引き続き、『バイ・バイ・メメント』ダンスナンバーをご紹介します。
6. HANA - BAD LOVE
振付:ヤマグチリオ
その世の記憶が蘇った労働者たちの独白から、壮絶な人生を物語るナンバー。嫉妬、強欲、憧れ、承認欲求、自己犠牲、それらを抱えたまま魂となった彼らの後悔が、往き還りに変換されていたことに気付く。このナンバーを通して、二度とあの人生には還りたくないと強く思う労働者たちを、既に知っていたハンスがあの世へとエスコートしていく。このナンバーで何処までいけるかを図る上で、振付師にはリオちゃんの名前が直ぐ挙がりました。僕はリオちゃんを「野生」と評しています。その中に計算されたものはあれど、音と振りの中で自分を開放するのが自然体なんです。行き切るレールをしっかり作ってくれました。「行き切る」にはフィジカルもメンタルも必要で、それっぽく出来てしまう人からは何も届かない。そして過去のドラマを物語りながら踊る。曲の強さもあり、力量が明ら様に出てしまうので皆んな相当に苦戦していましたね。その苦悩が役に乗っかっていた気がします。
7. stare in wonder - BE:FIRST
振付:悠造
「君たちの覚悟次第だ」
ハンスによる、あの世に行きたい労働者たちとのアンハザールゲームが始まる。腕を握り合って「アンハザール」と唱えるだけで、あの世に行ける。苦痛の過去を背負いあの世に行ってしまいたい労働者だが、手を出す勇気だけが持てない。この光景を実は客席で見ているキースエヴァは父親であるキースに別れを告げて。ウォーリーは苦悩するミッツの代わりとなり、笑顔を振り撒いて先に。メリーはこの魂を、その世に生まれ出てこれなかったホグ(必要とする人)に捧げるために。そんなメリーを一人で逝かせないと、ディトが初めてメリーのために一緒に。そして誰よりも家族を愛していたミッツは、導かれるように皆のもとに。「ここからが本当のショータイム」と言っていたハンスは、キースが描いていた理想を壊し始める。ハンスはキースが大好き。その困り果てる彼の顔を見るのが大好き。考えることにより苦悩する人間たちに言う。「何も考えなくていいんだよ」。この大暴れのために言い続けた格言が、彼らの長年の葛藤を一瞬にして消し去る。自分の中にこんな存在が居てくれたらどんなに楽だろうと思っていた自分が作り上げた、もう一人の自分を描いたのがハンスです。キースとハンスは確実に僕の中にいました。それを形にできたこと、信頼するワンデーさんと惇也に演じてもらえた事、本当に嬉しかったです。
8. 米津玄師&宇多田ヒカル - JANE DOE
振付:Takuya
演出で入っていたLIVEのダンサーだったTakuyaくん。演劇の世界にもハマりそうな気がしていて、今回お声がけをしました。振付師というよりダンサーというイメージでしたが、創り上げる空間と音の取り方は演者にもわかりやすく、その目指す形と演者の挑み方を相談しながら一緒に作ることができました。自分も参加できてとても楽しかったんですよね。メメントは自分の夢。ここにいる事が全てだったキースに、ホグとタンクどちらかを選ぶように促すハンス。選んだ後は、自分と再び遊ぶことを望んでいたハンス。選ぶことができないキースを見て楽しむハンス。タンクとホグの虚像を追いかけては掴めずにいるキースに、自我を失った魂たちの動きが変わる。誘導していたハンスが異変に気付くが、その時にはキースは選択を終えていた。それはあの子達が周りにいてくれたから。
9. RADWIMPS - うるうびと
振付:悠造
まさにこのシーンを執筆中に舞い降りて来た曲。何万という曲を聴き続ける日々の中で、こんな出会いがあるんです。歌詞やイメージをワード検索しても、なんだか自分でも分かる展開と見たことがあるものになるんですよね。音楽を背景に展開するダンスと演劇を融合した舞台は、だいたい予想ができてしまうようになってしまって。それら作る側としても同じで。そんな自分に舞い降りて来てくれた曲。自分が家族を持ちたかった。自分が愛されていると感じたかった。自分が…。そんな自分が、他愛に満ちたあの子達と出会い、二人を生き還らせることが自分の願いとなった。一緒に過ごした時間が走馬灯のように駆け巡る。キースはあの世に行ったら、あの子達と家族に。その世では、タンク(ミケランジェロ)とグロー(ホグ)が家族に。ハンスは独りぼっちになり、寂しそうに去っていく。メメントとは「死を受け入れ、記念を残す」という意味があります。キースが僕であり、ここに全てを置いて、去れそうだなと。全員が役であり、本人であり、僕でした。自分に照てられた明かりは、自分で消したい。信頼するスターパインズカフェに、応援してくれたお客さんたち、助けてくれた仲間たちに見守ってもらいながら、自分のタイミングで。これ以上の閉幕はありませんでした。ありがとうございました。
素晴らしい楽曲と、素晴らしい振付師の皆さんに心からの敬意と感謝を乗せて。
バイバイ、メメント。








