ライブ・イン・ニューヨーク:スタッフ | かえるの音楽堂

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LIVE IN NEW YORK:STUFF

(1980年)

 フュージョンを語る上で絶対に外せないバンドで東西の横綱と言えば、西はクルセイダーズ、そして東はスタッフです。クルセイダーズは高校時代の同級生であるウェイン・ヘンダーソン、ウィルトン・フェルダー、ジョー・サンプル、スティックス・フーパーの4人で結成しました。対するスタッフはリーダーのゴードン・エドワーズ、コーネル・デュプリー、エリック・ゲイル、リチャード・ティー、スティーヴ・ガッド、クリストファー・パーカーの6人がオリジナル・メンバーで結成されました。元々は1960年代半ばにゴードン・エドワーズが結成したセッション・バンド”エンサイクロペディア・オブ・ソウル”が母体でした。このバンドの特長はツイン・ドラム、ツイン・ギターで彼らの生み出す音楽はうねりのある唯一無二のものでした。メンバーは皆ニューヨークを中心に活動していた有能なスタジオ・ミュージシャンでしたので、彼らの演奏は優れた技巧に基づく素晴らしいものでした。スタジオ録音はもちろんライヴでもその安定した演奏はまったく変わりありませんでしたし、ライヴで彼らはさらに真価を発揮しました。今回紹介するのはスタッフのニューヨークのライブハウスで行われたの演奏の記録です。スタッフは3枚のライブ・アルバムを残しています。1枚目は日本公演の記録「ライブ・スタッフ!」で2枚目として発売されたのがこのアルバムです。3枚目はデビュー当時のライヴの記録「ライブ・アット・モントルー1976」です。そんな彼らのライブ・アルバムですが本国アメリカで発売されたのは唯一「ライブ・イン・ニューヨーク」だけです。どのライブ盤も素晴らしく甲乙付けがたいのですが、なによりこのライブはスタッフの本拠地であるニューヨークのライブ・ハウス「ミケールズ」でのライブであることで貴重であり、またスタッフの魅力が最大限に発揮されています。もともとスタジオ・ミュージシャンである彼らが、スタジオ・ワークでのうっぷんをはらすために、毎週末にミケールズに集まってセッションを繰り返していた、その時のメンバーからスタッフが誕生したのです。決められたスタジオ・ワークと違って、自分達で好きなことをやっているのですから乗りのよさは違います。またこのアルバムを聴いて分かりますように、スタジオとまた違ったライブならではの雰囲気が十分に感じられます。日本とモントルーのライブにはクリス・パーカーが参加していませんが、このアルバムでは全員顔を揃えています。曲は全7曲でそのうち6曲が新曲でした。

 

1. SOMETIMES BUBBA GETS DOWN(ブラザーがのった時)

2. YOU MAKE IT EASY(ユー・メイク・イット・イージー)

3. YOU'RE A GREAT GIRL(ユーアー・ア・グレイト・ガール

4. SHUFFLE( シャッフル)

5. LOVE THE STUFF / AIN'T NO MOUNTAIN HIGH ENOUGH

ラヴ・ザ・スタッフ/エイント・ノー・マウンテン・ハイ・イナフ

6. DUCK SOUP(ダック・スープ)

7. THE REAL McCOY(リアル・マッコイ)

 

 オープニングの1曲目「SOMETIMES BUBBA GETS DOWN」はクリス・パーカーの作でセカンド・アルバム「モア・スタッフ」に収録されていた曲です。ゴスペル調のリチャード・ティーのピアノが最高です。スタジオ版よりさらにアップテンポで迫力も違います。2曲目「YOU MAKE IT EASY」はリチャード・ティー作のグル―ヴィーな曲です。エリックとコーネルのギターの掛け合い、リチャードのエレピとスタッフならではのサウンドを聴かせてくれます3曲目「YOU'RE A GREAT GIRL」はクリスの作です。ここではクリスとスティーヴの二人の掛け合いもスタッフならではですし演奏もライヴならではのノリです。4曲目「SHUFFLE」はスタッフのメンバー全員の共作です。シャッフルのビートに乗ってエリックとコーネルの掛け合いが素晴らしいです。5曲目「LOVE THE STUFF / AIN'T NO MOUNTAIN HIGH ENOUGH」はスタッフの共作とアシュフォード&シンプソンの曲のメドレーです。クリスのハイハットとスティーヴのソロからスタートします。さらにリチャードのアコピが絡み大いに盛り上がります。6曲目「DUCK SOUP」はコーネルの作でテキサス調のファンキーなミディアム・ナンバーです。この曲はコーネル自身のアルバム「アンクル・ファンキー」でも取り上げていました。7曲目「THE REAL McCOY」はゴードンの曲で亡き名アレンジャー、ヴァン・マッコイに捧げられたものです。ヴァン・マッコイは「ハッスル」を代表曲とするディスコ曲で有名ですが、スタッフの「モア・スタッフ」のプロデュースをしたり、またマッコイのアルバムにスタッフのメンバーが参加していたり、彼らとは親交が深かったミュージシャンです。マッコイが自宅で倒れていたのを発見したのもゴードンで、ゴードンが病院に運びました。マッコイは当時スタッフが”モントルー・ジャズ・フェスティバル”に出演するためにアレンジ譜を作っていました。マッコイの急逝でスタッフは出演もキャンセルしました。さらにこのアルバムもマッコイがアレンジやプロデュースをする予定でした。そしてこのアルバム自体、ヴァン・マッコイに捧げられたものでした。このライブ・アルバムはニューヨークの夜の香りが漂うベスト・ライブ作品です。こういったグルーヴ感溢れるバンドはなかなか出てこないでしょうね。