「あんた誰ですか?」
!?
ん⁉
い、いま、何と?
頭が真っ白になった。
「こんな人あたしゃぁ知らんで。娘はどこぉ?」
思考が止まる。
……
……………はっ!
いかんいかん!
こういうこともあるかと想定はしていた。
最近のAさんの認知症の様子
何十年もあっていないという事実
…
……だけども
なんか、こう
ねぇ!
親子的なもんで
わかるでしょう。(知らんがな。)
わたしが
勝手に期待した。
勝手に思い込んだ。
勝手に自分の思い描いたとおりになると。
それだけのこと。
だが、私はフリーズした。
どうしよう?この状況…。
時間にしたら、ほんの数秒、そんなにもなかったかもしれないが、
わたしの頭の中はこの場を納めればいいのか、
それで一杯だった。
娘さんは、
「来るのが遅すぎたんですね…。
もっと早くに私が決断していれば…。」
自分には
どうすることもできなかった。
立ちすくんだ。
…もうダメだと思った。
その時だった。
私の後ろからだれか近づいてくる気配がする。
リーダーだった―――――――
いまさら何を…。
何を、しようっていうんだ。
もう放っておいて欲しい。
リーダーは娘さんの前に立ち話し始めた。
「○○さん(娘さん)、
お母さまは何十年ぶりの対面で混乱されているのだと思います。
記憶が、昔のままで止まっているのかもしれません。
良かったら、Aさんと○○さんにしかわからない思い出を話していただけませんか?
きっとお母さまも覚えてらっしゃると思います。」
娘さんは少し考えたあと
話し出した。
『お母さん、覚えてる?子どもの頃、運動会の帰り道でいつもおんぶをせがんで、
お母さん「もう大きいんだからムリだよ」って言ってたのに、
それでもおんぶ!ってせがんで困らせてた。でもお母さん、いつも笑ってくれてたよね。」
Aさん
『あぁ、うん、そうそう。うちの娘はいっつも帰り道でおんぶをせがんどったなぁ。
もう大きいけぇムリじゃっていっても嬉しそうにお・ん・ぶ!っていってきかんかった。』
『…よう知っとるなぁ。誰も知らんことや。どこで聞いたんや。』
娘さん
『お母さん、わたしよ。○○よ(←娘さんの名前ね)』
Aさん
『そうそう、私の娘は○○、○○なんよ。』
娘さん
『あのときうれしかった。ありがとう、おかぁさん。』
Aさん
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
娘さん
『わたしよ』
Aさん
『・・・・・・・・・○○?』
娘さん
『そうよ。やっと思い出した。』
Aさん
『○○!』
抱き合う二人
Aさんは泣きながら何十年間分の謝罪をし、
娘さんはAさんに産んでもらったことの感謝をしていた。
事務所のスタッフ
現場のスタッフ
リーダー
わたし
そして
Aさんに
娘さん。
その場にいた全員が
泣いていた。
――――――――――――
つづく(ながっ)