生家の目の前は線路でした。
正確には、生家の前に細い道路が横切り、その道路の向こう側に線路がある感じ。
最も近い線路まで、直線距離で10m位しか離れていなかったと記憶しています。
生家の目の前に通る線路は、200mも東進すれば駅のホームの端っこに辿り着ける場所でしたが、生家から東進50m、西進50mの距離に、各々踏切があり、そこは車両や人の往来も結構多かったものです。
その両方の踏み切りには、駅に近いこともあって自分が中、高校生位までは、電車、列車通過時に手動で遮断ロープを上げ下ろしする踏切小屋(?)が設置されていました。
踏切小屋の話は、また機会があれば…w
さて…そんな生家の傍には目の前の道路と同じ位の幅の川(所謂、溝川ですが)があって、周辺の住宅から出た生活排水が流れ込んでいました。
概ね、自分の記憶にある限り、小学校3、4年になる頃まで、道と川を隔てるものは背の低い鉄パイプで出来たガードレールみたいなものだけ。
丁度、道路と平行に溝川は流れていた様子ですが、生家の付近はすっかり地下に潜り込んでしまっていて、東進後、踏み切りのある通りをさらに駅へ向かう辺りから、また川が顔を出す…といった感じ。
生家から西進した場所には、割と盛大に溝川が姿を現していて、西側の線路付近で川が三叉路のように分岐していました。
前述した様に、道路と溝川を隔てるものは背の低いガードレールみたいなものだけ。
陽が落ちて周囲が暗くなると、誤って道路から溝川へ落ちてしまう人も少なからず居たようです。( ̄ー ̄;
近所に住む人、その道路をよく通る人は、暗くなっても そこに溝川があることを知っていますから滅多なことでは落ちたりしなかったのだと思いますが……。
後々、この溝川には背の高いフェンスと、丁度、道路が切れて溝川が姿を現す場所にも丈夫な鉄柵が敷設されることになります。
恐らく、丈夫な鉄柵が敷設されるキッカケになったのは、自分が小学生の頃、台風の時に軽自動車が溝川に落っこちたからだと……。
生家のあった九州は、台風シーズンになると、しばしば台風が接近して、台風の暴風雨圏内に入ってしまったり、直撃コースに入ってしまう土地柄。
台風の暴風雨圏内に入れば、酷い雨が降るのも、強い風が吹くのも避けられないのですが…。
生家の建っていた場所は土地が低かったようで、台風の影響で雨量が多くなると、川の水位があがり、やがては溢れ出て、道路に水が流れ出してしまうのです。
台風=床下浸水、床上浸水当たり前、そんな状況でした。
よって、台風シーズンが到来すると、1階の荷物の大部分が2階へ移され、就寝は2階。
台所が1階にしかなかった関係で、食事は1階の居間で食べていましたが……
いつ台風が来ても問題がないように、1階部分の畳は全てあげられ、使わないテーブル等を積み重ねた上に避難させた状態ですから、畳は敷かれていません!
畳のない床上に井草等のシートなどを敷いて、そこに 冬場はコタツとして使うテーブルを置いて食事の時に使います。
最近のコタツテーブルは、立派な作りの物もありますけど、昔のコタツって すりこ木みたいな足をテーブル台に足先についたネジをグリグリねじ込んで組み立てるだけの簡単な作りでしたから、分解して2階へ持ち上げるのも楽でした。
台風が接近して、陽が暮れ始めると、雨足が強まり、家の周辺道路の排水溝が機能しなくなります。
排水溝が機能しない=川の水位が上がってきている証拠
徐々に、道路にも水が溢れてきて、その内、玄関先まで水がタプタプと流れ込んでくるのです。
もう、その段階に入ると、あとは水の水位が上がるのも早い。
1階のコタツもさっさと2階へ持ち上げられ、人間も2階へ退避します。
しかし…台風というのは不思議なもので、家の周辺で雨が止んでも、まだ別の場所で降り続いているからなのか、水位が上がることで水捌けが悪くなってしまうからなのか、川から溢れかえってしまった水はなかなか捌けてくれず、水位も下がるまでに時間が掛かるのですよ。
深夜、大人の胸元や首の辺りまで、どっぷりと水が残っていて、自分の親がその水の中をやれやれと水をかきつつ戻ってくる姿を何度となく2階の窓から見下ろしたものです。
そして、2階の窓から家の前を横切る線路の方を眺めると、線路の向こう側は床上浸水どころか、床下浸水すらしている気配がないのです。
2階の窓から、しかも夜に眺めているだけですから、はっきりと見えるわけではありませんが、手前で水を掻き分けて泳ぐように移動する人が居る中、線路の向こう側では、雨傘を差して普通に歩いている人が見える。
実に妙な光景でした。
線路の向こう側では、土地の水捌けが良いのか、土地がこちらよりも高い場所にあって浸水が激しくない為、同様に考えて線路を渡り、生家の前を横切る道路を走行してしまう車両もあったらしいです。
街灯も少なく、細い道路に入り込んでから、あれよと言う間に水嵩が増してくると、殆どのドライバーは かなりヤバイ水位にドップリと嵌まるまで「ヤバイ!」と思わずに突っ込んでしまうみたいですね ( ̄_ ̄ i)
ついでに、生家付近の溝川が姿を現す場所には、背の低いガードレールしかなく、水没してしまうとまったく見えなくなり、道路に対して垂直に行く手を遮る鉄柵がなかったこともあり、道路と溝川の区別がつかずに、溝川に落ちて水没する車両も…………。
台風の翌日、溝川の傍を通ると1年に1台位は 車が落ちてました…(=人=)
そういった被害で死亡者は出ていなかった様ですが、流石に溝川にダイレクトダイブすることを阻止する鉄柵がないのは問題だろう~って話があったのか、その辺は定かではありませんが、自分が小学3、4年生の頃に、低かったガードレールは背の高いフェンスに換わり、溝川が水没しても最悪、車がダイブしない様に、道路の端に鉄柵が設けられました。
後で台風の時の話を友人知人に聞いてみても、やはり線路を挟んで自分の生家があった側は やたらと床下、床上浸水の被害に遭っていて、線路の向こう側は「床下浸水はあったけど、床上まで水がきたことはないね」と口を揃えていわれてしまいます。
その後、(かなり後) 台風が来る度に水が溢れていた川の河川敷を深くする工事が行われ、並大抵の台風では生家付近も水没しなくなったらしいです。
(その頃には転居してしまっていて、水没しない場所に住んでました)
また、最近 帰省した際に、機会があったので生家付近を徒歩で歩いてみましたが…
駅付近の高架化に伴う工事で風景が一変する状況になっていて吃驚…Σ(-∀-;)
生家付近の踏切は確認出来ましたが、溝川はすっかり埋められたのか、蓋をされて上が通れるようになってしまった様子で確認が出来ず……。
線路の向こう側と手前の高低差すらなくなっていて、かつて自分が暮らしていた風景の殆どが姿を消してしまっていました。・゚・(ノ∀`;)・゚・
台風が来る度に、どっぷり水に浸かっていた生家。
大人の視点からだと迷惑千万な自然現象でしかなかったのかもしれません。
でも、子供心には、ちょっとドキドキしたりワクワクしたりして、今でもあの頃の記憶ははっきり残っているのです。
それにしても…台風の度に水没していた冷蔵庫、よく壊れなかったものだな、と今になって思ってみたり。