砂の惑星:デヴィッド・マシューズ | かえるの音楽堂

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70年~80年のCROSSOVER(FUSION)とJAZZを中心にAORか
らSOULまで、かえるのお勧めのGood Music Albumや音楽情報な
どを紹介いたします。

118-砂の惑星
DUNE : DAVID MATTHEWS
(1977年)
 70年代から80年代に掛けジャズ、クロスオーヴァーの名盤を数多く制作し、ジャズの大衆化に貢献したレーベルがクリード・テイラー創設のCTIレコードと系列のKUDUレーベルです。そのCTI/KUDUでアレンジャーとして活躍したのはドン・セベスキー、ボブ・ジェームズ、デオダート、ラロ・シフリン、デヴィッド・マシューズといったアレンジャー達です。その中でもドン・セベスキー、ボブ・ジェームズは自身のアルバムだけでなく多くの作品でアレンジを担当しました。そして彼らに続く第三のアレンジャーとしてデヴィッド・マシューズはソウル・ジャズ系のKUDU作品を中心にアレンジを行いました。デヴィッド・マシューズは70年からジェームズ・ブラウンのバンドのアレンジャーを務めていただけにソウル、ファンクに精通しており、そういった経歴を生かしてKUDUでソウルやディスコとジャズの融合ともいえるクロスオーヴァー作品を制作しました。自分自身のアルバムとしてはKUDUより“シュギ・ワナ・ブギー”を発表しました。この作品もまたソウルやディスコを取り入れたファンキー路線の作品でした。マシューズはボブ・ジェームスがCBSに移籍後はKUDUのみならずCTIレーベルでもハウス・アレンジャーとして活躍しました。そしてマシューズが今度はCTIレーベルで制作したアルバムが“DUNE(砂の惑星)”です。この作品はアメリカの作家フランク・ハーバートによるSF小説のシリーズをモチーフにデヴィッド・マシューズが作曲したものです。小説は砂に覆われ巨大な虫が支配する荒涼の惑星アラキス(通称デューン)を舞台にした壮大なドラマが展開されるもので、第1作から6作までのシリーズとなっています。ジョージ・ルーカスも“スターウォーズ”の映画化にあたりこの小説に影響を受けたと言われています。マシューズのアレンジも前作と異なりもっと壮大さを目指した感じに仕上がっています。わたくしは最初にアナログでこの作品を買いました。その後一度CD化されたらしいのですが、なぜかすぐに廃盤になってしまいその後も再発されることがありませんでした。その理由は事務的なミスでCD化の際にマシューズ側でフランク・ハーバートと契約をしていなかったとのことで、訴訟に発展し売ることができなくなってしまったとのことです。バックの豪華なメンバーや彼らのソロと言いこれまで長く再CD化が望まれた作品です。参加メンバーはクリフォード・カーター(synth)、デヴィッド・サンボーン(as)、グローバー・ワシントンJr.(ss、ts)、エリック・ゲイル(g)、ランディ・ブレッカー(tp)、ハイラム・ブロック(g)、ゲイリー・キング、マーク・イーガン(b)、デヴィッド・トファーニ(fl、piccolo)、スティーヴ・ガッド、アンディー・ニューマーク(ds)、ジョー・シェプレイ(flug)、グーギー・コッポラ(vo)他です。曲は全8曲で、アナログ・ディスクではA面にあたる1から4曲目までが“DUNE(砂の惑星)”をモチーフに組曲風にしたものです。5から8曲目までがポップスや映画音楽のカバーになります。

1. ARRAKIS(惑星アラキス)
2. SANDWORMS (砂虫)
3. SONG OF THE BENE GESSERIT (ベネゲセリットの唄)
4. MUAD'DIB(救世主ムアド・ディブ)
5. SPACE ODDITY(スペース・オデッティ)
6. SILENT RUNNING(サイレント・ランニング)
7. PRINCESS LEIA'S THEME(王女レイアのテーマ)
8. MAIN THEME FROM STAR WARS(スターウォーズのテーマ)

 1曲目から4曲目が続けて演奏されます。1曲目「ARRAKIS(惑星アラキス)」ストリングス・セクションが重々しくテーマ・メロディを演奏、続いてクリフォード・カーターのアナログ・シンセによるメロディ演奏からホーン・セクションが加わり厚みを増します。続くソプラノ・サックス・ソロはグローバー・ワシントンJr.、ギター・ソロはハイラム・ブロックです。2曲目「SANDWORMS (砂虫)」冒頭からゆったりしたリズムをバックにゲイリー・キングがメロディ・ラインを演奏します。続いてエリック・ゲイルのギター・ソロ、グローバー・ワシントンJr.がここではテナー・サックスを吹きます。3曲目「SONG OF THE BENE GESSERIT (ベネゲセリットの唄)」ホーン・セクションに乗ってハイラム・ブロックがギターで、デヴィッド・サンボーンがアルト・サックスでテーマが演奏します。グローバー・ワシントンJr.はソプラノ・サックスを吹きます。4曲目「MUAD'DIB(救世主ムアド・ディブ)」デヴィッド・サンボーンがアルト・サックスでテーマを演奏します。サンボーンらしいソロをたっぷり聴かせてくれます。サンボーンに続いてハイラム・ブロックのソロ、そして再びサンボーンのソロと続きます。“DUNE(砂の惑星)”の組曲はここまでです。続いてアナログのB面にあたるのが5曲目から8曲目までです。5曲目「SPACE ODDITY(スペース・オデッティ)」はデヴィッド・ボウイの曲です。ここではグーギー・コッポラのヴォーカルをフィーチャーしています。バックでかすかにサンボーンのアルトがメロディ・ラインを演奏しているのが聴こえます。ホーン・セクションによるブレイクの後、ハイラム・ブロックのギター・ソロが続きます。ランディ・ブレッカーのトランペット・ソロはちょっと短すぎるので残念な感じです。エンディングもちょっと中途半端な感じです。6曲目「SILENT RUNNING(サイレント・ランニング)」は同名のSF映画のテーマ曲です。グローバー・ワシントンJr.がテナーで、デヴィッド・サンボーンがアルトでテーマを吹きます。7曲目と8曲目は映画“スター・ウォーズ”から2曲です。まず7曲目は「PRINCESS LEIA'S THEME(王女レイアのテーマ)」です。スタートは原曲に近いイメージです。ジョー・シェプレイがフリューゲル・ホーンで、デイヴ・トファニがフルートでメロディを演奏します。ラスト8曲目は「MAIN THEME FROM STAR WARS(スターウォーズのテーマ)」です。この曲は壮大なイメージの原曲が大ヒットしました。またカバーではミーコのディスコ・アレンジ版がやはり大ヒットしています。そういったなかでこの曲をカバーするのは難しいですね。マシューズ版はどちらかというとミーコ寄りの演奏なんだけどちょっと残念な感じです。短めなギター・ソロはハイラム・ブロックです。アルバム・ジャケットもどことなくスターウォーズの映画ポスターをイメージしたような感じです。当時大ヒットした“スター・ウォーズ”人気にあやかろうとしていたのではないかと勘ぐってしまします。このアルバムはB面の選曲は失敗だったのでは?と思います。どうせならアルバム全部“DUNE(砂の惑星)”で統一したほうがよかったのではないかと思います。とは言えアルバム全体を何回も聴き直してみるとデヴィッド・マシューズらしいソロイストの使い方やアレンジが結構はまってしまいました。これもまたいかにも70年代らしいクロスオーヴァー作品です。こういったアルバムが再びCD化されたのは嬉しいことです。