まばたきをするあいだに私たちは年をとって、その速度、速度が持つ現実感に私たちは永遠に追いつけやしないということ、

そうして追いつけないかぎり、自分がここにいるという実感がどうしたって持てない…





この景色。この空の角度、この道路の道幅、看板やポスターの配置、電信柱の位置、立て掛けられた自転車からコンクリのひびわれをかくす雑草、このすべてを、十五年私はここから眺めてきた。

十五年。

言葉にするとそらおそろしいが、実際は、ほんとうにまばたきをするような瞬間だった。


(角田光代「トリップ」より)