ホスクラ用語に「幹」と「枝」がある。
幹が元々の客で、幹が連れて来た客は枝。
もちろん幹より枝が太く育つことはよくあるし、幹がいなくなって枝だけが残る場合だってある。
ただ、枝の担当は、幹の客、担当のことをたてなくてはいけない。
という、不思議なしきたりがある。
だいたい幹は、枝である友達の担当をみつける、仲人的な存在になることが多い。
友達同士で同じお店に通うと、ホスクラ遊びの楽しさは何倍にもなるので、相伴のホスト同士もかなりヘルプし合う。(ちゃんとしたお店の場合)
このハンバーグシリーズは、わたしがホストクラブに通い始めたばかりのころの話で、わたしはまだ客として全然素人である。少し前のわたしのようにみたいにウザメールを送って、どういう返しをするかでホストを評価したり、「あなたはこの金額までは、私に仕事をしていない!」と言い放ったり、他店で腹いせ的なことをしてすっきりしたり・・・という数々の痛客行動をするなんて、思いもしなかった頃の話である。
はっきり言ってチョロい客だったに違いない。
シャンパン1本に、超ドキドキだった。
・・・なつかしい。
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22時に十番の『がいがい』で待ち合わせをする。
ベリーちゃんとグレープフルーツちゃん、2人の姉さんたちとである。
22時待ち合わせには意味がある。
逆算してこの香盤になった。
そう、今日は姉さんたちをホストクラブに接待するのである。
これは、1ヶ月ほど前に約束していたことで、既にホストクラブを引退することを表明していたが、引退とは関係なしに、一度案内することを約束していたのだ。
(言い訳がましい・・・)
『揚田あき』で待ち合わせて、22時すぎにグレーちゃんとアオイスタジオの向かいにある『がいがい』に。
[うまい店]とか[やれる店]とか[エロい店]とかそういう検索ワードでひっかかるお店いくつかに、夕方電話して、丁度入れそうだったのがここだった。
ここは、少しバブリーで、上品で、うまい。
デート向けの焼鳥屋さんである。
姉さんたちは、栄養の摂取方法にこだわりがあり、肉といえば鳥であり、そのほか野菜料理が充実している和食をセッティングする必要がある。
少し遅れて、衣装に悩んだベリーちゃんが到着。
生麩田楽や野菜スティックなど、ヘルシーめのものを頂く。
話題はもちろんホストの話である。
会社の後輩を連れて行ったときはどうだったかとか、ハンバーグくんとすき焼きを食べに行ったときの話とか。
足つぼマッサージ同伴したとか、温泉に行こうと言われたとか・・・
姉さんたちも、徐々に盛り上がってきて、歌舞伎町に行く前にBARにでも寄ろうと話していたのだが、 すぐにでも!ということになる。
一応、ハンバーグくんの出勤前に着いてしまうことをメールしておく。
すぐに電話がかかってきて、2時すぎには着くようにする。お店にも電話して、いい席を おさえておくから。というようなことを言われる。
締めのおにぎりを食べたりして、まだガラガラのお店に着いたのは、2時ちょっと前であった。
客が少ない上、ハンバーグくんの指示なのか大勢のホスくんたちがテーブルを囲む。
ベリーちゃんが一ヶ月前から写真を見て気に入っていたシメサバくんは早速ベリーちゃんの隣をキープ。
Kアくん、S光くん、U利くん、名前を知らない新人くんも集合。
イベントで白スーツのホストくんたち。
にぎやかなスタートとなった。
大事な人を連れて行くから「やる気出せ」と伝えていたシメサバくんは、本当にやる気を出しまくり。
「俺に何人○○ちゃんを紹介する気だよ!」
という目線を寄越しつつ、ベリーちゃんとマンツーで話し続ける。
(ピーチとベリーちゃんは、ファーストネームが同じなのだ)
時々、こちらに視線を寄越し、
「こんなかんじでいいの?」という確認の表情をする。
「きみ、それ以外できるの?」というサインを返す。
場があったまったところで、ハンバーグくん登場。
途中、「財布と名刺を忘れて取りに戻る。こんな日にごめん」てなメールや電話がかかってくるが、
「別にいなくても大丈夫だよ」と冷たい言葉を返していた。
ベリーちゃんをシメサバくんに任せて、グレープフルーツちゃんの好みを訊く。
グレーちゃんの好みは難しい。
何度も聞いているが、よくわからない。
ハンバーグくんは少し聞いて、スコーンくんに
「柏餅、呼んできて」と言った。
柏餅くんって誰だっけ???
なかなかホスくんの名前は覚えられない。
お店のイベントなので、同業の方々の来店が続く。テレビで見た『A』のナンバー1も現れる。 (名前覚えてません。ごめんなさい。)
そこら中で、白やピンクのシャンパンが開く。
その間にも、キャラメルくんや、ゴマだんごくん、ショコラくんなどのナンバーホスくんたちが来てくれる。
ショコラくんは、ちょっと離れたシメサバくんにかわって、ベリーちゃんの隣をキープ。
で、柏餅くんが来る。あー見たことある。この子。
こっっこれは!グレーちゃんのストライクだ!!!
そうね。思い出せなかったけど。ハンバーグくんでかしたっ!
と心の中で褒めてあげた。
同業のあいさつに忙しいハンバーグくんは、席に長居することがなかったが、着くたびにいろいろ人員配置などをめぐらせていた。
「すいか緊張しすぎや」
「いつもと全然違うやんか」
「飲んでるのに、全然酔うとらんやろ」
「いくら、仕事関係の先輩や言うてもな、飲みの席ではそんな緊張したらあかんやろ。 誰もそんなん期待してへんで」
というようなことを、何度も言われた。
ベリーちゃんとシメサバくんが話しているとき、経緯は知らないが指名するしないの話になった。
ベリーちゃんは、指名するかしないかをわたくしに委ねると言う。
「ダメ」
一言で決めてしまった。
「味方だと思ったのに~」という目で、シメサバくんが非難する。
「すいかさん。ハンバーグさんも絶対その方が喜びますって!
すいかさんが、そんなこと言ったらダメですよ。
ハンバーグさんが悲しみます」
と一生懸命柏餅くんが止める。
「いいの。別にハンバーグくんが喜ぶとか」
少しして、ハンバーグくんが来る。
「指名入りそうなんやて?」誰かがチクっている。
「やめさせた」感じ悪く答える。
「なんでやの?」ハンバーグくんは少しムッとしている。
「だってね。今日は姉さんたちを初回で連れてきたの。
初回は、初回の楽しみ方があるの。
で、2回目は2回目の初指名の楽しみがあるの。
わかるでしょ?絶対ベリーちゃんは2回目来るし、来たらシメサバくん指名する。でしょ?
それに、初回の料金設定は来る前に説明してきたけど、指名料の説明とか誰もしてくれないし」
絶対次来るあたりは出任せだが、ハンバーグくんは納得した。
「じゃあ、みんなで次おいでな」
つづく