二年前、初めてウィーンへ行きました。地下鉄の切符の買い方も分からなかったのですが、私の後ろで順番を待っている女学生が、親切に教えてくれました。
偶然のいたずらもありました。アルマの最後の住居を訪れ、写真を撮っていると、その建物の住人の夫人が、自転車も持って出てきました。話をすると、「私のアパートメント、ご覧になる?」とおっしゃり、私は、アルマの住処を見ることができました。この夫人のご親切は、忘れられません。
お墓の行き方は、バスに乗ってから、運転手さんに聞くつもりでしたが、運転手さんは、「知らない」と素っ気ないのです。困ったので、私は、運転手さんに背を向けて、二十人ほどの乗客に訊ねました。
「グリンツィングのお墓は、どこで降りるんでしょうか」
私がバスガイドさんのようになったのは、その時、一回限りです。
一人の夫人が「はーい」と、手を挙げてくれました。
「私もそこで降りるのよ。一緒にいきましょう」
喘いでいる海で、浮き袋を投げてもらったようでした。六十代の女性でしたが、バスを降りて話してみると、娘婿さんは、(福島だったかで)英語を教えていることが分かりました。世間は、狭いですね。
こんな風に、ゆきずりの方々からも色々助けていただき「マーラーの姪 アウシュヴィッツの指揮者、アルマ・ロゼ」音楽之友社2024年が出来上がりました。
本は表紙で買うな、とか、本は表紙で買うべき、とか。
拙本は、後者の方です。装丁は、現在とてもお忙しい新進のブックデザイナーによるものです。私の写真では少々歪んでおりますが、真っ直ぐなのは、アマゾンに出ておりますので、ご覧いただければと思います。https://www.amazon.co.jp/マーラーの姪-アウシュヴィッツの指揮者、アルマ・ロゼの生涯-
本は、読者があってこそ。ひとりの女性の強い生き方を、多くの方に知って頂きたいという気持ちです。
アルマはもうこの世にいませんが、アルマのスピリットは生きていると思います。
この8月「アリス・マンローの秘密が暴露された」(1)〜(4)を公開したのは、知人や友人の応援を頂いたこともありますが、アルマも、私の背を押してくれたのだと思っています。
有名な反田恭平というピアニストが動画で言っていました。
「全然どげざもするし」と。
あのような才能のある方でも!と驚愕し、この「言の葉」を、紅茶に浮かせています。 (2024年9月26日)