N国の話から脱線するが、メディアやスポンサーの印象操作の事例を少し。

 

バブル華やかりし頃、日本は空前のF1ブームであった。

中嶋やホンダ参戦があったとはいえ、フジテレビの貢献はとても大きかったのは間違いない。

正にフジテレビが作ったブームであったと言える。

 

しかし、フジテレビの手法には光と影があった。

今のF1ファンには良く知られることであるが、フジテレビは中継にあたり明確に善玉と悪玉を作った。

善玉は、中嶋、ホンダ、そしてホンダと近い関係にあったセナであり、悪玉はプロストであり、プロストとも近い関係にあったFISA(当時の国際自動車スポーツ連盟でF1も統括)のバレストル会長や組織である。

ホンダとセナは悲劇のヒーローであり、日本人や非ヨーロッパのブラジル人は欧州人に差別されているという構図もよく使われた。

当時若く純粋な(苦笑)私自身もそれを信じて、テレビの前で熱心に応援したものである。

ネットもなく、日本のメディアからの情報が全てであった時代だ。

しかし、客観的な情報が手に入る今になって見ると、明らかに事実と乖離している報道がなされていたことが色々発覚する。

 

まず、明確に都合よく創作がされていたものがある。

 

例えば、当時のターボ規制にまつわる話である。

当時フジテレビがよく報道していたのが、「強すぎるホンダ潰しのためにヨーロッパ人がターボ規制をした」というものだ。

しかし、これは事実とはかなり異なる。

当時のホンダエンジンがコンスタントに勝ち始めたのが1985年の最後の3戦、他と比べて明確に競争優位に立ったのは1986年の中盤以降である。

一方で、FISAが行き過ぎたターボの規制を検討し始めたのは1984年にさかのぼる。

そして、エリオ・デ・アンジェリスの死亡事故発生を受け1986年5月から緊急的に大きなパワー抑制策が必要とのことが表明され、同年7月には1989年より大幅なエンジン変更をすることを公表、さらに10月に1987年からの段階的なターボ過給圧の抑制と1988年を持ってのターボの全面禁止が最終決定されるに至った。

1986年5月の時点では、マクラーレンポルシェがドライバー、コンストラクターズポイントともトップで、ウイリアムズホンダはコンストラクターで2位、ドライバーに至っては、ロータスルノーのセナよりも下なのである。つまり、時系列的に「強すぎるホンダ潰しのためにヨーロッパ人がターボ規制をした」という分けでない。

 

1988年、この年はマクラーレンホンダが16戦中15勝したわけであるが、日本のメディアの論調は。「欧州のホンダ潰しのターボ規制変更にも負けず、実力でやり返した」というものであったが、実のところを言えば、予算の少ないポルシェ、BMW、ルノー、フォードターボといったホンダの競合が1988年だけの特別対応を避け撤退し、フェラーリでさえも1987年の旧規制のエンジンを流用した一方で、予算の潤沢なホンダだけこの年だけの専用のエンジンをつくったことによる圧勝であった。

つまり、急激なターボ規制で一時的に競争力を落としたのは、ホンダの競争相手の方なのである。

 

日本のメディアが日本メーカーびいきであることは別段おかしいことではないが、安全性のための緊急対策という事実を全く変えて、まるで日本人差別のようなストーリーを創作してしまうのは、あまりモラルが高いやり方には思えない。

今なら、ネットから白い目で見られるので、ここまでの創作はできないとは思うが。