Aさんと娘さんの再会当日。
Aさんは前夜からうれしすぎてほとんど寝られなかった。
テンションマックス。
ウキウキが止まらない。
本当に子どもみたいな人。
わたしもウキウキしていた。
どんな再開になるのか
自分の苦労が報われる日――――――――
―――――――
Aさんと娘さんには会えない事情があった。
その事情のために何十年も会うことができなかった。
周囲の人は、「あの人は自分の好きに生きてきた人だから」と口をそろえていう。
事実だけをみれば自由奔放、好き勝手に生きてきた人生。
けれども、わたしが目の前にいるAさんから感じていたのは
寂しさ
楽しさではなく、寂しさ。
心の根っこに「寂しい」って気持ちが見え隠れしていた。
そもそも自分がなんでこんなにAさんにこころ動かされたのか?
好きだし、気の合う人だったけれど、
出会ったのはたまたまだ。
事業所に入所するきっかけは
旦那さんを亡くされてそれから
年齢とともに物忘れ・軽度の認知症の症状が出ていた。
一人暮らしへの不安や近所の方の勧めからだった。
仕事だから?
それもある。
でもそれがいちばんの理由じゃない。
なんなんだろう‥‥
まぁいい。そんなことより
今日だ。
今日この日。
大事なのは。
―――――――――
その日、事務所の周りにはいつもより明らかに人が多かった。
現場のスタッフも何人か用があるのかないのかうろうろしていた。
Aさんの事は、事業所内でちょっとした話題になっていた。
いんや、ちょっとしたではなくて、
Aさんの話題で、もちきりだった。
「何十年ぶりの娘さんとの再会」
もある。
だが、もう一つは
「若いスタッフがリーダーの言うことも聞かずに
突っ走ってやろうとしている。周りのスタッフの同意も得ずに。
その結果が今日わかる」
って言う話題。
休憩室での話題を数カ月にわたってぶっちぎりでナンバーワンをかっさらっていたらしい。
まぁ、気になるよね。
どうなるのか、ことの顛末をみたいらしい。
そんなよくわからん期待に満ちた日。
娘さんが事業所に到着される。
ざわつく事務所。
現場の自分に内線が入る。
「Aさん、いこう!」
娘さんを迎えに行った。
踊ってるAさん。(嬉しさ・テンションマックス)
つられてわたしもウキウキが止まらない。
エレベーターに乗り、階数の表示をじっと見つめる。
「はよぉ、会いたいわ」
同じ気持ちだった。
はやく、数字が1Fを示してほしい。
ドキドキする。
感動の準備している自分。
エレベーターが開き、そこには
いつもより人の多い事務所。
自分の部署のスタッフもいる。
リーダーもいた。
そんなことは、もうどうでもいい。
娘さんだ。
どこだろう?どこ……いた。
その人は
事務所の前でたっていた。
…娘さんだ。
はっきりわかった。誰がどう見てみてもAさんの娘さん。
瓜二つ。
そっくり。
若いころのAさんそのまま。
間違えようがない。
一直線にその人に向かっていく。
二人の距離が縮まり近づく――。
何十年ぶりの再会。
お互いの顔を見つめ合う。
Aさんがゆっくりと口を開く。
「あんた誰ですか?」――――
つづく