SALONGO : RAMSEY LEWIS
(1976年)
米シカゴ生まれのジャズ・ピアニスト、ラムゼイ・ルイスが、プロデューサーにアース・ウィンド&ファイアーのモーリス・ホワイトとチャールズ・ステップニーを迎え制作したアルバムです。本作はアースの大ヒット作「ALL’N ALL(太陽神)」の前のアルバム「SPIRIT(魂)」と同じ時期に製作されたものです。よってサウンド的にも全体的なアルバムの作りも、「ALL’N ALL(太陽神)」以前のアースの香りが良く出ています。いわゆる派手さはありませんがジャズ・ロック的な曲や、ヴォーカル物もとってもファンキーです。ラムゼイ・ルイスの聴いてすぐ分かるファンキーなエレピ・サウンドもファンにはたまりません。メンバーは、当時のラムゼイ・ルイスのグループが、ダーフ・レクロウ・ラヒーム(fl、perc、vo)、バイロン・グレゴリー(g)、ジミー・ブライアント(clavinet)、スティーヴ・コブ(ds、perc)、ロン・ハリス(b)、ゲストにース・ウィンド&ファイアーのラリー・ダン(keyb)、アル・マッケイ(g)、ヴァーダイン・ホワイト(b)の3名、ハービー・メイソン(ds)、アーニー・ワッツ(sax)、エムトゥーメイ、ジェリー・ピータースらが参加しています。ラムゼイ・ルイスのアルバムではこの時期のアース・ウィンド&ファイアーが参加したものは出来もよく、アース・ファンにもラムゼイ・ルイスのファンや、ジャズ・ロック的ファンキーなサウンドが好きな人には特にお勧めです。写真家ノーマン・シーフによるジャケットもかなり印象的です。
01. Slick(スリック)
02. Aufu Oodu(オーフ・ウードゥ)
03. Rubato(ルバート)
04. Salongo(サロンゴ)
05. Brazilica(ブラジリカ)
06. Nicole(ニコル)
07. Seventh Fold(セヴンス・フォールド)
1曲目「Slick(スリック)」ラグタイムのストライド奏法によるピアノのイントロからスタート一転、スピード感溢れる激しい演奏になります。ブラスアンサンブル、ラムゼイのアコピが火花を散らします。チャールズ・ステップニーとモーリス・ホワイトの共作ですがEW&Fっぽさはありません。2曲目「Aufu Oodu(オーフ・ウードゥ)」はラムゼイ・グループのダーフ・レクロウ・ラヒーム作です。泥臭い感じの重量級ファンクです。サウンド的には”SPIRIT(魂)”以前のEW&Fのサウンドに近い感じです。タイトルはアフリカをイメージさせるものです。ラヒームはぶっとい感じのフルート・ソロを聴かせてくれます。3曲目「Rubato(ルバート)」はチャールズ・ステップニーサムのインタールード的な小曲です。タイトルの” Rubato”は音楽用語で”楽曲の速度を自由に加減して演奏すること”を意味します。アルバム・タイトル曲の4曲目「Salongo(サロンゴ)」はラムゼイ・グループのギタリスト・バイロン・グレゴリーの作です。ラムゼイがエレピを弾くグル―ヴィーな曲です。スキャットのようなフルートはラヒームです。ラストに再びストライドっぽいピアノが入ります。5曲目「Brazilica(ブラジリカ)」はモーリス・ホワイトとマーティン・ヤーブロウの作品です。マーティン・ヤーブロウはシカゴ出身のシンガー、ギタリストです。この曲は本作品でも一番のハイライトです。”SUNGODDESS(太陽の女神)”路線のメロウ・ファンクの曲です。ラムゼイ・ルイスもこの曲がお気に入りのようで1992年のアルバム”Ivory Pyramid”やアーバン・ナイツのアルバム”Urban NightsⅥ”でもセルフ・カバーしています。”6曲目「Nicole(ニコル)」はジョン・リンド作のスロー・ナンバーです。ラムゼイの弾く美しいエレピとアコピのサウンドを堪能できます。ジョン・リンドはモーリスと共作で”太陽の女神”を書いたり、EW&Fの”ブギー・ワンダーランド”も作曲しておりラムゼイやモーリスとも馴染み深い人物です。7曲目「Seventh Fold(セヴンス・フォールド)」はチャールズ・ステップニー作の短いインタールードからちょっとミステリアスな雰囲気で始まるスケールの大きいナンバーです。このアルバムは”SUNGODDESS(太陽の女神)”に比べると目立たないのですが内容は充実しており素晴らしい作品であると思います。なおこの作品の発表後にプロデューサーのチャールズ・ステップニーが急逝し、本作品もチャールズ・ステップニー追悼盤として発売されました。