今回は、先日から各所で話題に出して頂いている台湾のBCB(Brake Caliper Booster社)の耐熱シリコン製ダストブーツの紹介をさせて頂きます。ブレーキキャリパーのOH(オーバーホール)は大切ですね。
先日の記事(台湾のBCB brakeがFrogDriveに来てくれました♪)でブレーキブースター交換について触れていますが、BCBは社名からわかる通り、ブレーキブースターの加工を主とするブランドです。元々は制動力が絶対的に足りていないキャンピングカーのブレーキブースター強化からスタートし、キャンピングカーを持ち込んだオーナーがスポーツカーの改造も依頼し、ラインナップをスポーツ寄りに拡大してきているようです。
そして、そんな流れの中、ハードに走行するユーザーから持ち込まれるブレーキ系の熱問題に対応するため、ドイツ製耐熱シリコンを指名買いしてブレンボやAPキャリパー用のオリジナル耐熱ダストブーツを製造していたようなのですが、要望が多い車種には純正キャリパー用のダストブーツやピストンキットも製造しています。
BCB製製品をわかりやすく一言で言うならば、”こだわりの強い尖った製品”です。使いたいシリコンゴムを先に決め、そのシリコンゴムでダストブーツを作る事が出来るダストブーツ工場を探したという説明を受けたのですが、どこまででも突き進んで行くその姿勢は聞いていてこっちが「そこまでやる?」と言ってしまうレベルです。生産もQCの観点から台湾内での生産に拘っており、商品は1つずつ丁寧に自分達で梱包しながらチェックしています。
また、純正採用されている部品の良さについても彼らはよくわかっており、闇雲に社外ブレーキに交換するのでは無く、純正キャリパーの扱いやすさについても共通の認識があり、社外キャリパーの抱える問題についても同様でした。メンテナンススパンが短くなる事のデメリットは一般ユーザーには意外としんどい…という話は全力で同意できます。
で、そんなBCBのピストンキットの重量計測をしたのと、耐熱シリコン製のダストブーツの取り扱い注意点を今日はまとめておきます。
まず、純正ピストンの重量から。
フロント用は約60g/個(4個で約235g)です。
アルミにアルマイト処理が成されているようで、バネ下重量の軽減には効いている&ブレーキシステム全体に熱を逃がす事で熱をマネジメントしようとしているはずです。
*アルミニウムであれば比熱 (J/g・K)は0.90、ピストン4個の熱容積は235g×0.90=211.5、熱伝導率(W/m・K)は200くらいの数字に落ち着くのではないでしょうか
*ただ、アルミにも様々な種類があるのでこの数字はあくまでも参考値となります
*この数字をどう解釈するか…は本当に難しいところです。
BCBのステンレスピストンです。フロント用は約130g/個(4個で約515g)です。
*純正と同じ形状で作った場合、比重から計算すると約176.2gになるはずです。それどころか、ダストブーツがブレーキパッドと触れ合わないよう1mmピストンを長くしているにも関わらず、薄肉形状&ガス抜き穴の追加によって軽量な設計となっています。
とはいえ、純正と比べると2.19倍の重さですが、比熱 (J/g・K)は0.50、ピストン4個の熱容積は515g×0.50=257.5、熱伝導率(W/m・K)は16となるので、かなり熱的には有利になりますね。キャリパーに伝わる熱は約13分の1になります。
*この数字をどう解釈するか…は本当に難しいところです。(n回目)
*個人的にはピストンで熱を堰き止めていると見ていますが、どう冷やすの?冷えるの?というのはちょっと気になるところです。
*温度を上げきれなかったブレーキパッドを適切な温度帯に持っていく&そこで留めておく事が出来るソリューションとして結構アツい?ような気がしています。この熱容量の大きさはウィンドウが狭い社外パッドに効くような気がしているので、購入して頂いた方のレビューを心待ちにしています。
そして最後にチタンピストンです。64チタン(JIS表記だとTAB)とのこと。
フロント用は約75g/個(4個で約295g)です。
*純正と同じ形状で作った場合、比重から計算すると約98.4gになるはずなので(以下略
*チタンピストンキットは本来前後セットでしか販売が無いのですが、来日時に交渉し、割高にはなるもののフロントだけ/リアだけでも購入出来るようになっています
純正と比べると1.25倍の重さです。比熱 (J/g・K)は0.53、ピストン4個の熱容積は294g×0.50=156.4、熱伝導率(W/m・K)は7.5となり、キャリパー温度はかなり下がるでしょう。キャリパーに伝わる熱は約26分の1です。
*この数字をどう解釈するか…は本当に難しいところです。(n+1回目)
*個人的にはここまでくるとパッドがキツいんじゃないの?(熱が逃げないので)と思い、Frogのデモカーには1000℃までタレないシンタードメタル(焼結メタル)素材のCLbrakes(旧カーボンロレーヌ)のRC6というパッドをチョイスしています。大変好評で嬉しいばかりですが、パッドそのものの価格&ローターの衝撃的な減り方は覚悟しておく必要があります。
*CLbrakes(旧カーボンロレーヌ)、弊社で取り扱い可能です!!(唐突な営業コメント)
と、様々な解釈が出来る数字を投げ散らかし、諸々の取り扱い注意情報を纏めておきます。
取り付け前下処理
・キャリパーを取り外して徹底洗浄する
・ピストン、ダストブーツ、オイルシールを取り外し、全ての汚れを落とすこと
*この時にはブレーキクリーナーやパーツクリーナーなど溶剤を使って汚れを落としてOK
*ピストンのオイルシール当たり面は2000番以上の番手を持つサンドペーパーでクロスハッチをつける(斜め方向に傷がつく方向で軽く磨く程度にしておく)
※ピストンにカシマコート等の特殊コーティングやメッキが施されている場合は、ペーパーを当てずに清掃のみに留めること。
取り付け
オイルシール:附属してくるブレーキグリスを全面にごく薄く均一に塗布する
ピストン:オイルシール&ダストブーツと当たる部分に附属してくるブレーキグリスをごく薄く均一に塗布する(余剰分は拭き取る)
ダストブーツは耐熱シリコン製なので
・汚れを呼ばないよう、グリスは塗らない(が、GRヤリス/カローラ用のものはピストンとの当たり面に附属のラバーグリスの塗布が必要)
・ダストブーツの組付け(ダストブーツとキャリパーの接触面)時の潤滑剤としてCCiのMR20(メタルラバー;ブレーキシリンダ組付液)を薄く塗布する
*絶対にイソプロピルアルコール(IPA)/アルコール/ブレーキクリーナー/パーツクリーナー(つまり有機溶剤)を使わない。
*清掃時は中性の食器用洗剤で洗浄する
*ブリードバルブの締め付けトルクは純正同等を推奨。ステンレス製(SUS)のため、オーバートルクによるキャリパー側のネジ山破損に注意すること
*附属するブリードバルブは11mm六角なので使用する場合は11mmのメガネレンチが必要となります
ブレーキパッド組付け
ブレーキパッド組付けには鳴き止めグリス(耐熱シリコン系グリス)を絶対に塗らない
*耐熱シリコン製ダストブーツとの相性が最悪で、急激なダストブーツ劣化を引き起こします
*以降、絶対にパーツクリーナー/アルコール(つまり有機溶剤)を使わない
*組み付け後の清掃時は中性の食器用洗剤で水洗浄すること
など、通常のダストブーツとは取り扱い方法が大きく異なることに注意してください。
純正のダストブーツと比べると
・耐熱性は大きく向上(純正150~180℃→BCB耐熱シリコン300℃)
・耐薬品性がシビアになります(溶剤が使えない)
・レーシングパーツなので短いスパンでの定期交換を推奨しています
・組付け後のクレームには対応出来ませんが、1枚売りも可能(タイミング次第ではお待たせすることもありますが…)
と、”こだわりの強い尖った製品”ではありますが、上手く使うと多大なる効果がある製品ですね。
BCBの商品は独自の路線を突っ走っており、企業秘密も多く、我々も全容を把握しきれていないのですが、3ヶ月ほど毎日コミュニケーションを取りつつ、様々な情報が溜まってきたのでまとめてみました。(先日ブレーキブースター交換を一緒にやった時に出てきた各種SSTが本当に良さそうだったので、自動車整備工場向けにブレーキ周りのSSTのご紹介も出来たら面白いな…と思っております。)
BCBのピストンキット&ダストブーツですが
・各種ブレンボキャリパー用ダストブーツキット(8, 6, 4, 2pod)
は即納在庫があります。(2026/07/03現在)
7月末に2回めの発注をかけ、8月頭くらいに次の入荷が出来ると良いな…と考えております。
FrogDriveのウェブショップに掲載が無い商品も取り寄せ可能ですので、お気軽にお問い合わせください。








