主観的な出来はまずまず。
分量は、4ページの半分くらい。
一読して、多論点型問題と判断しました。
よって、気付いた問題点について、三段論法で淡々と処理する意識で解答しました。
論点落とし(意思表明が支配介入にあたるか)はありますし、設問2は法的措置が思い浮かばなかったなど、ミスもありますが、現場で一般的な受験生が書くであろう事項については一応触れられたと考えています。
労働法 第2問
第1 設問1
1 2月初め頃の団体交渉においての対応(誠実交渉義務違反)
(1)X組合は、労働委員会に対し、誠実交渉命令(労働組合法(以下、「労組法」とする)27条)、あっせん申請(労働関係調整法6条)及び、裁判所に不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条)を求める。
(2)ア まず、Yは、団交には応じているものの、Xからの要望に反し、経営難に陥る危険性の合理的根拠を示していない。このような対応は、誠実交渉義務に反しないか。使用者に誠実交渉義務が認められるか。明文なく問題となる。
イ この点,労組法7条2号は使用者の団体交渉応諾義務を規定しているが,使用者が単に交渉に応じるだけでは団交の意義が十分に果たせない。
よって,誠実交渉義務が認められると考える。
そして,使用者が団体交渉に臨む態度が誠実か否かは、①交渉の回数、②理由の説明③資料の提出を総合的に判断すべきである。
ウ 本件では、①Xが団交を申し入れた場合にはYは須らくこれに応じており、十分に回数を確保していたといえる。
たしかに、Yの代表取締役であるAは資料を示すのみで、当該資料から経営難の危険が窺われる理由を明確に示してはいない。
しかし、②Aは財務諸表等の要求された資料を全て開示し、現在の財務状況を考えれば、平成22年度の業績が継続して低迷すると、ベースアップは控えるべきであるという自らの判断を率直に示している。
そうすると、Aとしては、判断材料となる資料を示した上で、これに基づいて自らの判断を伝えており、十分に誠実な交渉を行ったといえる。
エ よって、本件では、Yは誠実交渉義務を履行しており、上記申立・訴えは認められない。
2 Bの降格について
(1)Xは、Bの降格が不利益取扱(労組法7条1号)、支配介入(同条3号)にあたるとして、①原職復帰命令、②ポストノーティス命令、③月額2万円分の手当についてバックペイ命令を申し立てる(労組法27条)。
加えて、裁判所に対し、①Bが係長の地位にあることの確認、②不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条)を求める。
なお、 労組法7条各号に反する行為は,不法行為を構成する。
なぜなら,不当労働行為制度は,団結権を保障した憲法28条を具体化したものである。
そうすると,労組法7条各号は,私法上の強行規定であり,労組法7条各号に反する行為は,不法行為法上違法となるからである。
(2)不利益取扱該当性
ア 前提として、Bは係長の役職を解かれ、手当2万円を失っているし、部下をも失っているため、「不利益な取扱い」は認められる。
イ 次に、本件の降格は、ビラ配りを理由に行われている。ビラ配りは、争議行為及び団交以外の活動であるため、組合活動にあたる。
本件ビラ配りが「労働組合の正当な行為」(労組法7条1号)にあたるか。組合活動の正当性は、主体・目的・態様の側面で問題となるが、本件では、会社の施設管理権と組合活動の関係(態様面)が問題となる。
ウ この点,労働組合は当然に企業施設を利用する権利を保障されていないから,使用者は企業施設の利用を受忍する義務を負わないと考えるべきである。
よって,労働組合が使用者の許諾を得ることなく企業施設を利用して組合活動を行うことは,利用を許さないことが使用者の施設管理権の濫用であると認められるような特段の事情がある場合を除いては,正当性が認められないと考える。
そして,特段の事情の有無は、①施設の性質、②ビラの枚数・形状・内容・貼り方等を総合的に判断して決すべきと考える。
エ 本件では、①ビラが配られたのは、組合員の机であり、会社外部の者に了知されるような施設ではない。また、会社に与える物理的な支障も小さいものといえる。
また、②ビラの大きさは、A4であり、特別大きいものではない。ビラの内容も、「合理的根拠を示せ。」等と、団交の内容を反映するもので、虚偽の事項も含まれておらず、相当なものである。
オ よって、使用者の施設管理権の濫用であると認められるような特段の事情があるといえ、本件ビラ貼りには正当性が認められると考える。
カ 次に、「故をもって」と規定されていることから、不当労働行為意思が必要と考える。
その内容は、反組合的意思をさす。
本件では、降格はビラ配りを理由として行われている。また、係長の役職を解くことで、Bが部下を失うことから、Xの団結力を低減させる意図も窺える。
よって、「故をもって」の要件をみたす。
キ したがって、不利益取扱は認められる。 (3) 支配介入該当性
ア 本件の降格は、Bを部下を持たない地位に就かせるものであり、X組合の自主性を侵害するもので、「介入」にあたる。
イ ビラ配りの正当性が認められるのは前述の通りである。
ウ 支配介入については、「故をもって」との条文上の規定はないものの、正当な裁量権の行使との区別のために、不当労働行為意思は必要と考える。
本件では、上記の通り、当該意思は認められる。
エ よって、支配介入が認められる。
オ 以上から、上記申立・訴えは認められる。
3 降格翌日の団交について(義務的団交事項について)
(1)Xは、労働委員会に対して、労組法7条2号に反するとして、団交応諾命令(労組法27条)を求める。加えて、裁判所に対し、団交を求めうる地位の確認請求を求める。
(2)ア 本件では、Yは、降格、ベースアップについて、経営判断の範囲に属するもので、これらの事項について団交に応じる義務はないと主張する。このような主張が「正当な理由」(労組法7条2号)にあたるか。義務的団交事項の意義が問題となる。
イ この点,労組法は,労働条件の対等決定と労使自治の促進を目的としている(労組法1条1項)。
そうすると,この趣旨を実現する場である団体交渉においては、①組合員の労働条件その他の待遇や(労組法16条参照)、②労使関係の運営に関する事項で、③使用者に処分可能なものが義務的団交事項であると考えられる。
ウ 降格について
降格に関する事項は、①役職手当や、権限の変更を伴うもので、労働条件に関するもので、②使用者に処分可能なものである。
よって、義務的団交事項にあたる。
エ ベースアップについて
ベースアップに関する事項は、①労働に対する報酬という労働条件に関するもので、②使用者に処分可能なものであり、義務的団交事項にあたる。
オ よって、いずれも義務的団交事項にあたるため、「正当な理由」は認められず、7条2号違反が認められる。
したがって、上記申立・訴えは認められる。
4 総務部長Cの言動について
(1)Xは、Cの言動が支配介入にあたるとして、労働委員会に対し、①以後、同様の言動がなされないようにする旨の救済命令、②ポストノーティス命令を求める。加えて、裁判所に対し、不法行為に基づく損害賠償請求を求める。
(2)ア まず、支配介入の主体となるのは、「使用者」(労組法7条柱書)である必要があるのが原則である。部長であるCの上記言動が支配介入にあたるか。
イ この点,支配介入の主体である使用者とは,雇用関係上の責任主体をいい,職制にある個人は含まれないので,原則として支配介入は成立しない。
しかし,行為者が使用者の意を体して行為した場合には,使用者との間に具体的な意思の連絡がなくても,使用者の支配介入と評価することができると考える。
そこで,使用者の利益代表者に近接する職制上の地位にある者が使用者の意を体して支配介入を行った場合には,使用者との間で具体的な意思の連絡がなくとも,使用者の不当労働行為と評価できると考える。
ウ 本件では、Cは人事管理の責任者であることから、使用者の利益代表者に近接する職制上の地位にある者であるといえる。
そして、たしかに、Cは他の役員に諮問することなく、独断で酒食の席で組合員にビラ配りをやめさせるように働きかけている。
しかし、Yはビラ配りを快く思っていなったことは、前記降格処分からの窺える。
そうすると、Cが「組合活動を続けていると出世にも影響するぞ。」等と呼びかけた行為は、Yの意思に合致するもので、意を体して行ったものと評価できる。
エ よって、本件のCの言動は支配介入を構成する。
したがって、上記申立・訴えは認められる。
5 Cのビラ撤去について
(1)Xは、労働委員会に対しては、労組法7条3号違反として、行政救済命令、ポストノーティス命令、裁判所に対しては民法709条違反として、損害賠償命令を求める。
(2)ア 上記請求が認められるかは、本件ビラ配りに正当性が認められるかによる。
よって、前述の判断基準に従って、本件を検討する。
イ まず、①ビラは組合員以外の社員の机にも配られている。これは、組合員への情報伝達を超えて、社員の会社に対する信用を毀損する危険を含んでいる。
また、ビラの形状こそ、前述の場合と変わらないものの、ビラの内容は、「違法行為の達人」、「私腹を肥やす」などという表現が用いられており、虚偽・名誉毀損的なもので相当とはいい難い。
ウ よって、本件ビラ配りには正当性は認められず、これを撤去したCの行為は労組法・忍法上問題がない。
したがって、上記請求は認められない。
第2 設問2
1 法的措置
Yは、①不法行為に基づく差止請求、②施設管理権に基づく差止請求を求めることができる。
2 法律上の問題点
(1)本件のビラ貼りについても、Yの施設管理権との関係で、組合活動として正当性が認められるかが問題となる。
以下、前述の基準に従い検討する。
(2)まず、本件では、ビル敷地内の1階出入口において、ビラを配布している。
当該出入口は、同ビルに入っている他社の関係者が出入りする他、取引先も出入りする場所で、社外の者がビラの内容を了知しうる施設である。(①の観点)
また、ビラの内容自体は、「団体交渉に応じろ。」等というもので、虚偽・名誉毀損的表現を含んでいないものの、態様面においては非常に強度である。
つまり、週2回、組合員10名あまりが出入り口の両側に分かれて並び、不特定者に対して、ビラの内容を連呼しながら配るという態様である。このような方法によれば、出入口を通行する者によって、強度の心裡的圧迫が伴うことになる(②の観点)。
さらに、管理会社からは同ビルのテナントからの苦情が伝えられていることから、実際上のYの信用を失わせる危険が認められる。
(3)よって、以上の事情からは、本件ビラ配りには正当性が認められないため、上記差止請求が認められると考える。
以上