「写真ノ中ノ空」 谷川俊太郎=詩 荒木経惟=写真
この中での荒木さんの空の写真には、必ずと言っていいほど、
電柱や電線、家の屋根やアンテナ、木が写っていて、
そんなところが面白い・・。
夕焼けには子どもらの遠い呼び声だけが似合う
夜へと向かう空はいつも美しすぎるのだ
人が造った地上の醜さすら許すほどに
何もかも失ってもこの空がある
空は母だ
どんなに甘えてもいい 空になら
「今」
輝きは何を照らしてもよい
すべてが私を忘れてくれる
今に棲み
限りなく私が今を愛する時
いつまでも黙つている歌の中に
あまりにかすかな神の気配がして――
それから私がふと今に気づく
ただ静かなひろがりの中で
私が今の豊かさを信ずる時
この星にいて死を知りながら
私は自由だ
情熱は何をみたしてもよい
陽のように空のように
あふれるあまり黙つて輝くもの達の下で



