のため,就労の実態から「労働者」の該当性を判断すべきである。
2 判断においては
①指揮監督関係の有無
・指示に対する諾否の自由
・具体的な指揮監督関係
・時間的・場所的拘束性の有無
・代替性
②報酬の労務対償性
③補強要素
・事業経費の負担
・公租公課の負担
・専属性
を考慮する。
※労契法2条も忘れずに!
【論点】労働者災害補償法の労働者 80選 1-2
労働者災害補償法上の労働者といえるか。
労災保険法には労働者を定義する条文がないため問題となる。
この点,労災保険法は,労基法第8章「災害補償」に定める使用者の労災補償義務を補填する制度として制定されたものである。
よって,労災保険法上の労働者とは,労基法上の労働者(9条)と同義であると考える。
【論点】労組法上の労働者 『CBC管弦楽団事件』(最判昭51.5.6)
『INAXメンテナンス事件』『新国立劇場事件』(最判平成23.4.12)
1 「労働者」とは,「賃金,給料その他これに準ずる収入によって生活する者」(労組法3条)である。
この点,労組法の目的は,労働者の団結権及び団体交渉権を実効あらしめる点にある。
そして,労組法上の労働者とは,労組法上の保護を及ぼすべき者を指すと考える。
よって,現実の指揮監督関係,厳格な労務対償性は要求されず,広い意味での経済的従属性が要求されると考える。
2 その判断は
①その者が当該企業の業務遂行の不可欠な労働力として組み込まれているか
②契約の内容が一方的に決定されているか
③業務遂行の内容について指揮命令が存在するか
④業務の発注の諾否の自由があるか
等の要素を総合的に考慮して行うべきである。
【論点】労組法上の使用者 『朝日放送事件』(最判平7,2,28) え本19 平成18年 新司法試験第2問
「使用者」(労組法7条)とは,労働契約上の使用者に限られるか。
この点,不当労働行為制度の目的は,使用者による団結権侵害を直接是正することにより,正常な労使関係秩序の迅速な回復を図る点にある。
そうすると,「使用者」を契約当事者に限定する必要はない。
よって,使用者とは
①労働者を自己の業務に従事させ
②労働者の労働条件について,雇用主と部分的に同視できる程度に(雇用主から派健を受けて)現実的かつ具体的に支配決定することが
できる地位にある者
をいうと考える。
【論点】労働契約上の使用者 法人格否認の法理 『第一交通産業事件』(最判平20,5,1)
1 会社法の論証と同じ
2 もっとも,労働契約関係存在の主張の場合については,法人格否認の法理が個別例外的救済法理であり,使用者には営業廃止の自由(憲法22条1項)があることから,法人格否認の法理を根拠として,継続的な労働契約の存在を主張することはできないのが原則である。
しかし,親会社の完全支配下で親会社が子会社の組合を壊滅させるために子会社の解散を行った場合まで,法人格否認の法理を用いることを否定すると,企業が事業場を子会社としたうえで解散するという不当労働行為(労組法7条1号,3号)を認めることになり,妥当でない。
そこで,この場合,法人格否認の法理によって子会社の従業員は親会社に対して労働契約関係存在の主張をすることができると考える。
【論点】黙示の労働契約 『サガテレビ事件』(福岡高昭58,6,7) 80選 1-3
AB間で労働契約が成立しているといえるか問題となる。
この点,労働契約の一方当事者である「使用者」(労契法2条2項)とは,原則として,労働者が労働契約を締結した相手方である。
しかし,労働契約の基本的な要素は,使用者が賃金を支払い,労働者が労務を提供することである。
そうすると
①労働者と受入企業の間に使用従属関係が認められ
②受入会社が労働者の賃金額その他の労働条件を決定し
③派遣元企業の存在が形式的目的といえるような場合
には,黙示の労働契約の成立を認める余地が生ずる。
【論点】労基法違反の責任主体としての「使用者」(労基法10条)
労基法10条の「使用者」に該当するかが問題となる。
労基法10条の趣旨は,職場において実際に労務管理を担当する者の行為を規制することで労働者の保護を図る点にある。
よって,労基法10条の「使用者」とは,労基法が規制する事項につき,責任と権限を有する者をいうと考える。
※労基法上の使用者概念
1 労基法に基づく契約責任(労基法13条等)を負う「使用者」
労基法上の基準が労働契約の内容となり,労働契約上の義務として責任を負うものため,労働契約上の使用者と一致する
2 労基法違反の罰則(労基法117条以下)の適用や,行政監督(労基法97条以下)の対象となる「使用者」(本論証)
労基法10条より,「この法律で使用者とは,事業主または事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について,事業主のために行為をするすべての者をいう。」
3 就業規則
【論点】労働者の意見を聴取しない就業規則の効力(最低基準効)
労働者の意見を聴取(労基法90条)していない就業規則は有効か。
この点,90条の趣旨は,労働者の意見を尊重する意味で就業規則の作成・変更につき組合等の意見を求めた上で監督官庁に届けさせて法令・労働協約に違反しないよう行政的監督を図ることにある。
そうすると,労働者の意見はあくまで参考に過ぎず,その不聴取は就業規則の効力に影響を与えない。
したがって,有効であると考える。
【論点】届出のない就業規則の効力(最低基準効)
届出(労基法90条)のない就業規則が有効か。
この点,90条の趣旨は,監督官庁に届けさせて法令・労働協約に違反しないよう行政的監督を図ることにある。
そうすると,届出は監督行政上の便宜のためにすぎないから,届出がなくても就業規則の効力には影響を与えない。
したがって,有効であると考える。
【論点】周知義務(労基法106条)を怠った就業規則の効力(最低基準効,普通契約約款としての効力)
1 周知義務(労基法106条)を怠った就業規則の効力が問題となる。
2 最低基準効
この点,周知が要求されているが,その趣旨は,行政監督のための行政取締規定にすぎない。
また,使用者が手続を怠っていることを理由に労働者が最低基準効による保護を受けられないのは妥当ではない。
よって,就業規則の最低基準効(労契法12条)については,労働者に対して実質的な周知がなされていれば足りると考える。
3 普通契約約款としての効力 『フジ興産事件』
これに対し,就業規則の契約効の発生要件としては,労契法7条,10条は労働者に対する周知を要求しており,周知の方法によること
が必要であると考える。
【論点】就業規則の法的性質 『秋北バス事件』(最判昭43.12.25) え本3
就業規則の法的性質が問題となる。
労使対等を理念とする労基法2条1項の趣旨からすれば,就業規則の拘束力を認めるためには,就業規則の内容が契約内容となる必要がある。
しかし,集団的労働関係において統一的労働条件を設定するためには契約内容の定型化が必要である。
そこで,就業規則が合理的な労働条件を定めている限り,普通契約約款類似の機能を営み,これに従うという事実たる慣習が成立しているとして,労働契約の内容になると考えるべきである。
【短文】
就業規則は,当該事業場における統一的な労働条件を定めるため,その規定が合理的なものである限り,労働契約の内容となって労働者・使用者双方を拘束する。
【論点】周知(労契法7条)の内容
この点,労基法上の周知手続を採る必要はなく,実質的な周知(労働者が知ろうと思えば知りうる状態に置かれたこと)で足りると考える。
なぜなら,労契法が労基法と別に定められたからである。
※理由はウォッチングから引用
【論点】業務命令『国鉄鹿児島自動車営業所事件』(最判平5,6,11)
本件のような業務命令権の行使は,適法か。
使用者が労働者に対し労働契約に基づき命じることができる業務命令の内容は,労働契約上明記された本来的業務ばかりでなく,労働者の労務の提供が円滑かつ効率的に行われるために必要な付随的業務も含む。
しかし,そのような業務であっても,労働者の人格や権利を不当に侵害することのない合理的な範囲でなされなければ,当該業務命令は権利濫用(労契法3条5項)や公序良俗違反(民法90条)として無効になると考える。
そして,合理性の判断は
①業務の内容,必要性の程度
②労働者が被る不利益の程度
③業務命令が発せられた目的,経緯
等を総合考慮して決すべきである。
※ 本判例は,火山灰除去作業も職場管理上やむを得ない措置であり,違法・不当な目的でされたものとは認められないとしている
【論点】就業規則の不利益変更 え本3
1 (就業規則が不利益に変更されたことを認定)
2 このような就業規則の不利益変更によって,労働契約の内容は影響を受けるか。
この点,労契法9条は,労契法10条の場合を除き,使用者は,労働者と合意することなく,就業規則を不利益に変更することはできないと定める。
そして,労契法10条は,変更後の就業規則を労働者に周知を前提として,諸事情から就業規則の変更が合理的なものであれば不利益変更を認めると規定する。
3 具体的には
①就業規則変更によって労働者が被る不利益の程度
②使用者側の変更の必要性
③変更後の規定の相当性(世間相場との比較)
④労働者の不利益を緩和する措置(代償措置,経過措置)※この要件のみ条文にないことに注意
⑤手続の妥当性
⑥社会情勢
を総合的に考慮して合理性を判断すべきである。
※ 就業規則の変更の遡及効
最判平8・3・26は遡及効を否定
∵就業規則は事実たる慣習として効力が認められるため(調査官解説)
定型契約説によっても,事前の開示が必要であるから,遡及効は否定される
【論点】労働者の不利益性 賃金・退職金の減額の場合 『大曲市農業協同組合事件』(最判63.2.16)
この点,賃金や退職金は労働条件の内でも労働者の生活基盤にとって重要な要素である。
よって,不利益変更には高度の必要性が要求されると考える。
【論点】労働者の不利益が重大な場合 『みちのく銀行事件』(最判平12.9.7)
この点,労働者の不利益の程度が重大な場合は,過半数代表組合による手続がなされていたとしても,不利益変更に合理性を認めることはできないと考える。
【論点】就業規則の新設
1 就業規則の新設について,労契法10条,11条が類推適用されるか。
2 たしかに,労契法は,就業規則の新設について明文で規定していない。
しかし,就業規則の新設によって,労働条件が不利益になる場合には,就業規則の不利益変更の場合と取扱いを変える理由はない。
3 よって,労契法10条,11条を類推適用すべきであると考える。
4 差別取扱の禁止
【論点】男女同一賃金の原則(4条)の要件 間接差別 『岩手銀行事件』(百選17)え本6
1 「世帯主」に手当を給付する規定により,賃金格差が生じている場合,労働基準法4条違反となるか。
2 この点,家族手当・世帯手当は世帯の生計という経済面に着目して支給されるものである。
そうすると,「世帯主」であるかは,その者が生計の維持者であるかによって決するべきである。
3 よって,「世帯主」条項は,一般的には性別とは関係がないから,原則としてこのような定めは女子であることを理由とする差別ではな
い。
ただし,女子は一律に世帯主ではないといった運用がなされている場合には,男女労働者の賃金に差異を設けるための形式的基準に過ぎ
ず,4条違反になると考える。
※本条違反の効果 ①罰則(労基法119条1項)
②不法行為
③無効(労基法13条)
④差額賃金請求権
【論点】昇進・昇格差別 『芝信用金庫事件』(東京高判平12.12.22) Wセミナー08 論文答練
事例 Y社では,女性職員が入社後20年経ったところで同期入社の男性職員と格付けで大きな差が出ており,職能資格制度の下における昇進・
昇格が,事実上,男性職員に限られている。
そこで,Bは,Y社に対して同期入社の男性と同等の職能資格への昇格および職位への昇進(および昇格以降の差額賃金支払)を求める訴
えを提起できないか。
1 ①昇進・昇格請求権、②差額賃金請求権の可否が問題となる。
2 不合理な男女差別の認定
この点,男女差別の存否について,使用者の差別意思を立証することは困難であるから,格差の存在という結果から推認して判断する。
具体的には,当該制度自体の欠陥として男女差別の存否を検討するだけでなく,制度の運用実態も考慮して差別の存否を検討すべきである。
本件では,Y社の職能資格制度自体については性別をもって差別する旨の定めはない。
しかし、その運用の実態をみると,男性社員に限り年功的な運用がなされており,男女職員の間で昇格に大きな格差が生まれている。
よって,Y社による職能資格制度の運用に違法な男女差別が存在するものと推認される。
3 昇進・昇格請求の可否
この点、昇格は使用者の人事権に基づき,使用者の自由裁量に委ねられているので,裁量の逸脱がない限り,その決定の効力が否定されな
い。
よって,昇格請求権は認められないのが原則である。
しかし,就業規則や確立した労使慣行により昇格が制度的に保障されている場合には,その要件を満たした者については,当然に昇格すると
いえるため,昇格請求権が認められると考える。
(あてはめ)
本件では,制度上昇格は人事考課によって行われることになっているが,男性については運用によって年功的な昇格が行われており,「確立し
た労使慣行」があったとみることができる。
よって,Bはそれを根拠に年功的な昇格請求の訴えを提起することができる。
一方,職位の昇進請求は否定すべきである。
なぜなら,職位は職員の適材適所の配置という組織運営上の事柄であって職員の処遇と直接の関連がないからである。
4 差額賃金請求の可否
労基法4条に違反して賃金差別を受けた労働者は差額賃金請求権を有するか。
この点,労基法4条は抽象的規定であり,4条の規定自体を根拠に差額賃金請求権を認めることは困難である。
しかし,労基法4条に違反する差別的な賃金規定は無効となり,女性に適用され得る賃金規定が明確な場合には,4条が13条の直律的
効力により労働契約の基準となり,4条に基づいて差額賃金を請求できると考える。
これに対して,無効となった差別的な賃金規定を補充すべき規定がない場合や,補充規定があっても賃金額の確定に使用者の査定・評価
行為が介在する場合には,4条に基づく差額賃金請求権は発生せず,不法行為により損害賠償請求ができるにすぎない。