すごく楽しい映画をみた。

「ピース・バイ・ピースPiece by Piece」いう題。「一個づつ」とでも言おうか。

 

カナダの感謝祭(10月14日)の週、子供連れの訪問客があって、彼が見たいという映画を見にいった。アメリカの有名な黒人歌手(現在51歳)のアニメ化された伝記だそうだ。歌手の名前を、ファレル・ウィリアムスという、私の全く聞いたことがない人だった。

 

登場人物は、全てレゴのミニフィギュアであるが、レゴが喋る声は、歌手その人の声であり、友人、知人、映画監督も、すべて実際の人の声である。

 

彼は、子供の頃から音楽に取り憑かれ、高校時代には友達とグループを作る。リズムが効いて、レゲのような、ウキウキするような音楽。それが大きなレコード会社の人に認められ、その世界で走り出す。

 

1990年後半から2000年代初期(22歳頃から30代にかけて)いくつかのヒットソングを生み出し、ロケットのように一躍大スターになる。「Happy」という歌が、画面で流されたが、とてもいい感じの曲だった。

 

しかし、彼は、そこで安住はしない。次の「新しい歌」を探し求める。苦悩するも、ついには打開する。彼は、その秘密をこう明かす。

 

「僕のビートは、新しく創り出したものではないよ。再生機で、これまでに使われたビートを探して、新しくミクシングするんだ。素材は、すでにそこにあったものなんだ」

 

彼にあって「音楽作り」は、ひとつ、ひとつ積み重ねていくレゴの遊びと同じであった。そして、自分の人生を語るのも、レゴに託した。おもちゃに語らせれば、自分との距離ができて、より一層自分のことが分かるからだと、歌手は、あるビデオで語っていた。彼の意図に賛同してくれる映画監督を見つけ、レゴの会社の協力も得て、映画の全景もレゴで作られ、色あいが微妙で、とてもきれいだった。

 

アイディアがユニークで、面白い。創造性は「遊び」の中に潜んでいると教えてもらったし、映画のあと、外の空気が軽く感じられた。

 

「娯楽」というものの真髄を知っている「エンターテイナー」とは、こういう人のことだなんだなあ、と思う。子供から120歳の人まで楽しめる映画だった。

(写真は、この映画の主人公のポスター。2024年10月15日)