ゲイ占い師 豫 空潤です。

 

少し前のメール鑑定です。

タジオさん(仮名・30代・地方在住)のプライバシー保護のため、多少変更しています。

 

僕「タジオさん、申し込みフォームの性別欄が空欄ですが……」

 

タジオ「FTMなんです。戸籍は女性ですが、男性の恰好をして、胸は手術でとって、男性ホルモン剤を打ち、男性として暮らしています」

 

僕「そうなんですね。職場の方には?」

 

タジオ「店長は知ってます。が、他の人は僕を男だと思ってます」

 

僕「男性扱いされて働いているのですね?」

 

タジオ「そうです。そこは子供のころからの性別違和感が解消されていいのですが……」

 

僕「何かお悩みがあるのですね?」

 

タジオ「今年から30代後半になるんです。それで、実家の両親が『子どもを産むためには、そろそろ結婚しないと』って言うんです」

 

僕「ご両親にはカミングアウトされてないんですね?」

 

タジオ「いえ、男として生きていきたいと、大学卒業時にカミングアウトしてます」

 

僕「ご両親はカミングアウトを受け入れてない?」

 

タジオ「お前の好きなように生きればいいと言ってくれました」

 

僕「なのに、子どもや結婚のことを言う? 性別違和感を一時の気の迷いと思ったのでしょうか?」

 

タジオ「去年、付き合っている人を両親に紹介したんです。そのせいです」

 

僕「付き合っている女性を紹介したんですね?」

 

タジオ「いえ、お付き合いしているのは男性です」

 

僕「失礼いたしました。FTMの人は女性が好きで、女性と付き合うだろうというのは、僕の思い込みでした。FTMゲイなのですね?」

 

タジオ「性別移行するまでは女性が好きでした。でも、実際に男になろうとした際、男のことをもっと知らなければならないと思ったんです。男社会というか、男同士の世界にも通じていなければいけないと……」

 

僕「そうかもしれませんね」

 

タジオ「それで、男友達をつくり、一緒に遊ぶようになったんです」

 

僕「その男友達は、タジオさんがFTMだと知っている?」

 

タジオ「はい、知ってます。で、男友達と親しくなればなるほど、自分は男じゃないと思い知らされて……」

 

僕「たとえば、どういう時ですか?」

 

タジオ「出かけてて、トイレに行く時、『連れションしよう』って言われて一緒に男子トイレ入っても、男性器のない僕は個室で用を足さないといけないんです」

 

僕「銭湯や温泉の男湯も行けない?」

 

タジオ「胸オペ(乳房除去手術)した後に、男友達と男湯に入りました。股間をタオルでガードして……」

 

僕「どうでしたか?」

 

タジオ「やっぱり、女湯より嬉しかったです。男と認められた気分になるし……普段は見ることない全裸の男性がいっぱいいるじゃないですか?」

 

僕「そうですね」

 

タジオ「女湯って……女性同士で、それとなくチェックしあうんです、スタイルとかどんな下着か……って」

 

僕「男性同士は、あまり気にしませんよね」

 

タジオ「そうなんです。単に大きな風呂でリラックスしに来たって感じで……男性ってこんな気楽に生きているんだ……ってわかりました」

 

僕「男になってよかったって思いましたか?」

 

タジオ「思いました。でも、同時に男になりきれないとも実感しました」

 

僕「男になりきれない?」

 

タジオ「僕は男性器を付けてないので、男湯ではタオルのガードを外せません。お湯に入るときとか、体洗うときとか、周囲の人にバレないか、気を遣うんです。でも、他の男性たちは全く気にしないで……」

 

僕「男性器を付ける手術もありますよね?」

 

タジオ「僕は、付けるつもりありません。完全な男性器にはならないので……」

 

僕「そうですね」

 

タジオ「男湯に入ると、嫌でも他人の男性器が目に入って『自分は男ではない』と思い知らされます」

 

僕「性別適合手術をしても、完全な男や女になれる訳ではありませんからね」

 

タジオ「そうなんです。それで、その男友達と温泉に行ってホテルに泊まった時に……」

 

僕「え? ベッドに誘われたんですか? その男友達を好きだったのですか?」

 

タジオ「それまではただの友達でした。でも、一緒に入浴した時に『実はタジオの裸が気になってた。たちそうになるのを必死に抑えていた』って言われて……」

 

僕「困惑しましたか?」

 

タジオ「僕も、一緒に入浴した際に、彼の男性器が気になっていて……でも、ガン見するのもアレだし……って思っていたんです」

 

僕「お互いに意識していたんですね? 両想いですね? で、そのホテルで?」

 

タジオ「はい、その夜が僕の女としての『初夜』でした」

 

僕「対女性の経験はあったのですね?」

 

タジオ「全然違いますね。やっぱり、男女って……そういう風にできてるんですね」

 

僕「それ以来、FTMゲイと自覚された?」

 

タジオ「僕は彼とゲイカップルになったつもりでいました」

 

僕「彼の方は?」

 

タジオ「その彼を実家の両親に紹介したら、母親が『将来を考えているか?』って彼に聞いてきて……。僕はゲイカップルのつもりなので困っていたら、彼が『結婚を考えてます』って即答して……」

 

僕「驚きましたか?」

 

タジオ「……なんとなく、そんな気はしていたんです。彼は『俺はゲイじゃない』って言うので……」

 

僕「ご両親の反応は?」

 

タジオ「あんなに嬉しそうな両親の顔を久しぶりに見ました。『やっと娘がまともになってくれた』って思ったのでしょうね?」

 

僕「彼氏さんやご両親はそうでも、タジオさんご本人は男性として生きていて……困りますよね?」

 

タジオ「そうなんです。胸とっちゃったし……職場は男で通っているし……」

 

僕「彼氏さんと話し合いされましたか?」

 

タジオ「しました。彼は『俺は、初めからお前を女として見ていた。ボーイッシュな女として』って……」

 

僕「で、タジオさんは?」

 

タジオ「僕は、男性に戸籍変更して、彼と同性婚……っていうのが理想です。でも、戸籍を男にしたら、確実に彼は離れていきます。っていうか、僕は定期的に男性ホルモンを注射しているので、このままいけば『オジサン化』します。彼は『中性的な女』が好みなので……」

 

僕「話し合いは平行線なのですね?」

 

タジオ「僕は子宮・卵巣があるので、男性ホルモンやめれば、だんだんと女に戻ります。ボーイッシュな女として彼と結婚し、子どもでも産めば、彼も両親も喜びます。僕さえ我慢すれば……って思うんですが……」

 

僕「物心ついて以来、ご自分を押し殺して、やっと『心の性』である男性になれたのに……っていう思いですね?」

 

タジオ「そうなんです。FTMゲイとして生きるためには、やはりゲイ男性をつかまえなくてはならないのか? 今の彼とは別れなくてはならないのか……? FTMゲイって、ゲイ男性に需要ありますか?」

 

僕「一部にはいると思います。ただ、積極的にFTMを求める男性はゲイでなく、バイセクシャルでしょうね。数は少ないだろうし、バイセクシャルだと最終的には女性との結婚を選ぶ人が多いでしょう」

 

タジオ「そうなんですね……」

 

僕「タジオさんがFTMゲイにこだわるのは、ハンドルネームからもわかります」

 

タジオ「わかりました?」

 

僕「わかりますよ。伝説的ゲイ映画『ベニスに死す』の美少年の名前『タッジオ』からですよね?」

 

タジオ「彼にBL(ボーイズラブ)映画を見ようと誘っても、乗ってこないんです。名前も、ベッドでは僕の女の本名を呼ぶんです」

 

僕「つらいですね?」

 

タジオ「彼は『お前はベッドではどの女よりも女だ』って言うんです。確かに、彼に抱かれている時は女の気持ちになってます。ゲイの人で、男に抱かれて、女性の気持ちになる人っていないんですか?」

 

僕「たくさんいます。ありふれています。どうしても、抱く方が男性的になり、抱かれる方が女性的な気持ちになるんですよね」

 

タジオ「じゃあ、FTMゲイで、ベッドで女に戻ってもいいですよね?」

 

僕「個室内で男になろうが、女になろうが、まったく問題ないです」

 

タジオ「その言葉に救われます」

 

僕「せっかくなので、タロット占いしましょうか? タジオさんへのメッセージを1枚引きますよ」

 

タジオ「お願いします」

↑「恋人」正位置。

男性同士の恋人の絵です。

空にあるのは太陽と月。男性と女性を表します。

愛し合うのに性別はどっちでもいい……ということです。

 

タジオ「どういうメッセージですか?」

 

僕「女に戻らなくてはならないとか、考えなくてもいいのです」

 

タジオ「でも、彼は……」

 

僕「彼が『女に戻ってほしい』と言うのは、『結婚』や『出産』などの世間的な幸せを目指しているからです。でも、タジオさんは世間にこだわることはありません。そういうことです」

 

タジオ「彼が考えを変えてくれないなら……?」

 

僕「男性同士のカップルで生きていくなら、出産年齢はそこまで大事ではないでしょう? 他の男性、つまりゲイ男性を探してもいいのではないですか?」

 

タジオ「でも、FTMを選ぶゲイ男性は多くないのですよね?」

 

僕「いないわけではありません。タジオさんがご自分を貫くなら、可能性が少なくとも、賭ける価値はあるんじゃないですか?」

 

タジオ「わかりました。決心がつきました。彼とか両親とか、相手や周りに合わせて自分を殺すのはやめます。ありがとうございました」

 

僕「ありがとうございました」

 

さて、今日のゴーストタロットです。

↑「死神」リバース(逆さま)。見やすくするために正位置で貼り付けてます。

「死」そのものよりも、何かが終わること、再生することを表します。

 

リバース(逆さま)は、「再生」の意味が強いのです。

あなたは、今、再生しようとしているのです。

 

↑「節制」正位置。

水差しから水差しへと移し替えています。

こぼさないように慎重にやる必要があります。

 

あなたの「再生」も、慎重さが求められます。

勢いでやっても、うまくいきません。

用意周到さが大事なのです。