長男が、バイト代ではじめて家族にご馳走してくれた。
 地元で評判の天ぷらと刺身が美味しい居酒屋。


あの、長男だ。
誰の教えか定かではないが守銭奴の長男だ。
高専時代は、コインケースにお金を綺麗に収納していた。

年代物の硬貨まで、どういうルートか知らないが手に入れ、押入れから引っ張り出してはデスクの端に並べて、 眺めながら勉強していた長男だ。

 居酒屋は、18時に予約をとり家族4人で席を囲んだ。
 長男の対面に座った。
「あの件は、どうした?」と思い切って尋ねてみると、
「そんな個人的なこと聞いて、どうなるのかな?」と問い返され、そのまま沈んだ空気が流れていった。

 「今日は、僕がご馳走するからみんな食べて」と頬杖をついていた。

お品書きを代わる代わる手に取り、「今日のおすすめ」が書かれた小さな黒板を眺めては、店員が来るたびに注文していた。

 
ウチの家族は、大食いである。


「食べて」と言われて、手を伸ばそうとすると、 目の前の天ぷらやお刺身へどんどん長男が箸を伸ばし、 わたしは天ぷら二つとお刺身三切れで、なんだかお腹がいっぱいになってしまった。

しばらくすると、長男が口を開いた。
「ここからは、個人的なこと話すけど、いいかな?研究のことなんだけど......」

 
先ほどの言葉がよぎった。

 

ノンアルコールビールをお代わりしようと思っていたら、 隣の夫は、お酒を飲んで上機嫌になっていた。

 様子を見ていると、ついたて越しの女性二人が後からやって来た。夫は彼女たちをチラチラ見ているではないか。
しかも、足元を見ると、 サンダルの先も女性のほうを向いている。

 (次男は明日模試なので、わたしはドライバーなのだ)

観察する気はあまりなかったが、5分に1回は夫の眼鏡のレンズ越しに彼女たちが見えた。 いや、3分だったかも知れないな。

 最後は、わたしがトイレに立つときに、夫のサンダルを踏んづけて、戻ってくるなり夫を長椅子の奥に押しやり、ポジションを交換した。

 一体、なんの話だったのだろう。
 それにしてもあの状況で長男の研究の話に相槌を打っている夫も、やはりどうかしている。

 

 

 

─ 夕方のスーパーは、やはりサンダルが気持ちいい ─