前回はネタバレなしVer.の感想を書きましたが、そろそろ上映からずいぶん経ちますので、今度はネタバレを気にしない感想を書きます。

っていうか主に椋雄さん語りをします。

ネタバレで魅力がなくなる作品では全くないと思っていますけど、やっぱり一回目は「?」って思いながら観てほしいのでこれから観る予定の方はネタバレなしVer.をどうぞ。

 

ホノカゲ

いやもうこのエピソードの何が好きってホノカゲのキャラクターがめちゃくちゃ好きです。自分の薄さとか諦めとか、それでいて情が深いところとか、見た目が優男風のところとか(それはただの私の趣味)。

 

でもホノカゲが引き起こす事態はすごく怖いんですよね。

夏目くんの人間関係って、基本的には「辛い過去と幸せな現在」という対比で描かれることが多くて、藤原家や同級生たちというのは夏目くんにとって「安心できる居場所」なんですよ。

それが脅かされる恐怖は想像以上でした。

「お前、ニセモノだろ」のあのシーンはほんともう怖くて泣きそうでしたよ。

(あとその直後の、夏目くんが2号をぎゅってするシーンね……もう先生こんな大事な時に何やってるんだよと)

 

ホノカゲに悪意があるわけじゃなくて、どころかホノカゲ自身も被害者と言っていいような立場ですけど、でもやっぱり人間関係を作り変えてしまうという能力には間違いなく残酷さがあって。

夏目くんはその残酷さや恐怖をいやというほど身をもって体感します。

 

その夏目くんがホノカゲをかばうことの意味、ですよ。

 

勿論「自分がされたことに対して尋常じゃなく無頓着」という、シリーズでもたびたび見られる夏目くんの特異性があってこそではあると思うんですけど、とはいえあれだけの恐怖を味わってなお、ホノカゲによって救われた人の存在やホノカゲ自身の悲しみにちゃんと寄り添える夏目くんは、やっぱり優しい子です。

 

そして名取さん。

名取さんのスタンスからするとホノカゲは本来見過ごせるものではないでしょうに、話が通じる相手だと認識して結局はほだされちゃう辺り、だいぶ夏目くんに影響されていますね。

 

結べたかもしれない絆

ご老体はどうしてホノカゲを追っていたんでしょうね。名取さんは、「祓うつもりだったとは限らない」とか言ってましたけど。

そこにはもしかして結べたかもしれない絆があって、でもそれは結局結ばれずに終わってしまっています。

 

そして最後に夏目くんと容莉枝さんが会話するシーン。ここでは、レイコさんと容莉枝さんの間にも、結べたかもしれない絆があったことが示唆されます。

 

障りや嘘や勘違いに阻まれて、実らなかった可能性。その繰り返しによって自分を閉ざしてしまった、ホノカゲやレイコさん。

 

それが切ないからこそ、結ばれずじまいになってしまった結城くんとの関係をもう一度結び直し、可能性を示してくれた夏目くんの前向きさが嬉しいんですよ。

 

ホノカゲのあり方は決して善良なばかりのものではないし、結城くんのついた嘘も褒められたものではないかもしれない。

でも夏目くんはそれを分かったうえで、それでもその中にある彼らの心を大切にしたいと「関係を結ぶ」選択肢を取りました。

 

尺によっては結城くんのエピソードはカットされる可能性もあったとのことですが、いやいやいや本当に収まってくれて良かったですよ。夏目くんのこの選択があってこそ救われると思うんですこの話は。

 

椋尾さんの怪しさ

で、椋雄さんの正体なんですが。

ストーリー中盤の肝ともいうべきポイントな割に、劇場公開後に出た雑誌ではかなり無造作にネタバレされててびっくりしましたよ! こういうもんなんだね!

でもまぁ確かに、その話を伏せておくとなんにも語れないですしね。

 

椋雄さんがどうも怪しい、という伏線というか引っかかりはあちこちに散りばめられていて、多分人によってはかなり序盤から疑いの目で見ていたんじゃないでしょうか。

ちなみに私が最初に「?」と思ったのは「どこへも行けなくてね」の台詞、妖だと気づいたのは、先生から二回目に「妖ものの匂いをつけている」と言われたシーンです。

 

正体を知った上で見返すと、「あれ、怪しい?」と思わせた直後に「いや、ただの天然さんかも」と思わせる、押したり引いたりのバランスが絶妙で、こういう細かい表現の積み重ねがキャラクターを「気になる存在」にしていくんだなぁと妙なところで感心してしまいました。

 

なお、劇中で夏目くんが「椋雄さん」と呼ぶのは徹頭徹尾ホノカゲのことで、本物の椋雄さんは写真でちらっと写るほかには回想シーンにすら一切出てきません。

なんだかそれが、失われてしまったものの遠さやどうしようもなさの表れのようで、仕方ないんですけどちょっと寂しくもありました。

 

じゃあホノカゲには存在感があるのかというと、こちらはこちらで本来の姿を見せていません。クライマックスシーンでも……見えそうで見えない……! 円盤化したら思う存分一時停止しようとは思っていますけど……!

唯一全身の姿がはっきり映るのは容莉枝さんの切り絵によってで、それも示唆的な話ですよね。

 

結局は最後まで「椋雄さんとしてのホノカゲ」という、嘘によって出来上がった実体のない姿だけを見せ続けて、それでいて見る人に強い印象を残していく――そんなとらえどころのなさが、非常にホノカゲらしいなと思いました。

 

ちょっと俗っぽい話をします

で、その椋雄さんを演じていらっしゃる高良さん。LaLaのインタビューで、俳優が声優をやる意味として「自然体の演技」を挙げていらっしゃいました。

 

声優が本業ではない方を起用する目的って、言ってしまえばプロモーションのためですよね。実際、各種メディアでの舞台挨拶の取り上げられ方なんかを見れば、作品にとって大事なことなんだろうという実感はあります。

とはいえ私も声優さんのファンなぞやっている身ですから、そういう知名度重視のキャスティングに思うところがないわけでもないですし、キャスティングされる方の葛藤も決して小さくはないんだろうと思います。

 

そんな中で、インタビューで語られたように、広告塔としての役割に甘んじることなく技術の面で応えようとしてくださったことが作品ファンとしてはまず嬉しかったです。

 

アニメにおける自然体って多分すごく難しくて、デフォルメされた絵の世界に現実世界の自然体を当てはめると、やっぱりちょっと浮くんですよね。

でも椋雄さんはあえてそこが貫き通されていて、そのあるかないかの違和感が、どこか世界から浮いている椋雄の違和感になっていたようで、確かにこれは俳優さんがやったからこその空気感かもしれない、と思いました。

 

なお舞台挨拶では容莉枝さん役の島本さんも「アニメアニメした声じゃなく」「自然体で」ということを仰っていまして、こちらは自然体でありながら完全に世界に溶け込む超絶技巧が素晴らしかったですね。好きな台詞は色々あるんですが、序盤で夏目くんを家に招いた時の「あらどうしたのかしら」の圧倒的な日常っぽさにまず感動させられてしまいました。

 

その他

・冒頭のシーン、夏目くんが忘れものをしたって言った時に田沼くんだけ険しい顔をしていて、でも何も言わない距離感がいかにもこの二人って感じです。

・先生のしろねこ咀嚼音がなんだかすごく心地良いです。

・先生が三匹になるシーン、夏目くんの中の塔子さん観が完全に天然で可愛い。

・河童が「斑様のお姿になってみれば」って言った時、ちょっと期待したよね、ちっちゃい斑×3。

・名取さんが式を開放するシーンが「名前を返す」ニュアンスになっているのが憎いなと思いました。

・北本くん相変わらずの顔の広さ。

・ウロの中の椋雄さんの目が光って羽が舞うシーンがかっこよくて好きです!

 

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