さて、いよいよ初出勤。
会社からは、“黒い服装に持ち物はメモとペンぐらい”と言われ、以前なにかに使えるだろうとWORKMANで買っていたブラックのスラックスに黒いTシャツを。それと黒のスニーカーに黒いバッグ、とにかく黒でまとめて出勤。
火葬ドライバーというだけあってこれから運転が主になると思い、入社前にメガネも新調。
すぐにメガネを失くしてしまうのでまとめて3つ。
3つで6600円という激安メガネ店があるのだけど、10年前ぐらいからそこで何度か買っている。
昔は3つで4,000円だったり5,000円とさらに安かったけど、今でも充分安い。
その時選んだメガネがこれだ。
本題に戻り、初出勤から5日間は先輩について車の横に同行し火葬の勉強を行う、言わば現場実習だ。座学という時間は特になかった。
朝一番のペット火葬は、うさぎさんだった。
元々は飼っていたうさぎが亡くなった際ペット火葬を利用し、ペット火葬の存在を知ったことでこの業界に入りたいと思い入社した。
だから初めて目の当たりにする火葬がうさぎさんというのはとても複雑な気持ちになった。
飼い主さんのマンション下に到着し到着連絡を入れると数分後、喪服を着て大切そうに小箱を抱える女性と、小学校低学年と高学年ぐらいの男の子二人がこちらに近づいてきた。
三人とも目が真っ赤に腫れ上がり、今の今まで泣いていたことが容易に窺える。
(これは絶対泣くやつ…)と思うと同時にすでに涙が溢れそうになってしまっていた。
先輩が『この度は大変御愁傷様でございます』と挨拶し、車の後ろにある火葬台にうさぎさんを載せる様促し、三人は生前好きだったチモシーやおやつ、他にもおもちゃや子供たちの手紙、お花などでうさぎさんのまわりを彩った。
あとから分かったことだがこの時間は“お別れの時間”と呼ばれている。ペットへ最期の贈り物や言葉を掛けてあげたり、頭や身体を撫でてあげたり、なにも出来ずにずっと泣いている方もいる。
この間わたしたちは少し離れた場所から、飼い主さんの気が済むまでそっと待機している。
業者によっては次の段取りやお客さんが待っていることから、『もうそろそろ…』と声を掛けたりするところもあると先輩から聞いた。
うちはどれだけでも待つ、最高で30分ぐらい待ってたとベテランのその方は言っていた。
そのため、一人で一日に4~5件の火葬をこなすスケジュールだと次の時間が間に合わなかったり一時間ぐらい遅刻してしまったりも多々あるとのこと。
小声でそんな話をしている内に、三人のすすり泣く声が収まってきたので先輩が様子を見に行く。
するとお母さんから『もう、大丈夫です』と扉を閉める合図の号令がかかった。
この、『もう大丈夫です』を聞かない限り、こちらから急かして扉は閉められないのだ。
そして先輩が、『それでは扉を閉めさせて頂きます』と言い、うさぎさんに向かって合掌。私もそれにならって合掌。
その後はご自宅から少し離れた場所に移動し、火葬が出来そうな場所で開始する。
それが色々と制約がありなかなか難しく、今でも火葬場所を探すのに苦労している。
住宅街でないこと・上に電線や屋根がないこと・足場が確保できる場所など、自宅からそう離れた場所じゃない所で最適な所を事前にGoogleMAPで調べておかないといけない。そもそも火葬に最適な場所なんてあるのかも疑問だけれど。
希望があれば飼い主さんの敷地内でも火葬出来るので、そうなると探さなくてよくなるのでとても助かる。特にワンちゃんはよくいくお散歩コースでという方も多く、河川敷などを指定されることもある。
車は社名も載っておらず一目では火葬車と分からないので、これを読んでいるあなたもきっと街中で知らぬ間に火葬中の車の横を通りすぎていることだろう。
火葬炉は上下2つの構造から出来ており、下のバーナーでご遺体を燃焼し、上のバーナーで下から出た煙や匂いも焼ききってしまうので、煙や匂いはほとんど発生しない。
追々書いていこうと思っているが、ペットちゃんの体格により度々“炎上”という事態が発生してしまうと初日に教えてもらった。
字の通り、炎が大きくなりまさしく炎上してしまうとのことだ。
そんなことになったらどう対処すればいいのだろう・・と、火葬業務にあたる前から不安にかられたが、この2日後には炎上を経験することとなった。
また話が脱線してしまったが、無事にうさぎさんの火葬が終わり飼い主さんにお骨上げをしてもらう。初めて見る火葬したばかりのお骨。
自分のうさぎの火葬の時は、骨になったうさぎを見るのが怖くてお骨上げを出来なかったから、この仕事に就きお骨上げを自分でされる方の方が多いことを知りみんなすごいなぁと感じている。
うさぎさんの骨は割と頭がしっかりと大きく、第二脛椎と呼ばれる“喉仏”もちゃんと人間の形と同じ様に残っていた。
それから先輩は特徴的なお骨と全体的なお骨の説明をし、無事にお骨上げも終了し、骨袋に納めて火葬は終了となった。
お骨の説明を初めて聞いた時、飼い主さんと同じ目線で(へぇ~なるほど)と聞いていたけれど、いざ自分が説明をしなければならないと思うと、どこがなんの骨か全然分からない。これ、研修5日で本当に一人で火葬出来るようになるのか?という不安しかなかった。



