八月花形歌舞伎 第三部
『東海道四谷怪談』
お岩様・中村勘太郎
民谷伊右衛門・市川海老蔵
直助権兵衛・中村獅童
お袖・中村七之助
勘太郎、凄いです。
泣きました。気が付いたらポロポロ涙がこぼれていました。
裏切られているとは知らずに伊右衛門を想い、隣家から贈られた薬が毒薬だと知らずに心から有り難がり、生まれた我が子への溢れんばかりの愛情を見せるお岩様…
そして、毒薬によって顔が醜くなり、せめてもと髪に櫛を入れるも髪は抜け落ちていく…
その一連の場面、舞台の上に居たのは勘太郎ではなく、あまりにも悲しすぎるお岩様そのものでした。
今回、勘太郎がお岩様を演じると知り、どうしても見たかったのには理由があります。
もう16年も前になるでしょうか。
渋谷で上演されたコクーン歌舞伎の第1作目、それが『東海道四谷怪談』でした。
私はスタッフの一人としてその舞台に携わりました。
お岩様を演じたのは、まだ勘九郎だった頃の中村勘三郎。
勘太郎のお父さんです。
勘太郎は学校が終わると毎日のように劇場に足を運び、いつも食い入るように舞台を観ていました。
「今日はこの席で観てね」
「今日は満席だから、ここで立ち見になるけど、大丈夫?」
勘太郎にそんな言葉をかけながら、私が席に連れて行くこともありました。
あの時、父親の演じるお岩様を観ていた勘太郎が、いったいどんなお岩様を演じるのか…
そして勘太郎は期待以上のお岩様を演じてくれました。
もちろん、まだまだ足りない部分はあると思います。
でも、少なくとも私と馬鹿がつくほどの歌舞伎好きの友人は、彼の演じるお岩様に泣かされてしまいました。
これからが本当に楽しみな役者です。
『東海道四谷怪談』
のポスターです。
