春の祭典:ヒューバート・ロウズ | かえるの音楽堂

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70年~80年のCROSSOVER(FUSION)とJAZZを中心にAORか
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どを紹介いたします。

THE RITE OF SPRINGHUBERT LAWS

(1971年)

 ヒューバート・ロウズはジャズフルートの第一人者であり、またジュリアード音楽院でクラシックの教育を受けており、実際ニューヨークのメトロポリタン・オペラ・オーケストラやニューヨーク・フィルハーモニック・オーケストラで演奏しておりクラシックの世界でも活躍しています。ヒューバートは1964年にはアトランティックと契約しアルバムを発表した後に、69年にはCTIレコードと契約しアルバム“クライング・ソング”を発表しました。このアルバムはポップスの作品をカバーしたもので、70年に発表した作品“アフロクラシック”では、バッハやモーツアルトといったクラシックの作品を取り上げています。CTIと言えばクラシックの曲のジャズ化、フュージョン化がお家芸とも言えます。ですからヒューバート・ロウズとはうってつけの組み合わせと言えます。そして71年発表の作品“春の祭典”ではフォーレ、ストラビンスキー、ドビュッシー、バッハの作品を取り上げており、アルバム全てクラシックのジャズ化となっています。アレンジはドン・セベスキーが行っており、ここで展開される音楽はクラシック的な演奏であり、すごくディープで高尚な世界になっています。実際、ヒューバートのフルート他に、ウォーリー・ケインやジェーン・テイラーのバスーンなどのクラシックならではの楽器が使われており、ギターやデイブ・フリードマンのヴァイブなどもクラシック的な技法を用いています。主な参加メンバーはヒューバート・ロウズ(fl)、ジーン・バートンシーニ(g)、スチュアート・シャーフ(g)、デイブ・フリードマン(vib, perc)、ボブ・ジェームス(kb)、ロン・カーター(b)、ジャック・デジョネット(ds)、ウォーリー・ケイン(bassoon)、ジェーン・テイラー(bassoon)、アイアート・モレイラ(perc)他です。

 

1.PAVANE(パバーヌ)

2.THE RITE OF SPRING(春の祭典)

3.SYRINX(パンの笛)

4.BRANDENBURG CONCERTO No.31st MOVEMENT(ブランデンブルグ協奏曲第3番 第1楽章)

5.BRANDENBURG CONCERTO No.32nd MOVEMENT(ブランデンブルグ協奏曲 第3番 第2楽章)

 

1曲目「PAVANE(パバーヌ)」はフォーレの作品です。原曲をベースに段々とジャズとなっていきます。すごく幽玄な世界が展開されていきます。2曲目「THE RITE OF SPRING(春の祭典)」はストラビンスキーのバレエ曲ですね。初めて聴く時は、この曲がどうやってジャズになるのかすごく興味ありました。この曲でも原曲のイメージから外れることなくスタートし、それが段々とジャズになって行きますが、でも原曲のクラシックから完全に外れるのでなく独自の表現で演奏していきます。3曲目「SYRINX(パンの笛)」はドビュッシーの作品です。ヒューバートはここでも繊細で優美な旋律を奏でます。クラシックの作品そのものですね。4,5曲目はバッハの作品ですね。バロックの曲が見事ジャズになっていくのですが、でも聴きようによっては、クラシックそのままとも言えなくもなく、そのさじ加減が見事です。ロン・カーター、ジャック・ディジョネットやアイアートといった面々のサポートも見事です。何と言ってもドン・セベスキーのオーケストレーションの素晴らしさを忘れてはいけないでしょう。CTIのクラシックのジャズ化作品の最高峰と言えます。もちろんヒューバートの作品の中でも最高の作品ではないでしょうか。その後ヒューバートはボブ・ジェームスのアレンジによるクラシックの作品を取り上げたり、またコロンビア・レコードに移籍後も、“ロミオとジュリエット”や“ボレロ”などのクラシック曲のジャズ、フュージョン化しています。アルバムのジャケット写真はPETE TUNERの表、裏に続く草原に潜むヒョウの写真です。アルバム・デザインも含めトータルで完璧な素晴らしい作品です。