
智恵子抄とニキの屈辱を
数回に分けて比較する。
まずは、二つの作品のあらすじを。
智恵子抄とは、高村光太郎が妻・智恵子を題材に描いた詩集である。
彫刻家で詩人の光太郎と、油絵画家の智恵子は出会って以来
熱烈な恋愛関係になり、結婚する。
しかし、
定収入を持たない二人の生活は貧しく
また、田舎育ちの智恵子にとって、東京の生活は馴染めないものだった。
実家の没落、展示会の落選、また、生活のため思うように芸術活動を
進めることが出来ないことが、
智恵子の心を圧迫し、精神の異常をきたしていく。
ついに、彼女は精神病院に入院し、その後、肺結核でこの世を去る。
光太郎は
結婚生活から死後、智恵子に対する愛を詩と散文に表現する。
一方、ニキに屈辱について。
ニキの屈辱は山崎ナオコーラの小説。芥川賞候補作品。
写真家を目指す加賀美は、村岡ニキのアシスタントになる。
彼女は、若くして既に名声を得ている女性写真家だ。
繊細で傲慢な彼女に加賀美は惹かれ、
ニキも全てを受け入れてくれる加賀美に恋する。
人気写真家とそのアシスタントという
立場の格差がありつつ、二人の恋愛は甘く進行する。
しかし、ニキが写真や写真家としての立場に行き詰まり、
加賀美が写真家として芽が出るようになると、
二人の関係のバランスが崩れる。
やがて、加賀美の心はニキから離れ、彼女から去っていく。
加賀美への失恋と、写真家としての自信を失ったニキは、
写真を諦める決断をする。
明治と平成―。
大きな時代の隔たりのある”芸術家同士の恋”は
その在り様が全く異なる。
しかし、二つの作品の大きな共通点は
「女性側が創作活動の中断を余儀なくされる」というところだ。
恋愛という形で、才能と才能がぶつかるとき、
何が起こるのだろうか。
次回以降、主に登場人物を比較することで、
作品を見ていきたい。
