老子 道徳経 下篇

第69章


ひとを動かすということ

原文

ヨンビンヨウイエン

用兵有言

ウーブーガンウェイヂューアルウェイコー
ブーガンジンツンアルトゥイチー

吾不敢為主而為客  不敢進寸而退尺。

シーウェイシンウーシン

是謂行無行  

ランウービー  ロンウーディー ジーウービン  

攘無臂  扔無敵  執無兵。

フオモーダーユィチンディー

禍莫大於軽敵。

チンディージーサンウーバオ

軽敵幾喪吾宝。

グーコンビンシアンルオ  アイヂョーションイー

故抗兵相如  哀者勝矣。

 



書き下し文
兵を用うるに言有り。
吾れ敢えて主と為らずして客と為り
敢えて寸を進めずして尺を退かす。

是を行くに行無し、攘うに臂無し、
執るに兵無し、くに敵無しと謂う。

禍いは敵を軽んじるより大は莫し。
敵を軽んじれば幾つか吾が宝を失う。

故に
兵を抗げて相如くなら哀れむ者が勝つ。








自分に克ち、相手に勝つ

アメ語訳

人を動かす件について言っておく。

いかにも自分が
主導権を握っている様には見せず、
あくまでも一員として
関わっているかの様に見せておきなさい。
あえて、押し進めている様にはせず、
まるで身を引くかの様に挺しておきなさい。


そうすれば相手は
選ぼうにも選択肢がなく、
断ろうにも断る理由がなく、
代わろうにも代役がなく、
攻撃しようにも敵がいない状態になる。

めんどうな揉め事は
相手を軽んじる態度が1番の原因なわけで、
相手を軽んじて揉め事を起こしてしまうと
自分が保持している宝のどれかを失くす。

だから
同じレベル位の相手を動かす際には
いかにも
優しい人物として立ち振る舞いなさいね。


Translated by アメ
信州小布施 北斎館にて





 

「吾が宝」は67章で登場しました。

我有三宝  持而保之。

 一曰慈  二曰倹  三曰不敢為天下先。


慈しむ心、慎ましい暮らし、
人より先に行かない自制心。





 

アメのフタコトミコト

ささいな頼み事も

命令口調の横柄な態度で押し出すと

きいてもらえなかったり、

手を抜かれたり、

あとで文句をつけられたりします。


皆にとっての良い提案であっても

ひとりよがりの自己主張だと思われる。

言い方ひとつ、態度ひとつで。


人の心理は単純にそういうもの。




物腰が柔らかく優しい人物は

多くの人を癒すだろうから

多くの人に好かれる可能性が高い…

と予想がつく。


つまりもし自分が

そういう人物を敵に回せば

多くの人が自分の敵になってしまう…

と予想がつく。


そんな心理の働きを見越せば、

物腰が柔らかく優しい人物であれば

敵をも味方にして、しれっと勝てる。

広い意味での勝ち。深い意味での克ち。





※『勝つ』は

競い合い相手より優位な結果を出すこと

※『克つ』は

自分の欲望や弱さを抑えて克服すること









 

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