『狼のくせに人間のようななりをして…』

『いつか人間を騙して食ってしまうに違いない!』

『あっちへいけ!
この化け物!!!!』



ごめんなさい。
ごめんなさい。



いつもどこかで泣いていたんだ。



***



「お前、山の下におりたことは無いのか?」

「…当たり前だ。人間には関わりたくない。」


もう太陽はすっかり顔を出して
だんだん辺りも暖かくなってきた。


「山を下りるぞ、ダイキ!」

「………は?」


急に思いもしない発言が飛び込んできたので
俺は思わず目を丸くした。

「こんなとこで暮らしてたって楽しくねえだろ?」

「断る。」

「なかなか悪くねえぞ?ほら行くぞ!」

「な、ちょ…離せ!」


腕を無理やり掴まれて
俺は滑るように山を下りた。

そう、無理やりに。

急な展開過ぎて
俺は全くついていけなかった。


「夜になるまでに山に帰りゃバレねえからよ、楽しもうぜ!」

「楽しむって何を…」

「言っただろ?
俺がお前を、最高に楽しい場所に連れてってやるってな!」

ニッコリと歯をみせて笑うハンゾウにすっかりと俺は流されていた。

山をおりるとすぐ、木で出来た何だか堅苦しい建物が建っていた。

「……これは?」

「これは神社だ。神様が住んでるらしーぜ。」

「…くだらないねえ」

神様だなんて馬鹿馬鹿しい。
そんな居もしないものを崇めて奉って。
だから人間は弱いんだ。

俺は神社と呼ばれるその建物が
急に醜いものに見えた。


神様、

本当にいるなら教えろよ。

どうして俺は失敗作なんだ?

どうして俺は人間でもなければ純粋なもののけでもない?


「どうして俺は………」



こんなに不安定な存在なんだ



「……ダイキ?」

「なんでもない。
もう、ここはいい…」

「……わかった。
俺がいくらでも案内してやるからな!」


真上で輝く太陽のような笑顔は
なんだか俺には不釣り合いで

思わず眩しくて目を伏せてしまった。

「なあ……ダイキ」

顔を上げると
さっきより真剣な顔をしたハンゾウがこちらを見つめていた。


「ダイキ。
俺がお前を守るから。」


いつの間にか握られた手に
ギュッと力がこもった。

「な、にを言って…」

「そんな不安そうな顔するな。

俺が絶対守ってやる。
傍にいてやる。」


何を言うんだ、こいつは。


くだらない、と吐き捨てようともしたが
妙に真剣な瞳に何も言えなくなった。


「ダイキ。
お前は一人じゃねえぞ。

俺がいるからよ!」


何かが胸をコツンとノックした。
だんだん体も熱くなって。


俺はそっと自分の胸元に手を置いてみた。

ドキドキと早い。
いつもよりはるかに早い速度で。

「ハンゾウ」

「ん、どうした?」

「苦しい」

「何っ!?発作か!?」


違う、と俺は首を振った。
そして胸を押えて呟いた。


「ここんとこが凄くドキドキ言ってるんだ。
発作より熱くて苦しい。」


キュッと唇を噛み締めてハンゾウを見上げると


真っ赤な顔をしたハンゾウがいた。