ブロウ・バイ・ブロウ:ジェフ・ベック | かえるの音楽堂

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70年~80年のCROSSOVER(FUSION)とJAZZを中心にAORか
らSOULまで、かえるのお勧めのGood Music Albumや音楽情報な
どを紹介いたします。

 

BLOW BY BLOW : JEFF BECK

(1974年)

 フュージョンとは1960年代後半から1970年代前半に発生した音楽のジャンルです。ジャズをベースにロック、ソウル、ポップ、ブラジル、ラテンあるいはクラシックといった音楽を融合させたもので、60年代後半はまだフュージョンという言葉もなく70年代前半はクロスオーバーミュージックと呼ばれていました。60年代ではウェス・モンゴメリーの“カリフォルニア・ドリーミング”や“ア・デイ・イン・ザ・ライフ”、チャック・レイニーの“コーリション”なんかはジャズという枠から飛び出たフュージョンの走りとも言える音楽です。このようにフュージョンは一般的にはジャズを起源とするものですが、あらゆる音楽を融合したものと考えれば何もジャズがベースになっていなくてもよいものです。そんな中でロック・ミュージックからフュージョンに挑んだミュージシャンが“孤高のギタリスト”ジェフ・ベックです。今回紹介するのは1974年録音75年に発表された初のインストゥルメンタル・アルバム「ブロウ・バイ・ブロウ」です。プロデューサーにはビートルズのレコーディングプロデューサーでもあったジョージ・マーティンを迎えました。当時の日本盤の邦題は「ギター殺人者の凱旋」とまあ何とも物騒なタイトルでした。参加メンバーはジェフ・ベック(g)、マックス・ミドルトン(keyb)、フィル・チェン(b)、リチャード・ベイリー(ds)です。

 

1. You Know What I Mean(分かってくれるかい)

2. She's a Woman(シーズ・ア・ウーマン)

3. Constipated Duck(コンスティペイテッド・ダック)

4. Air Blower(エアー・ブロワー)

5. Scatterbrain(スキャッターブレイン)

6. Cause We've Ended as Lovers(哀しみの恋人達)

7. Thelonius(セロニアス)

8. Freeway Jam(フリーウェイ・ジャム)

9. Diamond Dust(ダイヤモンド・ダスト)

 

 収録曲は全9曲でオールインストゥルメンタルです。この当時としてはロックのインスト・アルバムは珍しかったです。16ビートを基調としたジャズ・ロック的な作品です。1曲目「You Know What I Mean(分かってくれるかい)」はベックとミドルトンの作品です。2曲目「She's a Woman(シーズ・ア・ウーマン)」はレノン&マッカートニーの作です。ベックは以前からこの曲を演奏していたのですが、キーボードのミドルトンのプッシュでアルバムに収録したものです。逆にビートルズのレコーディングプロデューサーでもあったジョージ・マーティンは収録に反対していたとのこと。5曲目「Scatterbrain(スキャッターブレイン)もベックとミドルトンの作品です。この曲はベックが運指の練習で弾いていたフレーズをミドルトンの進めで曲にしたものです。6曲目は本アルバムで最大のハイライトとも言える「Cause We've Ended as Lovers(哀しみの恋人達)」です。作曲はスティーヴィー・ワンダーで、ベックが何気なく弾いていたのをミドルトンが聞いてカヴァーするように提案したものです。この曲はロイ・ブキャナンに捧げられています。ベックの弾く美しいメロディ・ラインが素晴らしいです。7曲目「Thelonius(セロニアス)」もスティーヴィー・ワンダーの作品です。本作品ではジョージ・マーティンがプロデューサーではありますが、アドバイスや作曲、キーボードとマックス・ミドルトンの存在が大きいもので、彼は第二のプロデューサーとも言えます。レコード業界ではロックギターのインストアルバムは売れないと言われていましたが、アルバムは全米チャート4位という結果を残しました。ベックはこのアルバムの1年後にはキーボードにヤン・ハマーをを迎えさらに尖った感じのジャズ・ロック色を強めたアルバム“ワイヤード”を発表しました。こちらもオールインストゥルメンタル作品で大ヒットしました。