日本最古の神社の一つされる石上神宮。

 

その御朱印を前回、載せました。

 

石上神宮といえば、物部氏の神社として有名ですね。

かつては武器庫とされていたとか。

 

御祭神は、

布都御魂大神(ふつみたまのおおかみ)

布留御魂狼大神(ふるみたまのおおかみ)

布都斯魂大神(ふつしみたまのおおかみ)   

 

さらに、配祀神(はいししん)に、宇摩志麻治命(うましまじのみこと)がいます。

 

布都御魂大神は、武御雷命(たけみかずちのみこと)の真剣、韴霊剣(ふつみたまのつるぎ)に宿る御霊

布留御魂狼大神(ふるみたまのおおかみ)は、十種神宝の御霊

布都斯魂大神(ふつしみたまのおおかみ)は、天十握剣(あめのとつかのつるぎ)の御霊

 

不思議なのは、物部氏の祭主とし、物部氏の祖とされる宇摩志麻治命が配祀神、

つまり脇役になっていること。

順列が逆じゃないかと、僕は思っている。

それに武御雷命は、宇摩志麻治命一族、つまり物部氏にとっては仇敵のはず。

それを御祭神の一番上に持ってくるとは、どういうことか。

 

似たようなことが、伏見稲荷にも見られる。

伏見稲荷の御祭神には大宮能売神(おおみやのめのかみ)という神様がいるが

大宮能売神は、伏見稲荷では大神に格上げされて大宮能売大神になっている。

 

それだけではない。

伏見稲荷の真ん中にいる宇迦之御魂大神(うかのみたまおおかみ)は

伏見稲荷の中では、下社に祀られている神様で

大宮能売大神は、宇迦之御魂大神に使える巫女ということになっている。

 

これも順列がおかしい。

この辺りのことは、拙著「オブシディアンの指環」の中で語られている。

 

話を石上神宮に戻そう。

 

石上神宮には興味深い摂社がある。

神宮の本殿の外、楼門の南側に天神社という摂社がある。

祀られているのは、高御産巣日神(たかみむすびのかみ)と神産巣日神(かみむすびのかみ)。

この神様は、この世界の中心とされる天之御中主神(あめのみなかぬしのかみ)の次に

現れた神様ということになっている。

 

僕としては、この天之御中主神についても、大いに疑問を持っているのだが

高御産巣日神と神産巣日神については、日本古来の神様に違いないと思っている。

というのは、この神様には産巣(むすび)という文字、言葉が使われている。

 

産巣とは「結び」につながる言葉で、実りや転じて生命力を表す言葉とされている。

だからライスボールは、「おにぎり」ではなく、「おむすび」というのが正しいということになる。

 

さっき話した大宮能売神を含めた七つの神様を祀る七座社は、

高御産巣日神と神産巣日神を見張るように建てられていると思うのは、僕だけだろうか。

 

石上神宮に行ったことがある人はわかると思うけど

この神社には鶏が放し飼いされている。

 

放し飼いといえば、奈良の鹿が有名だが、これは眷属(けんぞく)と呼ばれる、いわば神の使い。

最も有名な眷属は、稲荷神社の狐ですね。

 

石上神宮の鶏は、眷属とまではされていないようですが、

実は鶏の鳴き声には魔除けの効果があるとされています。

 

高御産巣日神と神産巣日神を見張るように建てられている七座社

宇摩志麻治命を主祭神にしていないこと

主祭神は全てものに宿る御霊、そして鶏の鳴き声。

 

石上神宮には、なにか、日本の古代史にとってとても大事なものが

「魔」とされ、いまも鶏に見張られ、鳴き声で封印されているように思える。

 

石上神宮は、10キロほど南にある大神神社とともに、山の辺の道の発着点になっている。

大神神社は「神社」なのに、石上は「神宮」。

 

実に興味深いのであります。