僕は毎日、夢を見る。
決して見たい訳では無い・・・
僕が、僕自身に「見させられる」のだ。
登場するのは、何故か決まって同じメンバーである。

僕にとって夢とは、
無限に続く逃れようの無い悪夢なのだろうか。


■(2009/10/27) ゲソなヤツ

会社の会議室
珍しく今回は、現実的な夢である。

今後の課題、問題点、営業展開・・・
次々と議題は変わっていく。

そんな中、司会進行を勤める高田が
松下さんに向かい
「・・・で、どうですかね開発の計画は」と
おもむろに聞く

開発担当の松下さん
急に席で何故かビク!とする。

皆の視線を浴びながら、いつも冷静な松下さんは
体制を整え淡々と、今後のビジョンを交え
説明を進めていった。

ほどなく会議も終了。
何故か、自席へ戻ろうとしない松下さん。
「松下さん、どうかしたんですか?」
と高田が心配して肩を叩いた

松下さんが下を向く。
「だい・・・大丈夫です」

「顔色がなんだか悪いですね」
貧血と勘違いした高田が、若い衆に肩を貸してやれ
と、声を掛け数人が集まる。

しかし、松下さんは机の端を掴んで
断固として立ち上がろうとしない。

何かが変だ。
僕は叫んだ。「皆!引け!力の限り引け!」

尚も抵抗する松下さん
皆の手を振り払い、自分で立つとイスを引いた。

・・・ま、松下さん?
長身の松下さん。
何故か、僕より背が低い。

目線を下に・・・下に・・し・・・え?
膝下から下が、ゲソになっている。
どうやら、会議中に柔軟な対応と考えていたとろこ
体が柔軟と言うよりは、
軟体生物になってしまったそうだ。

僕らは、再度会議を開き、松下さんを
あるべき海に帰そうと決定。
僕の車を会社の入口に横付け。

通りを行く人々に見られない様に、
助手席にずるずると乗り込む。
座っても、ゲソなせいだろうか、すぐに松下さんは
足元にすべり落ちてしまう。

海までの数時間のドライブ。
終始無言の僕ら。
高田から電話が入る。

運転をしながら、千葉の海に連れていくと報告。

日差しがポカポカと車内に降り注ぐ。

松下さんが、おいしい感じになってきた。
一夜干し・・・
お腹がすいたなぁ・・・

「少し、食べさせてもらえま・・・せんかね」
と、空腹の僕は低姿勢で尋ねた。

しかし、松下さんは
キーキーキーキーと、奇声をあげて抗議。
顔も何だか、さっきより白い
手も、柔らかくなっている気がする

イカに戻る時間が迫っていた。
猶予が無い
僕はアクセルを力一杯に踏み込んだ。
景色がどんどんと僕の横を通り過ぎる。

隣では、奇声がどんどん大きくなる
早くしなくては・・・

・・・・・ピピピヒピ(目覚ましアラーム)

・・・・・僕は明日も夢を見るだろう。
明日も明後日も・・・ずっとずっと。